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映画が持つ力が世界を変える、時代を動かす。~ユナイテッドピープル代表・関根健次さん

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世界中を見回すとハッピーなことだけはなく、命の危機に瀕している状況もさまざまな形で存在しています。しかし、実際に現地で全てを確かめ、行動することは難しい。あらゆる現実は、自分ごととして捉えにくいこともあります。今回は、映像の力を使って世界の改善すべきであろう状況を伝え、解決策を探ろうと活動しているユナイテッドピープルの代表であり、国際平和映画祭(UFPFF)の運営も行う関根健次さんをゲストにお迎えしました。これまでの活動や今後の取り組みのお話を交えながら、世界的課題の解決の足がかりを模索しました。一方で、家族でコスタリカに移住すると決めた関根さん。なぜ今コスタリカなのか、出国3日前というタイミングでお話いただきました。

ゲスト: 関根健次(せきねけんじ)氏 ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役社長

1976年生まれ。ベロイト大学経済学部卒(アメリカ)。大学の卒業旅行で世界半周の旅へ出る。途中偶然訪れた紛争地で世界の現実と出会い、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年に世界の課題解決を事業目的とする非営利会社、ユナイテッドピープル株式会社を創業。2009年から映画事業を開始。2011年から国連が定めたピースデー、9月21日を広める活動を開始。同年、一般社団法人国際平和映像祭を設立しピースデーに毎年国際平和映像祭(UFPFF)を開催している。著書に「ユナイテッドピープル」がある。
ユナイテッドピープル株式会社:http://unitedpeople.jp/

子どもたちの夢を守りたい

ユナイテッドピープルという会社をやっています。世界の課題解決のために事業を行っています。僕は、誰もが、この世界中の人々が、自由に触れ合って、友達になったり会話したり、世界中の人たちが普通にご飯が食べられたら。そんな世界を作りたいと思っているんですよね。旅をして、色んな人と出会って、みんなともっと交われたら、と考えています。

会社を設立して14年、色んなことをやってきましたが、今は映画に特化しております。映画の力を使って、気づきや、発見、新しいアイデアを社会に届け、映画の学びをきっかけにみんなで行動しよう。そして社会を変革しよう。そういうことを呼びかけています。

この写真が、人生においてターニングポイントになったパレスチナ ガザ地区の写真です。1999年1月にひょんなことから立ち寄るのですが、当時のガザは今よりも平和だったんですよね。日本人なら誰もが、パスポート見せれば入れました。左の写真が、現地の子どもたちと一緒にサッカーをしているところ。右の写真は、商店のおじいさん。町を歩けば、みんなこう「おーい、ちょっとお茶を飲んでいくか」と声をかけてくる。30分もすれば、ご飯も食べられないくらいお腹がふくれて、最初ガザ地区には「なんて平和で良い人ばかり住んでいるんだ」という印象を受けました

しかし、僕の目にとても平和に映ったガザ地区には、別の顔もありました。何気なく子どもたちとサッカーをしたあと、何気ない気持ちで子どもたちの夢を聞きました。ガザ地区は世界でもっとも過酷な紛争地のひとつです。そこで生まれ育った子どもたち。ある13歳の少年は、「将来の夢は、爆弾の開発者になることだ。爆弾開発者になって、多くの敵を殺すことだ」と話しました。そんな返答が返ってくるとは思わず、ショックを受けました。それで、彼に訪ねました。「ちょっと、君さ、さっきの話だけど、なんで人を殺したいだなんて思ったの」。すると彼は「4歳の時に、目の前で自分のおばさんが、敵のイスラエルの兵士に銃殺されたんだ」と。目の前でおばさんがただ立っていただけにもかかわらず、殺されてしまった。彼には、悲しみと、憎しみが残ってしまったんですね。

おばさんが亡くなったのち、モスクで礼拝をしていたときに、大人たちに「俺たちと一緒に、武器をとって闘おう、敵の国をやっつけよう」と声をかけられたそうです。少年ながら、彼も少年兵としてトレーニングを受けている途中だったのかもしれません。実際にガザ地区は、小学生たちが、ライフル銃の扱い方を教わったりということが、行われている場所です。戦争は、子どもたちの夢を奪ってしまう。そんな現実を目の当たりにした旅でした

世界中のどこにいる子ども達も、子どもらしい夢を描ける世界を作りたい。戦争に行くのではなくて、学校の先生、お医者さん、パイロットになりたという夢。大金持ちになりたい、それでもいい。でも、誰かを殺すという夢はいけない。悲しみも憎しみも、もういらない。子どもが子どもらしい夢を語れる世界にしたい。その思いで、ユナイテッドピープルという会社を作ることになるんです。

映画が持つ時代を動かす力

映画にはすごい力があるなということを実感しています。映画で世界が変えられると思う人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。今日少しでも考えが変わったなという風になるといいなと思ってお話をします。

(映画の歴史的背景:人々を動かすために使われた)

映画は、約120年前に、「映画の父」と称されるフランスの映画発明者リュミエール兄弟が写真を繋ぎ合わせてパリで上映したのが始まりです。以来、人々に感動を与え、映画を観た人々が行動を起こし、社会変革を巻き起こしてきました。映画には、戦争を止めたり、環境を守ったりする力があることもわかりました。しかし、この映画の力に気付き、いち早く活動したのが実はナチスだったんです。

ヒトラーと、宣伝大臣ゲッペルズという人物は特に映画好きで、「我々は、映画が大衆を動かすための、もっとも近代的な、もっとも効果のある手段であると確信している。それゆえに、為政者は、映画を使わない手段はない」と話し、検閲を行うことで、映画の業界をナチスが掌握していきます。そして、ユダヤ人が出ている映画を一切使わなくなるんです。そして、ある映画を作りました。この作品のなかでは、ヒトラーは大変荘厳に描かれています。ナチスではこうした作品がいくつも制作されました。そしてヒトラーに限らず、日本、イタリアなど、ファシズムをとってきた国々の多くが映画を利用してきました。

(Triumph des Willens (1935) – Triumph of the Will 『意志の勝利』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%8F%E5%BF%97%E3%81%AE%E5%8B%9D%E5%88%A9

一方で、チャップリンは、映画を平和のために使った。自分がヒトラーだったら、という皮肉を込めて、『独裁者』という作品をつくります。第二次世界大戦中に、劇場公開したら爆破するぞ、など脅迫を受けながら、完成、上映し、大成功を納めます。こののちチャップリンは、ルーズヴェルト大統領と対談したり、ラジオなどのメディアを通じて平和のメッセージを世界に伝えていきます。『独裁者』でのチャップリンの演説をご紹介します。「We think too much. We feel too little(考え過ぎて、感じるのが足りないのではないか)」。機械化していく文明に対してもメッセージを届け続けた人です。ナチスが映画を戦争の道具として利用する一方で、チャップリンはポジティブな方向に使おうとした。チャップリンは喜劇王として知られていますが、そうした態度を含め大好きな方です。

(チャプリン『独裁者』)

次に、ベトナム戦争を止めるきっかけとなった1枚の写真をご紹介します。ナパーム弾の空襲を受けて逃げる村人たちを捕えた1枚。真ん中の裸で逃げる少女は、のちに平和活動で活躍するキム・フック氏です。この写真があらゆる新聞や雑誌のフロントページに載ったとき、アメリカからすれば「我々は、ベトナムで何をやっているのか」と強く訴えかけられる1枚となりました。この写真により反戦運動が発展したと言われています。キム・フック氏は現在カナダに移住して、二児の母となり、財団を立ち上げて「私のあの写真を、戦争の象徴として使ってほしくない。平和の象徴のために使ってほしい」と話しています。

このように、映画や写真といったメディアはいくらでも悪い方向にも活用できますが、多くの人々の心を捉え、良い方向へ向けた行動を起こすことができる、非常に素晴らしいものでもあるわけです。

いま、映画の配給事業で出来ること

僕らの会社で平和のために何ができるかを模索し続けてきました。世界が現在直面している状況について、少しお話します。ガザ地区は、2014年7月に過去最大の攻撃を受けています。55日間、人口が密集しているエリアへ酷い攻撃があり、2000人以上の犠牲者のうち4分の1にあたる、500人以上の子どもが犠牲となりました。18,000軒の家屋が壊されました。6歳以上の子ども達は、これまでに3回も戦争を経験していることになります。いま、人口が180万人ほどですが、そのうち100万人以上が、難民となり食糧援助なしに生きられません。病院も、学校も、発電所も、何もかも破壊されてしまった。

戦争・紛争が続くと、だんだん国際社会の応援が少なくなっていく。こういったことが続いているにも関わらず、ガザの人たちは取り残されている。シリアとか向こうの地域の状況も、あまり変わりないところもあると思います。戦争はすべてを奪ってしまいます。平和でなければ夢は持てません。ピアニストになりたいといっても、隣で空爆があったら、ピアノの練習はできないんですね。人類が戦争を放棄することは不可能なのでしょうか。

人を傷つけるのは、戦争だけではありません。バングラデシュ・ダッカでは8階建ての縫製工場ビルが崩壊 し、1,100人以上の命が一瞬で奪われました。そのビルには、建物が耐え得ないほどの什器兼発電機が入れられていました。なかにいた人々は、安価な労働力としてファストファッションの製品をつくらされている労働者たちでした。この事件は、私たちの生活にも繋がっています。服を安く買えるようになった時代の背景には、作業場の手抜き工事があり、人権侵害があり、さらには命まで奪われている。

(CC BY-SA 2.0,Dhaka Savar Building Collapse, rijans)

僕らユナイテッドピープルは、こうした世界の現状を、映画を通じて知っていただくというところから始めようとしている訳です。知ることで、行動も変わっていく。このバングラデシュの事件は、『ザ・トゥルー・コスト』という映画のなかでも紹介しています。ファストファッションの世界の実情を描いた作品です。映画の劇場での上映期間はだいたい2週間、長くても4週間ほどなのですが、この作品は昨年11月に公開して以来、いまだに劇場で上映しています(2016年4月時点)。それだけ反響が大きいようです。服のブランドの裏側のストーリーを知りたいという人が増えているのでしょうか。大量生産・大量消費・大量廃棄。そういう時代をいち早く卒業していかないと、地球が持ちませんし、何より傷ついている人々を救うことができない。こういう映画を観ると、少し、今という時代の解決しなければならない課題が見えてきます。

ユナイテッドピープルでは、さまざまな視点で社会・世界を知ることが出来る映画を掘り起こしていくようにしています。エネルギーのこと、経済のこと、フェアトレードのこと、それからアートで世界を変えるっていうアーティストの活動を追いかけてみたり。人にとって幸せとはなにか、そういう問いかけをして、世界5大陸16ヵ国を巡って撮ったドキュメンタリー『happy』。自然も人も経済がボロボロにしていったが、幸せにする経済はないのか、といった問いを模索する『幸せの経済学』、など。

(映画「幸せの経済学」予告編)

こんな映画を、誰でも上映できるようにしよう、というのが僕ららしい取り組みです。ユナイテッドピープルが通常の劇場上映、DVDやネットでの視聴に加えて、特に力を入れているのが、自主上映会です。我々はそれを「市民上映会」と呼んでいます。観た映画を、誰かが「この映画は誰かと共有したい」と思ったら、市民が手を挙げて、友達や、会社や、組織で上映できる仕組みを提供しています。1回20人から30人が集まる小さな上映会がほとんどですが、そういう上映会で問題を共有し、解決方法をディスカッションして、そして社会を動かしていく。そんな装置を作りたいと考えています。それは、人が出会う良いきっかけにもなるんですね。ものごとを共有し、人が出会い、ともに感動して、ともに行動していく。

2011年9月からは、国際平和映像祭(UFPFF)という、映画のイベントを国連が定めたピースデー9月21日に合わせて毎年開催しています。映像祭は、とくに若い世代、学生などを中心とした、若い世代に世界中の若者に呼びかけて、5分以内の平和に関する映像を出品してもらいます。そして、世界中の作品を共有することによって、それぞれの地域にこういう考え方があるんだ、こういう見方があるのだな、と。そういうことを相互に理解し合い、そしてイベント会場で出会うことによって、友達関係を作っていく。戦争の原因というのは、色んな種類が言われますね、貧困が原因だとか、欲望が原因だとか、色々言われますけれど、根本的な、一番大切な部分、最終的に大切なところは、人と人との人間関係、信頼関係だと思うんですね。この国際平和映像祭では、そういった人と人とが互いのことを知る。そして、出会う。ハグをする。そのきっかけとして開催しています。

なぜ、いまコスタリカなのか

これから1年間、コスタリカに暮らします。その理由は、コスタリカが、平和・環境・教育立国で、民主主義が根付いた、21世紀のモデル国家だからです。

コスタリカという国は、日本と同じく、平和憲法を持っています。1949年に、当時の大統領が決めて、軍隊を持たないという法を作りました。それ以来、コスタリカは「兵士の数ほど教師を」というスローガンを作り、軍事費を国家予算から撤廃。それを、教育費に充てています。日本も平和憲法を持っていますが、自衛隊がいますし、軍事費も存在しているんですよね。ですからコスタリカのほうが本質的に平和国家であると言えると思うのです。

軍隊、そして他国の軍の基地もありません。50年以上、警察機能だけで平和を維持しています。リオ協定が築いた集団安全保障体制、そして国際司法裁判所といったものがその背景で力を持っていると言われています。

また、コスタリカは、環境立国でもあるのです。2006年に大統領に就任したオスカル・アリアスは、中米における戦争の調停によってノーベル平和賞を受賞しましたが、環境にもすごく力を入れた人物です。コスタリカを2021年までにカーボンニュートラルな国にしようということで、森林の炭素の吸収量と、自分たちが向上や車で排出する量とを同じにすることを宣言しました。

2021年までの施策を、かなり具体的に設計しています。2010年当時の政権は、国家開発の五カ年計画をつくりました。その目標のひとつに「環境と調和した経済成長」を掲げました。「環境」という前置きがつくのが、コスタリカ流なんですよね。2014年までに、電力95%を再生可能エネルギーにすると決めましたが、なんと、このとき既に93%実現していた。そして去年には、99%という達成率に。こうした目標を確実に前倒しで実現していく環境立国なのです。日本にも水力と地熱を使える土壌があり、活用出来るエネルギーがあるにも関わらず、なかなか掲げた目標を達成していく空気にならない。コスタリカは、どのようにビジョンを拡大して、どのように実現していってるのか、とても関心があるんです。

最後に、民主主義のあり方についても少しお伝えします。面白い取り組みのひとつが、18歳未満の子どもたちによる、大統領選前の模擬選挙。選挙の前日か前々日に、子どもたちによる投票を行い、投票結果を投票所に掲示するというものです。大人が投票日に会場でその結果を見ると、国の代表者を選ぶ理由も前向きな動機に変わるのだといいます。お祭りのような気持ちで子どもたちが模擬選挙にいくモデルを、いつか日本にも紹介したいなと思っています。

 

コスタリカまでの道のりで、アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパを家族4人で経由し、世界のあらゆる現状をこの目で見てこようとも考えています。

人類が抱えるあらゆる課題の克服へ向けて

いま、世界・人類が克服しなければならない課題が本当に多く存在します。地球の生命力は、わずか40年で、半分になってしまいました。経済活動のためです。木を伐採しすぎです。ゴミを捨てすぎです。私たちは経済成長すれば、社会も人もより良くなると信じ続けてきましたが、そういう時代ではなくなっているわけです。世界は転換期に来ているのだなと思います。ネイティブアメリカンのイロコイ族は、7世代先の一族のために政治を行っていたと聞いています。7世代先というのは、孫の、さらに孫の、さらに1個先の世代なんですね。自分の子どもたちの家族ではない。人類の未来のために行動してきたんです。そういう視点がいま足りていないのかなという気がします。

これは1968年のクリスマス・イヴに撮られた『地球の出』という写真です。”earth rise”、地球で言うところの日の出です。人類が最初に外から地球を眺めたのは、わずか50年前なんですね。この地球という空を見たときに、国境は見えないとか、地上に暮らす人々は皆同じ人間のだということなど、宇宙飛行士たちは色んな気づきや発見を得た。ではなぜ人間同士は殺し合ってしまうのだろう。コロンビア号に乗っていたウィリアム・マッコールはジョン・レノンのイマジンを目覚まし時計に使っていたそうです。そして「イマジンを聞くと、地球には国境がなく、平和で美しく、そして雄大だということを考えさせられる。私たち人類全体が、国境なき世界を想像(imagine)し、どうにかして平和に、ひとつに生きられることを祈る」と話しました。このあと彼が乗っていたコロンビア号は、地上に戻ってきませんでしたが、この言葉は今でも言い伝えられています。

世界でいちばん貧しい大統領と言われているウルグアイのホセ・ムヒカが4月に、来日していました。「決して貧しいわけではないです。質素なだけです」という彼の言葉も、非常に心に響きました。「私たちは、多くの矛盾を抱える時代に来ています。こんなことは、人類史上なかった。軍事費に毎分200万ドル使っています。そして、人類の半分の富を、80人から100人の人たちが持っています」。実際は今、60数人になっています。いまの地球上には、十分みんなが生きていけるくらいのリソースが存在します。にも関わらず、こんなに格差が生まれている。「現代を生きる私たち人類自身が、国民同士、人類自身、または国民同士が殺し合うことを、終わらせなければならない」とも言っていました。これは、私たちが達成しなければならない大儀です。ユナイテッドピープルひとりひとりの力を使って繋いで、世界の課題を解決したい。挑戦を進めていきたいと思っています。

MONDO(問答)

問:人に伝えるという観点で、配給する映画を選ぶ際に意識しているのはどのようなところですか。

いまは、世界中から素晴らしい視点を持っている映画を選んで、日本に紹介しています。日本の映画も数本ですが扱っています。その映画を選ぶ視点としてこだわりを持っているのは、「未来志向である」ということですね。過去のなにかを掘り下げて、何かダメだというよりも、未来へ向けてのヒントとなる映画を選ぶようにしています。こういう考え方があったんだ、と、目からウロコという状況を作れるような。たとえば、多くの自然エネルギーの映画はそのようなメッセージを持っていますし、『happy』という映画は、幸せとは何か、と面白い問いかけをしています。幸せに生きることが何よりも大切だ。それは、自分自身でもあり、家族との時間であり、働くということも幸せに働くんだ、と。僕はそんな風に解釈しました。これからの21世紀、22世紀へ向けて、そもそも幸せを考えさせる映画という意味で、未来志向の映画が必要だと思い、選んでいます。教育の現場でも上映が進んでいて。子どもが夢を描くタイミングで観られるということも重要だと考えています。

 

問:学生です。今の若い世代に求めることは、何だと思っていらっしゃいますか。

DIY精神は一つのキーワードになるかと思います。自分でやる。人任せにしない。人のせいにしない。20世紀を経て21世紀に入った私たちの世界は、だいたい外注している仕組みになっちゃったんですね。保険やローンの仕組みにしても、家を建てるのも、服を作るのも、建物をつくることもそうです。これからの時代は、自然と触れて自ら手足を動かして、食べ物を作り、いただく。自然の恵みを知る。自分の家の建物は全て自分では作れないかもしれないけど、自分も参加をする。この社会を、誰かが勝手に作るシステムにしてしまうのではなく、自分たちひとりひとりが作ってく。家庭や勤め先での行動で変えていけることです。自分が作り手、担い手となって、手足を動かして、感じて、考えて、生き生きと、ワクワクしながら生きてみていただきたいと思います。

問:沖縄と本土、被災地と都心など、日本国内で離れてしまった心を繋ぐにはどうすれば良いとお考えか、ご意見をお聞かせください。

去年は戦後70年という節目でした。ほとんどの政治家が、戦後生まれですよね。そういう意味で、戦争の痛みを知る世代がほとんどいなくなってしまった。広島・長崎の被爆者も高齢化している。語り部を引き継ぐ人たちが必要となっている。福岡に4年間住んでいましたが、そこで旧満州の「満州映画界」というところに勤めていた方と出会いました。彼は91歳か92歳です。彼もインタビューしまして、youtubeで全編公開(https://www.youtube.com/watch?v=LSnpEDoGfHM)しています。日本軍・関東軍がかつて侵略した満州中国、韓国での青春時代を語ってもらいました。彼は満州映画界というところで働きながら、終戦間際は、自爆をする訓練をずっとやっていたそうです。戦争が終わって、中央アジアの方に連れていかれますが、また日本に帰って来て、九州の映画の配給会社の老舗を起業し、今の世代の私たちに、警鐘を鳴らしてくれました。映画人として大先輩です。いまの時代は、戦中のような状況になってきている。秘密保護法のせいで、今、なにが政治で行われているのか、わかりにくくなっている。メディアへの圧力も維持するようになってきた。私たちひとりひとりがそういうことを知り尽くして、ひとりひとりの一票で、これからの日本の平和主義の有り様が変わってゆくと思うので、そうした行動のきっかけとなるような取り組みを今後も続けていければと考えています。
そしてひとりひとりの力を、信じてほしい。自分の力を信じてほしい。ほんとうに多くのことができる、そう思っています。ガンジーの好きな言葉で「ひとりを1万人と思いなさい」という言葉があります。1万人をいきなり変えようとしたら難しいかもしれない。でも、目の前の1人なら変えられる。その1人の先には、また1人がいて、また10人がいて、また100人がいて、1万人につながっている。ひとりのひとに、真っ直ぐにメッセージを伝えていれば、必ず変わります。自分ひとりの力には、無限大の可能性があると信じていますし、みなさんにも信じてほしいと思っています。

<考察>

映像というコンテンツに人類が接するようになって約120年。太古には夜空を見上げ、星々が紡ぎだす光の芸術しか見ることができなかったが、1895年にリュミエール兄弟の作った映写機が照らし出したフィルム映像を皮切りに、テレビ、インターネット、スマートフォンなど、時代に合わせてメディアを変えてきた。映像はおそらく人類が接するコンテンツのうち最も情報量が多く、見る者を没入させ熱狂させる。そして映画館では一つの映像を多くの大衆が囲むことで深い共通体験が生まれ、インターネットはデジタル化された映像を瞬時に世界中に届け、人々を繋げることができる。

映像が持つその力は、第二次大戦中にはナチスに利用されるなど人々を誤った道に進ませることもあれば、人々の心をポジティブに動かし、まさに未来へのビジョンを共有させてくれる。そしてユナイテッドピープルが取り扱っている映画は後者、私たちをより良い未来に導こうとする力に溢れている。テレビやマスメディアが報道できない事実、私たちから遠く離れた場所で同時代に起きている問題や現在の地球が抱える環境問題、その問題に苦しむ当事者やその問題を解決しようとチャレンジする人々の姿など、私たちの目には届かない事実を伝え、彼らの視界を見せてくれる。
しかし残念ながら、映像を観ただけですぐに現実世界が変わることはない。その映像を観ることで今まで知らなかった事実に触れ、現実世界に対する新たな見方とマインドを得ることで、私たちの日々のひとつひとつの言動がゆっくりと確実に変わっていく。そしてそのような人々が増えて互いに繋がり合うことによって、世界が変わる可能性も高まっていく。

「人と人をつないで世界の課題解決をする」。ユナイテッドピープルが掲げるこの理念の通り、映像体験によって人々が繋がることで、初めて世界が変わるのだ。そして映像の真価とは、ただその光によって目を楽しませるだけではなく、どれだけの人の心をエンライトすることができるか、劇場を出たあとの人々の日常をどれだけ変えることができるかにかかっている。

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