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映画『うみやまあひだ』上映×トークセッション 〜今こそ地球目線で考える〜

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一〇〇〇年ものあいだ、森とともに生きてきた日本人。自然に対する畏敬の念を持ちながら、森から海へ、そして海から森へとめぐる自然の恵みを受け、自然とともに暮らしてきました。その心と暮らしの原型を伊勢神宮に見出した写真家の宮澤正明氏は、カメラを手に、伊勢の森から全国各地の森へ、点と点を結ぶ旅を続けた。

伊勢神宮で約千三百年にわたり続けられている、二十年に一度の式年遷宮。古い社殿の隣に全く同じ様式の新しい社殿を建て、神様にお遷りいただくこの大祭は、気の遠くなるような歳月を超えて守り継がれている世界でも珍しい神事です。広告、雑誌、写真集と幅広いメディアの第一線で活躍する写真家 宮澤正明は、二〇一三年に行われた「第六十二回式年遷宮」を十年にわたり追い続けました。研ぎ澄まされた感覚と対象への温かいまなざしが捉えた、伊勢神宮。その姿がこの映画『うみやまあひだ』に収められています。

イベント当日は映画の上映後、日本が育んできた “自然と共に生きる方法”を深堀して、現在地球に起きている様々な問題を和の叡智をもってどのように考えていけばよいのか、各界で活躍するゲストたちが科学的かつ経済的視点から語り合いました。

登壇者(写真左から)

<モデレーター>

鎌田雄介氏(映画「うみやまあひだ」プロデューサー。)

<ゲスト>

竹村真一氏(京都造形芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。当財団 評議員)

堀潤氏(ジャーナリスト/キャスター)

宮澤正明氏(映画「うみやまあひだ」監督。写真家。)

井上高志氏(株式会社ネクスト代表。当財団 代表理事)

【「うみあやまあひだ」予告編(動画)】

繰り返される「常若」の精神

鎌田:まず竹村さん、映画の感想と、ご自身の活動に繋がる部分などお聞かせいただけますでしょうか。

竹村:冬至の日の出時の火起こしのシーンが非常に厳かで印象的でした。冬至の時に行くと参道の鳥居の真上にちょうど日が昇ります。冬至というのは太陽が一度死んで生まれる時なのです。

日本語の「ヒ」は太陽の「日(陽)」でもあり「火」でもあり「ヒトの霊(魂)」でもあります。ですから男の子に生まれたらヒコ、女の子に生まれたらヒメ、自分たちはヒト。そして、その「ヒ」が継がれていく器のことを棺(ヒツギ)と呼ぶんですね。

生命力の根源にある「ヒ」は、太陽から始まって、それを引き写した「火」を毎日おこして神様のための食事を作るということが大切なんですよね。

このように日本では「ヒ」というのは非常に深いものです。

そういうことが全てものすごく美しい形で横溢しているのがこの『うみやまあひだ』という映画なんですね。

私達の体は、実は毎日壊して作り直しているんです。細胞は毎日3千億くらい新しく生まれて、古い細胞が死んで循環している。私達は昨日と同じ私達ではない訳です。僕らは非常にクリエイティブな存在なんです。つまり、「お変わりなく」生きているようでも日々つくりなおし続けている。それが伊勢神宮の「常若(とこわか)」という思想の根本なんですよね。

ただ単に保護するとか、受け継ぐだけじゃない。毎日壊し作り直し続ける、非常にクリエイティブな、創造的な姿勢がなければそれができない、ということを棟梁さんも皆さんも仰っていたと思うんですね。森も守るだけじゃなくて、適切に木を切ったり植えたりして新陳代謝を促し健全で多様性に満ちた森にするために、作り続けていくことが大切なんですね。

鎌田:冬至の太陽の話がでましたが、宮澤さんは夏至の太陽も撮影なさってますね。

宮澤:夏至は、二見浦の夫婦岩の真ん中から太陽が出ます。僕も10年ほど夏至の時に撮ってきたんですけれども、梅雨の時期なので2、3回くらいしかチャンスがなくて。最後に一回だけ出てきたのが、偶然、富士山の真上に太陽が昇って、二見浦のちょうど真ん中に出た。太古の昔から宇宙的に天文学的にデザインされたのかなと思うくらい緻密な計算がなされていて、撮っていて不思議でしたね。

竹村:富士山は活火山です。古事記ではイザナギイザナミ二人の神様が交わってイザナミが島を産み、国土を作っていったと記されています。イザナミが最後に生むのが「火の子」なんですが、「火の子」を生む時に、産道を焼かれてしまって、イザナミが病み衰えて糞尿を垂れ流す。その糞尿や反吐が豊かな鉱脈になり、うんちから豊かな大地ができ、おしっこから豊かな川の流れができた、という日本の国土の誕生が語られています。火山の噴火は確かに「災い」ももたらすんだけど、長い目で見ると大きな「恵み」をもたらすということの隠喩でもあります。

日本がこれだけ狭い国土でも豊富な質の良い農作物を収穫できるのは、窒素や鉄分を含んだ火山灰が降り注いでそれが洪水によって堆積しミネラルがものすごく豊富な平野を作ってくれたからなんです。

これは火山の「恵み」の側面なんですけど、火山噴火を「災害」としてしか捉えられない、非常にやせ細った自然観でしか物事を捉えられなくなってしまっているのが現代の私たちです。古事記、古代の日本人のほうが災いと恵みは表裏一体だ、という感覚を持っていたのかもしれません。

 

映画『うみやまあひだ』より

天災と人災

鎌田:災害、というお話が出ました。最近の災害は人災が半分以上だ、という言い方をされる方もいらっしゃいますけれども、堀さん、まずは映画の感想をひとこといただいて、映画と人災と言ったテーマで、ご自身の映画『変身 − Metamorphosis』のお話も聞かせていただけたらと思います。

堀:『うみやまあひだ』のなかで一番染み入った部分は、火をおこすシーンでした。恐らく、この手の中で火をおこすという実感値を越えた、過剰な火力というのを我々が手に入れてから、消費社会というのが非常に加速度的に拡大していった訳ですよね。大量消費、過剰供給社会の何が一番の悪かというと、やはり我々が単なる生産者ではなく、消費者側に甘んじてしまうことなのかなということを強く感じました。私達は特に何を生産したという実感値がなくとも、貨幣という対価を払うことで何でも手に入れられる。そういう社会に生きています。それってある意味、ものごとの摂理について意識すること無く、さまざまな苦悩などに関しても預けるような形で、恵みだけ教授するようなことに慣れてしまっている。それってすごく当事者意識を失わせることだなと思っています。

僕はNHKを辞めてNPOを立ち上げて市民メディア「8bitnews」を運営しているんですが、一番の理由はとにかく「当事者意識を喚起すること」なんです。なぜかというと、この世の中は誰が作っているのか、僕らは日本にいると、「誰かが作ってくれる日本」に生きているのではないか、と。だからこそ災害などが発生すると、地域が復興していく姿をみるときに改めて自分たちの生き方を顧みるひとつのきっかけになったりするのですが。それではこの国の政治も多岐に渡る社会問題も改善の方向にはなかなか向かわないのだと。それを考えた時に私達は「火のぬくもり」というのを自分でおこす覚悟を持っているのか、というのを感じさせられました。

当事者意識を失わせるほどの消費社会で、消費者側で生きることって、非常に僕は嫌だなと思っていまして。先ほど映画の話をしていただきましたが、僕はNHKを辞めるきっかけになったのは映画を作ったことだったんです。ロサンゼルスに一年いたのですが、アメリカのはじめての商業用原子炉というのがロサンゼルスから車でわずか一時間あまりのサンタスザーナというところにあったんですが、そこが1959年にメルトダウンを引き起こしたんですよ。スリーマイル島の原発事故が1979年ですから、その20年前です。

当時は冷戦が始まって間もない頃で、各区の開発が両国においても両地域についても重要な意味を占めていました。その機密事項に守られた敷地内で事故が起きる訳ですが、それが半世紀ものあいだ情報が公開されずに隠蔽されていたんですね。ちょうど僕がいた2012年に地元の方々の絶え間ない努力によってカリフォルニア州議会が動き、国が調査を行い、50年前の事故によって地域にどのような汚染が引き起こされたのかいうのが、はじめて明らかになったんです。

鎌田:酷い汚染だったんですか。

堀:はい。セシウム137、僕らも福島県第一原発の事故以降、おそらく耳にしたことがある放射性物質ですが、半減期は30年以上にもなります。それが日常生活で受ける放射線レベルの一千倍以上の濃度で残っていたりなど、色々な環境汚染の実態がわかったんです。地下水が汚染されている、など。そのときに米国民達が何を言うかというと、「もう事故の因果関係はわからない。私達には色々な健康被害があるけれど、それは50年以上経っていてわからない。しかし未来の世代にそれを引き継ぐことは辞めてほしい。ですから今のうちにしっかり除染して対応をとってほしいのだ」と。国側も地域の状況に大変同情しますが、因果関係も含めて当時の責任を問いただすようなことはできない、しかし今後については住民と連携しながらやりたい、と。そういう方向性だったんです。

私達が当事者意識を持たずに、何かに預けていく生き方というのはただの被害者側になることでしかなく、間違いなのではないか、というのはつよく感じさせられます。そんななかでまさに今回の映画に出てくるような人たちは、消費社会に生きながらも生産者であり、何かを生み出すひとたちなのだと。それが最後の場面で、一般のみなさんが植樹、植林をしたり、発信をしていったり。そういう姿に非常に力をもらいました。

映画『うみやまあひだ』より

新しい時代の自然と人間の関係性

鎌田:井上さん、映画を観ていかがでしたか。

井上:まず「1000年単位でものごとを考えよう」ということを思いました。私が代表理事を務めるNext Wisdom Foundationでは普段から「100年後のより良い未来をつくるために叡智を集めて紡いでいこう」ということを言っているんですが、「100年じゃなかったな」と(笑)、この映画を拝見して強く思った次第です。100年後というと自分の一生の尺度から考えると、自分は生きているかわからないけれど、想像できる一番遠い未来、ということで、自分なりに遠い未来について語っているつもりだったんですけれど、人類、とか自然環境、とか、場合によっては星とか宇宙といったところまで語り始めると、100年というのはあっという間なんだな、というのを感じました。堀潤さんのお話を聞いていて、当事者にならなければいけないのだな、ということも感じさせられました。

普段から僕は当事者意識を持て、ということを社員にも言っているんですけれど、極論、今日天気が悪いのも俺のせいだし、政治が悪いのも俺のせい、マスコミが悪いのも俺のせい、という風に、「全部俺のせい!」と考えると、解決脳が動き始めて、どうやったら変えられるかな? と考え始めるわけです。そうすると、一市民として、そんなに色々知っている訳ではないけど、とにかく行動しよう、という思考回路や行動になっていきます。そういうことをやっている財団なんです。

『うみやまあひだ』は昨年拝見させていただいて、そのときも素晴らしいなと感じさせていただきましたが、一年経って、当時「1000年単位で考えよう」と思っていたのに、今日また同じことを思っていて、つまり忘れているということなんですね(笑)。ですからこの作品を少なくとも半年に一回は観ることにしよう、と思いました。

先日、ベナン共和国という人口約1,000万人の国に行きました。農村部では世帯年収が日本円で1万円くらい、都心分でも初任給で月給1万円から2万円くらい、というところで、まだまだ非常に貧しい国なんです。農村部ではいまだに電気もガスも水道もなくて、水汲みというと緑色の汚い川の水を子ども達がバケツで汲んでいる。それを飲むと寄生虫が体から出てきて腹が減ってくるとか、下痢をして脱水症状で死んでいくとか、そんな状況がまだ変わっていない。しかし都心部に行くとちらほらスマートフォンを持っている方を見かけたり、信号待ちで停まっていると、自撮り棒で写真を撮っている子を見かけたりして、6年前に訪問した時にはそういった人たちを見なかったんですけど。アフリカの最貧国と言われるところでもだんだん20世紀型の消費社会の波が来始めているんですね。一方で同じ国のなかで農村部ではまだまだ生命維持をするだけでも大変な地域もある。

それを見た時に、なんとかこの20世紀型の膨張を止めて、早く21世紀型のサステナブルな形の変化を起業家としてできないかと非常に強く思いました。我々の財団は「ウィズダム」と言っていますが、やはり叡智が大事。人類がこれまでつくってきた古今東西の叡智。これを使いながらどういう未来をデザインしていくか。それを『うみやまあひだ』は教えてくれているし、途上国に行くとこのままではまずいぞというワーニングが上がってくる感じがします。

竹村:皆さんもこのところよく耳にされると思いますが「BOP」Bottom of the Pyramidの意味をご存知でしょうか。

簡単に言えば、地球上70億の人口のピラミッドの底辺に属する人々に向けて、マーケットが縮小してしまった先進国で余って作りすぎてしまったものをたくさん売っていこう、という戦略がBOPビジネスですね。

弊害も多く、今まではバナナの葉っぱでポイッと捨てても自然に帰っていたのが、循環しないプラスチック製品が途上国に輸出されて、同じように捨てていっても全然循環しなくてゴミだらけになるという世界になっているのです。

しかし、僕は既に「一歩先に行く兆し」は見えてきていると思うんですよ。

例えば、今は稲藁を廃棄物として捨てていますよね。ものすごい廃棄コストを掛けて捨てているわけですが、そういう廃棄されていた植物からセルロースナノファイバーという、環境負荷が少なく鉄より軽くて強い、とんでもない新素材を作り出したり、いま手入れの行き届かない森で竹が増えすぎて山崩れなどが問題になっていますが、その竹からエレガントな紙をつくるメーカーがあります。

また、衛生的でクリーンで便利な生活は、電気と水と大量のエネルギーがなければできないという「20世紀的」な常識をリセットして、水がなくても電気がなくても、完全にクリーンで汚れない衛生的な無水無電源トイレを日本のメーカーがつくっています。きっかけは3.11だったそうですが、衛生的なトイレを使えない人口が国連の発表では25億人くらいいると言われていて、その25億人に対して無水無電源トイレを作っているんですね。

他にも、狭い土地を争ってスラムが増えていったり、大変な液状化に悩んだりしている国がありますが、それに対して、海に暮らすというソリューションを日本のメーカーが出しています。沿岸部に浮体式の住宅マンションを作るだけじゃなくて、太平洋のど真ん中にだって街を作れる。キリバスだって海面上昇になってもその技術で救える。そうするとこれまでの状況を越えていくことになる。凄い未来がこれから開けているんですね。

そういう新たな技術がこれからの世界標準になっていくということで、Bottom of the Pyramid じゃなくて、新しい地球標準という意味で、Base of the Planet、という風に「BOP」を僕は読み替えているんです。

堀:確かにチャンスかもしれないです。僕もこの間TOYOTAのみなさんと一緒に環境をテーマとするシンポジウムに出たんですけど、TOYOTAが2050年までには全生産工程でCo2の排出をゼロにすると打ち出しました。そんなこと出来るんですか、具体的にどうするんですかと聞くと、今もう始めていることがあるんです、からくりですと。何のエネルギーを使うこともなく歯車でどこかが重くなったらこちらが動いて、それでカチカチと動いていく。

鎌田:からくりって日本の伝統工芸ですよね。

堀:ですよね。伝統工芸としてからくりを見る機会がありますが、TOYOTAの工場に行くと技術者の人たちがからくりを使った生産工程を増やしているんですよ。電気もオイルも何も使わずにものが作れるという、まさにからくりの技術で工場を動かそうという技術。大きなプロジェクターにバーンと「からくり」って出ているのをみて、そういう手があるのか、と。びっくりしましたね(笑)。そういう機運がいま変わりつつある、地球標準へと。

井上:竹村さんの話を聞いているといつも地球標準の話と、わくわくするような、未来は明るいんだな、やればできるんだな、と勇気をいただきますね。でも逆に言うと、今の社会は大事な情報については情報過疎な気がしますね。

竹村:大事なことは全然伝わっていなくて、情報洪水でつまらないことが大量に同じように毎日流されている。堀さんには悪いけど(笑)、時には新聞テレビは全部やめる。要するに数秒事にSNSとか、最悪じゃないですか。対話するべき相手は孔子だったりプラトンだったり何万年前の人だったり、いろいろいますよ、現世界にいる人だけじゃなくて。オフラインの時間を増やして色々なことを自分ごとにしていくというマインドセットが必要な時期かもしれません。

堀:スマホのゲームにも皆さん時間取られてますからね(笑)。お金も取られてる。だいぶあれ減らすといいと思いますけど(笑)。最近僕がすごいなと思ったのは、最新型のドローン。今までのものだと航続距離が2キロとか3キロだったのが、新しくお目見えしたばかりのものは200キロくらい飛ぶんですね。200キロくらいの距離を30分くらいで到達するのでものすごい高速に飛ぶんですけど、自前でプロペラを回して飛ぶというよりは、グライダーみたいに滑空するんです。それに人工知能が搭載されていて、どこからどういう風が吹くかとか全部予測して、先回りしながらすごいスピードで飛んでいくんです。例えば救急医療キットとかをぶらさげていって、この半径メートル以内に、と完璧にそこに落とすことができる。

鎌田:それは日本の技術なんですか?

堀:アメリカです。これを使うと医療施設がなく道路が整備されていない貧困国でも、救急の場合にこれを飛ばして30分以内に医療キットを落とすということができるようになります。ドローンを飛ばすのに日本ではしがらみがあったりしますが、貧困国で後発国ということでしたらすぐに導入してすぐに実現可能です。私達が蓄積してきた技術は誰の何のために使うものなのかという仕分けがきちんとできないといけないですよね。

ドローンも環境の話でいうと、アマゾン川流域や、インドネシアなど、複数の島で成り立っている地域では、ドローン輸送の開発競争が進んでいます。アマゾンを切り開いて道路をつくる、空港をつくる、これは環境破壊ですよ。そうではなく、ひとっとびに輸送網が構築出来るドローンが良いじゃないかということで、ものすごくたくさんのベンチャーがブラジルで、そしてインドネシアで、環境対応としてのドローン技術の導入が進んでいます。使い様や視点の向け方で随分見え方が変わるものだなと。

竹村:逆に買い物難民がでているような過疎の村では、利便性の悪さがドローンでリセットされるわけです。物流コストとか、別に道路がなくても届けられるとあれば、全然風光明媚な、しかし今まで20世紀的な利便性がなかっただけで孤立していたようなところが、すごく良いスポットになったり。

井上:少し話を戻すと、日々一個一個自分にできることを何かするとなると、例えばドローンのクラウドファンディングを少しでも応援するとか、そういうことですかね?

堀:そうですね、明確な意志を持ってアクションするということなんじゃないでしょうか。 クラウドファンディングもそうですし、要は流される、浮遊する人にならないということだと思うんです。わたしはこういう理由で、この技術には自分の1,500円が役に立つかもしれないから入れてみよう、そこまでいったらもう早いものだと思うんです。でもそこになかなか至らないわけです。日々生きるのも精一杯だし自分の好きなことをやるのは楽しいし。でも、ちょっと違うことでやらなきゃ、という気付きと、小さなアクションが始まれば、また実装できると思うので。

井上:実感を伴って「私の1,500円が、実際にこういうものに役立った」となるだけでも随分違いますよね。お金が議決権だっていう考え方をすると、自分が気に入ったものに投票するっていう消費活動をするというのが良いと思うんですよね。例えば野菜でも形の悪いものと綺麗なニンジンとどちらを選ぶかといったときに、環境とかも考えてちゃんとしたものを買おうとか無農薬のものをかおうとか、議決権を投じているということ。

例えば、フェラーリに3,000万円出すというのもその人にとっての価値なので良いと思うんです。ただし何に価値を感じるかというのを自分で学習していって、竹村さんのいうようなこのプラネット、地球にとって良い議決権の使いかった何だっけ?というのが軸足にあると、地に足がついていてサステナブルなのかなと思います。例えば、バングラデシュの低賃金重労働のなかで人命まで失うほどのコストの上に成り立っているファストファッション、それを着続けることが本当にいいことなんだっけ、とか、食料でも着るものでも、生活全般において色々な判断が入る余地があるんじゃないかなと思います。

映画『うみやまあひだ』より

先端技術の中にある「伊勢神宮」

鎌田:今日の会では冒頭で尺八をみなさんに聞いていただいたんですが、ハイパーソニックサウンド(可聴域外の音)が尺八にも出ているそうです。

宮澤:お会いしてインタビューする際にはじめて私もハイパーソニックの存在を知ったので、自分もかなり驚愕しました。尺八や和楽器が多いのだそうで、実際に森の中で尺八を吹くということを映画の中でやってのですが、人工的な高周波と、もともとある高周波のコラボレーションというのでしょうか、それを映像化して。ドキュメンタリー映画として唯一あそこだけは演出しました。そういう映画のスパイスを入れたかったんです。

竹村:個人的にも岩笛とか尺八に非常に体が震えます。人間の感性もまだまだ未開の可能性を秘めている。人間は幼年期の状態で、まだ本番を迎えていないんだと思うんです。人類文明もまた非常に幼年期です。過剰な消費とおっしゃっていましたが、確かに消費しているエネルギーは大きいんだけど、99%は無駄にしているんですよね。例えば白熱電球だと、発電時、送電時、発光時、トータルで約99%のエネルギーが無駄に費やされていて、僕たちが本来欲しいと思っている「光」に変換される部分は元々のエネルギーの1%しかないんですよ。自動車だって従来型のガソリンエンジンだと、8〜9割はエンジンの廃熱と摩擦で失われていて、残りの10%が動力で使われますが、これもまた結局は移動したい我々を運ぶために使われるというより、我々よりずっと重い車体を運ぶためのものなんですよね。

ということは、100隻分のタンカーを中東から運んできた場合、99隻分はただ都市のヒートアイランド現象を強めて、都市を温めるために無駄に使われている。これはまさに過剰な消費ですが、逆に言うと伸びしろが相当あるということです。今の若い人たちはこんなに文明が発達しているのに、それでもこんなに不幸や格差がなくならない、もうどうすればいいんだ、というけど、違う。前の世代までは未熟で、やっとこれから人類の成長期なんだから、君たちのやるべきことは大変伸びしろがあるから安心してくれ、伸びられる兆しがたくさん出てくるから、と言いたい。

エレガントな文明をつくれますよ。ぼくらはその基準を持っているんですよ。伊勢神宮とか尺八とか、未開な人類がまだ開いていないところを、何を開いていくべきなのかを垣間見せてくれるものがある。そういうものを自分たちの基準としてちゃんと持っていきましょうということを言いたいですね。

堀:一日地球に降り注ぐ太陽エネルギー量で、人類73億人の一年分をまかなえるんですよね。

竹村:そうですね。いまは99%無駄にしていますから、本当は100分の1のエネルギーでやっていけるんです。でも今のそのムダに使っているエネルギー量を前提としても、太陽のエネルギーの1万分の1で足ります。

井上:それすごいことですよね。その話を聞いて、僕は人工光合成に興味を持って、実際に研究されている東京大学の先生のところまで訪ねにいったんですけど、植物と同じで光合成を起こすんですが、それを人工的につくるというもので、必要なのは、水、二酸化炭素、光、以上です。その東大の先生の研究では、ビーカーのなかにシートを沈めて水を入れて光をあてるだけで、ボコボコと酸素がでてくるんですよ。エネルギー転換率はいまどれくらいなんですかと聞いたら、確か1.4~1.5%くらいということで。実用化するためには4~5%要るみたいなんですね。これはものすごい夢のエネルギー源だなと思って。

竹村:「光合成」というのはその辺にある「葉っぱ」が当たり前にやってることなんですよね。細かいことを言えば、葉っぱ自身がやってるわけではなくて、葉っぱに共生しているシアノバクテリアというものが、なかで頑張って光合成をしているんですが。

人工光合成が実用化されていけば人間の都市が、葉っぱや森にはまだまだ及ばないけど、ちょっと似た存在になれるかなと。そんな時代に今の子どもたちは育っていくわけですから、鉄腕アトム以上にわくわくする時代なんじゃないかなと僕は思うわけです。

宮澤:二年前にワシントンのサクラフェスティバルでこの映画が公開されました。昨年は東京の二子玉川で上映しまして、各地で上映させていただいて、講演もいろいろな方とさせていただいて。昨日も富山で環境サミットの一貫として上映させていただいてきましたし、今日もこうやってみなさんと語り合えて、素晴らしい機会をいただいたなと思っております。

僕は東京生まれ東京育ちなので、伊勢神宮に行くまでは自然とか森というものをあまり日常的に感じることはありませんでした。ところが通っているうちにだんだん自然というのを身近に感じることができて。1,000年という時間軸も大切ですが、日々の持続しているものがあるからこそ、1,000年や100年という時間に価値がある。伊勢神宮はそういうことを僕に教えてくれました。神様の引っ越しは20年に一回ありますが、20年に一回、常若っていう新しくする精神を繰り返すことが、永遠を求めるひとつのきっかけを教えてくれる。

パルテノン神殿もピラミッドも一回で永遠を求めたから、朽ち果ててしまう。しかし伊勢神宮は常に若くすることを20年に一度やる、それを繰り返すことで伝承や伝統を守り次いでいくことになっていく。それは難しいことではなくて、衣食住といった日常的なことから生まれているんですね。私たちは自然と神と語り合いながら、畏敬と感謝の念を感じて、衣食住という知恵を神話に例えたりしながら持ってきました。伊勢神宮というものは非常に身近なことで、自分たちのDNAに必ずあるはず。そんなことを思いながらこの映画をつくりました。皆さんにも何かしら感じていただければ嬉しいです。

映画『うみやまあひだ』より

<映画の基本情報>

監督/撮影監督:宮澤正明

エグゼクティブプロデューサー:奥山秀朗

プロデューサー:服部 進 鎌田雄介 瀧澤 信

編集:宮島竜治

構成:鎌田雄介

音楽監督:立川直樹

音楽:アキコ・グレース 喜多嶋 修

エンディングテーマ曲:「GIFT」AUN Jクラシック・オーケストラ

製作:サステイナブル・インベスター

制作:ハートツリー ジェネレーション・イレブン・ピクチャーズ

制作協力:宮澤正明写真事務所

配給:ライブスパイア、ジェネレーション・イレブン・ピクチャーズ

2014 年/79分/4K/カラー/デジタル/アメリカンビスタ/5.1ch

*公式ホームページ http://umiyamaaida.jp/

*DVD販売ページ http://umiyamaaida-shop.jp/

【登壇者プロフィール】

・堀潤氏:ジャーナリスト・キャスター。1977年生まれ。元NHKアナウンサー、2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター、毎日新聞、ananなどで多数連載中。

・宮澤正明氏:1960 年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。1985年に赤外線フィルムを使用した処女作「夢十夜」でニューヨークICPインフィニティアワード新人賞受賞。帰国後、ファッション・広告の分野に活動の領域を広げる。2004 年より伊勢神宮/神嘗祭の撮影を行う。2005 年第62 回神宮式年遷宮の正式な撮影許諾を受け「現代に生きる神話」をテーマに撮影を開始、 2013 年10月に行われた遷御の儀までの間に6万点に及ぶ作品を奉納する。伊勢神宮の森をテーマにしたドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』を初監督。海外の映画祭に数多くノミネートされ、マドリード国際ドキュメンタリー映画にて2冠に輝く。

・竹村真一氏:東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の新たな「人間学」を提起しつつ、ITを駆使した地球環境問題への独自な取組みを進める。世界初のデジタル地球儀「触れる地球」や「100万人のキャンドルナイト」、「Water」展(07年)などを企画・制作。2014年2月、丸の内に「触れる地球ミュージアム」を開設。環境セミナー「地球大学」も丸の内で主宰。東日本大震災後、政府の「復興構想会議」検討部会専門委員に就任。

・井上高志氏:株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務時代に「不動産業界の仕組みを変えたい」との強い想いを抱き、97年株式会社ネクストを設立。不動産・住宅情報サイト『HOME’S(ホームズ)』を立ち上げ、掲載物件数No.1(※)のサイトに育て上げる。現在は、国内・海外併せて15社の子会社を展開、世界46ヶ国にサービス展開している(2016年6月時点)。個人の活動として、ベナン共和国の産業支援プロジェクトを展開するほか、民意を直接政党に届けるプラットフォームを提供し、直接民主制の実現を目指す一般社団法人デモクラティアン 代表理事も務める。

※産経メディックス調査(2016.1.23)

↑トークセッションの様子は動画でもご覧いただけます。

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