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【SOW!Vol.3】世界ゆるスポーツ協会 澤田智洋氏

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「SOW!」は、これからの未来を切り開くための叡智や、失われそうな叡智を持って取り組む人・団体(プレゼンター)に対し、各分野の専門家、日本を牽引する起業家(プロフェッショナル)が、自身の叡智をアイディアとしてシェアするサロン的セッションです。
 3回目の開催となる今回は、5組のプレゼンターが5分間のプレゼン後、プロフェッショナルによるディスカッションタイムを開始し、各プレゼンターたちが今抱えている悩み・課題解決への糸口をその場で探っていきました。

<プレゼンター>
澤田智洋氏

<プロフェッショナル>
齋藤貴弘氏・楠本修二郎氏・井上高志氏

「NIN-NIN」プレゼン動画

<NIN-NINの課題>
①通信環境の劇的改善

②軽量化など試作品の改良

③コミュニケーションに長けたガイド人材育成

④インクルーシブなビジネススキーム構築

属人的な動機からはじまった

楠本:忍者型ロボットNIN-NINを始めた最初のきっかけは何ですか? 澤田さんのプレゼンを聞いて、どういう問題意識で始めたのかなと思って。こんな活動を続けたら日本はこうなるとか、世界がこんな風になったら良いなという思いがあったのですか?

澤田:僕は海外に13年住んでいたのですが、海外ではアジア人がマイノリティーなんです。そして、日本に帰ってきたら今度は帰国子女がマイノリティーだった。さらに僕は、固有名詞が覚えられないとかスポーツが苦手という面でもマイノリティーだったので日本で生きづらくて。あと、僕には息子がいるんですが、彼は先天的に視覚に障害があるんです。そうなると、自分も息子もマイノリティーで、これはなんとかしないと、僕たちが面白くないなと思ってNIN-NINを始めました。けっこう属人的な動機から始まりましたね。

日本は今、高齢者が約3200万人、障害者手帳を持っている人は約800万人います。ざっくり計算すれば日本の3分の1に当たる4000万人がマイノリティーなんですよね。この数はマーケットでもあるし、彼らがハッピーになれば日本も良くなると思っています。

斎藤:NIN-NINは視覚障害者のアテンドから入っていますが、もう少し普遍的な応援の方法があると思いました。たとえば、海外に行くと言葉が通じないし話せないという状態がある。そのときに、たとえばNIN-NINが通訳をするという支援方法もあるなと。こういうシェアサービスは、ありそうでないなと思いました。

澤田:インバウンドという観点からだと、日本にくる海外の人はすごいマイノリティーですよね。でも旅行者に聞くと、四六時中ガイドしてほしいわけではないんです。ただ、日本人ガイドはホスピタリティーがあってお世話をしすぎちゃうケースがある。NIN-NINだと、必要なときに必要なだけサービスをするというところでも役に立てるかなと思います。

NIN-NINとゆるすぽを絡めてみれば?

斎藤:NIN-NINもそうですが、シェアサービスの本質は、今までBtoCが基本だったものをCtoCに移そうって話ですよね。CtoCだから、もっとカジュアルに消費者に近い感じになると良いなと思いました。たとえば、今まで通訳案内士は国家資格保有者による独占業務だったのですが、国家資格保有者以外による幅広い主体による通訳ガイドを可能となります。こういう新しいマーケットに、NIN-NINは入っていけるのかなと思いました。

楠本:僕は自分でNIN-NINを使いたいと思いました。仕事柄、街を歩く癖があるんですが、50歳過ぎるとつまらないわけですよ(笑)。だから、誰か別の人の目線で街を歩いてみたいなと。NIN-NINには誰と目線をシェアするのか、という観点もあると思いました。

澤田:ブラインドサッカー日本代表の加藤健人さんの肩に、女性が入ったNIN-NINを乗せたことがあるんですが、加藤さんとしても女性感覚で街を歩くのが新鮮だと言っていました。NIN-NINはライフスタイルのシェアにもなると思います。

井上:会場の皆さん、ゆるスポーツのことはあまり理解していないと思うので補足します。澤田さんたちは新しいスポーツを何十種類もつくっているんですよね。僕が最初に澤田さんに会って話したときに感じたのは、NIN-NINとゆるスポーツを絡めて、ご自身で企業を束ねていってやっていくのだろうなと思ったんです。今回のSOWは、事務局に出てって言われたから出てますか?(笑)

澤田:いえ(笑)、どの事業もヒトモノカネが足りていないです。NIN-NINに関して言うと、優先順位が高いのは通信の安定性ですね。ポケットWi-Fiでやっていると、たとえば視覚障害者の方が地下に入るとNIN-NINが切れてしまう。頼もしい相棒が急にいなくなってしまう。通信の部分は、僕たちだけでやっていても限界があるので通信会社さんと組めれば良いなと思います。

井上:たとえば、5Gを提供してもらうと解決することですか? 加治さん、キャリアのトップに知り合いはいないんですか?

加治:ちょっと確認したいことがあるので聞かせてください。NIN-NINの単価はいくらですか?

澤田:オリィ研究所と提携して開発しているのですが、実費は結構かかっていますね、今は1台あたり10万円くらいです。ロットのシミュレーションはこれからするところです。

加治:初期に数を多くつくるのは重要だと思います。たとえば、調査用に使うのはどうでしょう。化粧品会社のマーケティング調査手法として、ターゲット層の女性にNIN-NINを乗せてコスメ売り場を歩いてもらってデータを取るなど、BtoBを狙うのはどうでしょうか。
NIN-NINのもともとの課題は、視覚障害者と助ける人のマッチングの話ですよね。両方を一度に解決しようとせず、まずはどっちか片方で良いと思います。たとえば、主婦が時間のあるときにアルバイトで、視覚障害者の散歩を助けるとか。それができるプラットフォームが実はUberです。いまUberは日本で拡大していこうとしているので、彼らにハンディキャップのある人のサポートサービスを売り込んでみてはどうでしょうか。そうするとある程度、最初に数が確定できてコストが安くなる。そうすると、通信会社も参入しやすいと思います。

井上:ゆるスポーツは、他にもハンドソープボールとか100cm走とかあるんですよね。僕が澤田さんに伝えたのが、澤田さんに新しいゆるスポーツを開発してもらって、そこに企業スポンサーを付けてマーケティングとか企業ブランディングでゆるスポーツを使ってもらうという方法です。これと同じように、NIN-NINを作るために、たとえば1社あたり10台分のお金を出してもらって、それが20〜30社くらい集まるとNIN-NINのユースケースも増えるでしょう。その企業連合に参加した企業のなかにキャリアも混じってもらって通信面の面倒を見てもらうとか。そういう、ゆるスポーツとNIN-NINの連合体がつくれると良いですね。

楠本:そのコミュニティーで、ゆるスポーツやNIN-NINを楽しむアイディアが、ますます膨らんでいきそうですね。

オーディエンス①:僕は脳性麻痺で、子どもの頃からずっと車いす生活です。パラリンピックに挑戦したり、健常者に混ざってスポーツをしましたが、人生ずっと負けっぱなしでした。あるとき澤田さんに、『ブラックホール卓球』の自称アンバサダーをやってくれって言われてやってきたんですよ。ブラックホール卓球というのは、ラケットの中心にS〜LLまでの大きさの穴をあけて卓球をするんです。これで僕は、生まれてはじめて健常者にスポーツで勝ちました。

澤田:「見たか、健常者!」ってガッツポーズしてましたよね(笑)。

スポーツはもともと、楽しいもの

楠本:人材育成の課題とは、どんなものですか?

澤田:視覚障害者のアテンドにはガイドヘルパーの資格がいるのですが、これにはコミュニケーション能力も重要なんです。NIN-NINも同じで、遠隔からの伝え方やコミュニケーションの間合いが重要で、いきなりやって誰でもできるものではないので、人を育成する制度が必要だと思っています。この育成の中で、人生に活きるコミュニケーション能力が活性化されていくと思うので、それをPRしながらNIN-NINアテンド育成制度をつくれないかなと思っています。

井上:加治さんに意見を聞きたいのですが、ゆるスポーツはうまく絡めると企業が入りやすくなりますよね。企業連合の中でお金と叡智を集めていって、スポーツ界でムーブメントを起こすことは考えられますか?

加治:シニアスポーツを広めていきましょうという話はしています。オリンピック・パラリンピックはIOCのブランドで使いづらいのですが、国内でシニアスポーツを積極的に振興させていきましょうという話は出ているので、ゆるスポーツも絡めてイベント化するのはできるかもしれない。便乗になりますが(笑)。ゆるスポーツやNIN-NINって社会課題に直接的にチャレンジするものなので、公益社会という観点で進めていくととても良いのではないでしょうか。もちろん、パラリンピック関係者と話してみるというのも良いと思います。

斎藤:スポーツのリブランディングということで話したいのですが。競技スポーツって入りにくいというか、気軽にできなくなっていますよね。それこそ、オリンピックは命をかけてやっている。でも、スポーツはもともとは遊びが原点だと思うんですよ。ゆるスポーツは、もう一度スポーツを遊びに戻すという意味で、すごく面白いと思います。

情緒を満たすものが結局は残っていく

澤田:日本は特許取得数や経済複雑性という指標では世界トップなのに、それがうまくマーケティングに寄与しきれていない気がします。一方で日本は、ポップカルチャーも独自の進化を遂げている。日本のトップクオリティの技術とポップカルチャーがまだまだ分断されている状態を解決するために、僕はトップの部分をもっとポップ化すれば良いと思っています。トップとポップの掛け算です。ゆるスポーツはトップテクノロジーを使いながら、アウトプットをポップにしていこうと考えています。ちょっと笑えるようなアウトプットで、ターゲットを広げていきたいです。

井上:最後に会場から、ユースケースでこういうものあると良いってアイディアはありますか?

オーディエンス②:NIN-NINを付けた状態でできるゲームがあると面白そうだと思いました。ゆるスポーツとNIN-NINを混ぜ合わせてアイディアを出していったらどうでしょうか。

オーディエンス③:感想になるのですが。私が良いなと思ったのは、個人的な家族の経験や思いから、情緒のあるアイディアが発生したというところです。最初のプレゼンを聞いたときは、たとえばアプリをダウンロードして音声案内をするほうがコストも手間もかからないのに、どうしてわざわざロボットを肩に乗せるのかと思ったんです。でも、澤田さんの話を聞いていくと、サービスを通じてコミュニケーション能力が上がるとか、孤独を解消していくとか、そういう情緒を中心に据えて、そこから発展しているところが面白かったです。

人間って、制度が整ったところで変われるものではないし、外側だけお膳立てされたところで本領発揮できるものでもないですよね。どんな行動でも仕事でも、情緒を満たすものが結局は残っていくと思うので。私は澤田さんのアイディアに感動しました。

澤田:ありがとうございます。おっしゃるとおり効率化を考えれば、もっといろんな手段があるんですが、わざわざ忍者型ロボットにしたのにはもう一つ理由があります。皆さん、障害者って街で会っても話しかけづらくないですか? それがNIN-NINを通すと、犬の散歩で犬を介して人間が繋がるように、障害者と健常者が繋がりやすくなると思うんです。NIN-NINを肩に乗せることで、障害者をポップにリデザインしたいと思っています。わざわざ余計なモノを肩に乗せるのは無駄かもしれないけれど、それを大切にしています。この無駄の部分を情緒と呼んでもらって嬉しかったし、これから情緒という言葉を全面的に使っていこうと思いました(笑)。

それから、プロフェッショナルの皆さんのアイディアが本当に参考になりました。ありがとうございました。

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