spacer

ARTICLES

Event report

【SOW! Vol.3】ものづくりの学校(産地の学校) 下山和希氏

Published on

「SOW!」は、これからの未来を切り開くための叡智や、失われそうな叡智を持って取り組む人・団体(プレゼンター)に対し、各分野の専門家、日本を牽引する起業家(プロフェッショナル)が、自身の叡智をアイディアとしてシェアするサロン的セッションです。
 3回目の開催となる今回は、5組のプレゼンターが5分間のプレゼン後、プロフェッショナルによるディスカッションタイムを開始し、各プレゼンターたちが今抱えている悩み・課題解決への糸口をその場で探っていきました。

<プレゼンター>
下山和希氏
※現在「ものづくりの学校」は「産地の学校」に名前を変更して活動されています

<プロフェッショナル>
伊藤洋志氏・小西利行氏・飛鷹全法氏

「ものづくりの学校」プレゼン動画

<ものづくりの学校の課題>

①生徒が地方で授業を受ける「産地研修」の交通費捻出
普段の講義で都内開催するが、定期的に産地へ研修に行きたいが交通費が負担になっている

②「ものづくりの学校」の周知、特に服飾以外の学生

③生徒を受け入れる産地数を増やしたい
現在の産地は、八王子(東京)浜松(静岡)、金沢(石川)、一宮(愛知)、倉敷(岡山)

小さな繊維工場が、バシバシ潰れている現状

小西:僕は糸ヘンのことについてそんなに詳しくないし、プロでもないので「プロフェッショナル」と呼ばれていることが若干恥ずかしいのですが。いくつか質問をするところから始めるか、「これだ!」という意見から始めるか、伊藤さんどうでしょうか?

伊藤:僕は大学院の頃、染色の勉強をしていて沖縄県の染織工房を回って、やっぱり同じような課題があって。元々は家の中で機織りをやっていたのですが、それがだんだん工房になったりしているが、あくまで小規模。そこに丸腰で「弟子にしてくれ」という若い人が来ても、いちいち初心者を育てていく余力がない、という状況があって。結局行政が動いて町立の研修所をつくったんです。
僕は常設の学校があったほうが必ずしもいいとは思わないんですけど、単発で集まる感じで普通に活動をやっていたら、何かいいことになりそうな感じがしました。あとは交通費ですよね。これは生徒が毎回出せるのか? という話になってしまうんですが…。

小西:世の中的には小さな繊維工場というものが山ほどあって、いまバシバシ潰れている現状がある。日本では、一つの巨大な会社があってそれ以外は苦しむ小さな工場、という構造になっていますが、そこの解消はいろんなアパレルメーカーが願っていることでもあるので、それが出口とどうつながっていくのか。
あと「ものづくりの学校」というネーミングですが、既にいろんな“ものづくり学校”が存在しているので、もうちょっと分かりやすく“繊維的なものづくり学校”というふうにしたほうがよいのではないかと、コピーライターとしては思います。
それ以上に個人的に思うのは、無くなっていく技術が世の中にたくさんある、ということをもっと周知したほうがいい気がします。日本中に大切な繊維関連の技術があるけど、どんどん死んでいってる。その事実をPRするところからやれば直接繊維業界とは関係ない人たちでも「それはダメだ!」という意識が強くなると思うんです。そうすれば一般の学生にも興味を持ってもらえるのではないかと思いました。

伊藤:レッドデータブックみたいな?

小西:そう、絶滅寸前みたいな。たとえば、そういう技術が海外の大きなブランドに使われて形になったりするといいなと思います。

繊維業界は、本当にタフな業界になってしまった

下山:そうですね。この学校に集まる人材には、実際に現場に入って職人の跡を継がせたいのですが、加えてライターも養成したいと思っていて。セコリ荘の活動として、取材したものを外部のメディアに寄稿して工場の存在をアピールするようなことをしてきたんですけど、そういったプレイヤーがどんどん増えていけばいいなと思っています。
またEVERY DENIMの山脇さんのように、工場と一緒にものづくりをして、どんどん市場に技術や素材を商品としてアウトプットしていけるような人たちを育てたいと思っています。

小西:思ったことをまずパッと言ってしまうと、売り場がね、欲しいですよね。誰か知ってる人いないですか??

楠本:あるアパレル会社のオーナーさんがいらっしゃってるので聞いてみたいのですが、いかがでしょうか?

オーディエンス①:初めまして、僕はレディースブランドを運営しています。いまお話を聞いていて思ったことは、繊維業界は本当にタフな業界になってしまっていて、つくりたいものをお願いするときに、やっぱり高齢化だったり、世代交替できなかった工場がたくさんあって、僕も現実に見てるんですね。レディースに限らずカットソーでもニットでも、いままで業界を担っていたような人たちが、担いたくても担えない状況になっています。
若い人たちに機会を与えたいというのはすごくいいことだと思うのですが、理念だけではなく現実を見て、売り先や出口も見つけて学校を運営していかないと弱いのかなと思いました。そして、そこに集まった生徒たちに何が残せるのか、学びにいく価値はなんなのか、そこも明確にしたほうがいい。
ライター養成についても、ライターは既に世の中にたくさんいるんですね。そこであらたにライターを育てるということも、現実と乖離している気がします。もう少しリアルに突き詰めていったほうがいいのかなと思いました。勝手なことをいいましたが、がんばってください。

下山:ありがとうございます。私は金沢にある服飾学校にも教員として携わっているんですが、学校が抱える課題として、就職の支援まで学校はできるのかというところで。なかなかそれが難しい課題ではあると思うのですが。やっぱり生産地に抱くイメージと、「こんなはずじゃなかった」というギャップだけは取り除きたいなと思っています。教室の中だけではなく産地の工場に入って、仕事をしている職人さんの姿を見てもらって、就職にもつなげていきたいなとは思っております。

市場原理に左右されずに技術が継承される仕組みがあれば

飛鷹:いま聞いたお話は、繊維だけではなく他の業界にとっても普遍的な課題だと思いました。具体的な例をご紹介させていただくと、高野山で先日「職人サミット」というものをやらせていただいたんです。「職人サミット」というのは、60代から70代くらいの職人さんたちの集まりで、職人の技を実際に見てもらい、その素晴らしさを知ってもらうことで、職人の技を次世代につなげることを意図したイベントです。この職人さんが亡くなったらこの技術は無くなってしまう、というほどの職人界のレジェンド達が集まるすごい会なのですが、正直なところイベントだけやっても状況はなかなか変わらないし、課題の直接的な解決にならないのですね。ですから、高野山で開催したいという依頼を受けてから、なにか職人さんたちが自身の腕を存分に振るえるような取り組みにつなげられないかと考えていました。

高野山は空海というお坊さんが開いた場所なんですが、いまでも空海さんは奥の院という一番の聖地で瞑想して高野山を守ってくださっているという信仰があるんですね。そのため「生身供(しょうじんく)」と呼ばれる食事を1日2回欠かさずお供えしているのですが、それを運ぶ唐櫃が、こう言っちゃ悪いですけど、あまり立派なものではない。空海さんにお食事をお運びするものなんだから、もっと質のいいものがふさわしいんのではないか、そうだ唐櫃をみんなで作ろうじゃないか、って話になりまして。そうすると職人が燃えるんですね。空海さんにお供えするものだから、最高のものを作ろう、どうせやるなら将来的に国宝になるようなものにしたい、とか職人魂に火が付くんです。マーケットの論理だけを考えていると、そもそもそんなオーダーは来ないわけですが、空海さんのお食事を運ぶ唐櫃を奉納するとなると、おそらくそれは今後100年という単位の時間軸で使われることになる。となると100年後の職人が見て恥ずかしいようなものを作れないって、職人たちは自分たちが持っている技を本気で注ぎ込もうとするんです。

職人にとって大事なことは、仕事があることだ、とある職人さんが言われたのが印象的でした。受け継いできた技術を最大限に認めてもらって発揮できる場があること、それが有り難いんだって言うんですね。

日本は歴史が長いので、いろんなコンテクストを活用する余地がたくさんあると思うのです。たとえば高野山は、1200年の歴史があって、いまだに空海という存在が信仰を集めていて、国内外から年間百数十万人の人々が訪れる場所なわけですね。だとしたら、そうした場所にふさわしいものって、通常のマーケットの論理を超えたものですよね。いわば、水平的なコミュニケーションが支配するマーケットに、垂直的に介入していくべきじゃないかって思うわけです。今回で言えば、それが国宝級の唐櫃になるわけですけど、じゃあマーケットの論理じゃない形で制作費を調達するにはどうしたらいいかってことで、クラウドファンディングを用いようってことになっています。

伊勢神宮の式年遷宮も似た役割を果たしていますよね。20年に一度神様の居場所が代わり、建物から何から全て新調するわけなんですが、その中には西陣織などの奉納物もあって、職人さんたちには何年も前から発注されるんだそうです。それによってマーケットの市場原理とは違うところで最高の技術が発揮され継承されるわけです。いかに歴史的文化的なコンテクストを読み込み、垂直的にマーケットに介入していくか、そこに私は可能性を感じています。

伊藤:いいですね。現状だと既存の工場に素直に入っていく人を求めて育てようという印象があるのですが、根本的にアパレル業界に問題が多いということはあって、そういうことを変えることができる人を育てる、というふうに設定し直したほうがいいのではないかと。例えば、小さい工場の新しい生き方というものをつくる必要が先にあって、それをつくっていくための学校、というふうに設定したほうが面白いのかなと思いました。

情報の垂直的な立ち上げを

オーディエンス①:まず質問したいのですが、生徒さんという方はどのくらいの年齢でどういった人を考えてらっしゃいますか?

下山:いまセコリ荘に携わりたいとご相談いただく方々は美大生の染織科やテキスタイル科の人たちが一番多いです。そういった方々をメインのターゲットに、先ほどうかがったように産地や業界の現状を変えていきたい、と思うような人に入っていただきたいです。

オーディエンス①:私が思うのは、学生に働きかけるのではなくて、就職して少なくとも3年から10年くらいの、実際の社会を理解した人に生徒になってもらったほうがいいかもしれない。そういう人がいないと変えられないと思いました。学生の頃は親の基準で就職先を選ぶんですよ。でも真面目に仕事をしていくと3年から10年くらいの間で必ずターニングポイントが来る。そのときに、こういう意義を感じる人にやってもらわない限りは続かないと思います。価値がどこにあるかを本当の意味で理解できる人に来てもらわない限り、学校は続かないと思います。

小西:僕からコミュニケーション側の話をちょっとすると、先ほど飛鷹さんもおっしゃっていましたが、何か垂直的に立ち上がっていないと世の中は反応できないなと思うんです。以前あるスーツメーカーから依頼が来たときに、お台場のガンダムにスーツを着せるといいですよ、という提案をしたことがあるんです。それを本気でやったら絶対に話題になるから。
情報の垂直的な立ち上げをしようとすると、例えば興味をもった企業が、面白そうだからお金を出してもいいですよ、ということが起こるかもしれない。だから産地の技術を使ってニュースバリューのあるものを考えて、そこに生徒として参加しませんか? という風にすれば生徒のモチベーションも変わるので、いけそうな感じがします。
そして、ターゲットを明確化してその人たちが動くためのモチベーションは何かということを徹底的に研究してやると、意外に産地研修の交通費のことを考えなくても、生徒が勝手に集まってくるという状況が生まれるかもしれません。

オーディエンス②:今の話をまとめると、入口と出口をどうつくっていくかという話です。入口というのはどういう人たちに参加してもらいたいか、そして出口はいろんなアイデアが出たので、それをマッチングするだけですごくよくなるのではないかと思います。
出口のアイデアをもう一つ言うと、僕も石川県の中能登町という繊維産業が盛んな自治体とマーケティングの仕事をやっていて、そこがまさにマイノリティマーケティングなんですが、障害を持っている人は服の悩みが多いんですよ。それを繊維の技術で解決するという分かりやすい出口をつくっています。
例えば車いすのタイヤって靴みたいなもので、それで家や旅館に上がろうとすると嫌がられるんです。だから家に上がるときはみんな玄関に車いすを置いて這って上がったりする。旅館だったら旅館が用意してくれた車いすに乗り換えないといけない。だからいま車いすのスリッパのようなものをつくっています。

自分たちはどこに力を集中させるか?

オーディエンス③:大変熱いプレゼンテーションありがとうございました。まず最初にやったほうがいいなと思ったことは、縦軸にカテゴリーを置いて、価格が安いか高いか、先ほどの高野山の件なんかは一番上ですよね。そして横軸にどういうプロセスを経て生態系が生成されているかを整理したほうがいい。
いま育てたい人材というのはモノをつくる人たちですから、一番上流工程にいる人たちですよね。そのあとに何があるかというと、工場があってさらに流通があってマーケティングがあって売り場があって、ということになります。そのマップの中で自分たちがどこまで仕事にしたいかをまず決めて、どこにどういうプレイヤーがいるかということをちゃんと見たほうがいい。
ちなみに小西さんの視点からいうと、「ものづくりの学校」ではなくて、例えば「デニムづくりの学校」みたいな一貫性があったほうがいいと思います。その上でデニムに集中するときに、既にマップの右側のほうに流通やマーケティングをやっているプレイヤーがいれば、自分たちはここにフォーカスするからそこから先はいっしょにやりませんか? というお話をされたほうがいいと思うんですね。小さい時は全てを自分たちでなかなか手がけられないから、自分たちがどこに力を集中するかということを決めたほうがいいと思います。

楠本:僕はアパレルの仕事もやっているので少しお話しすると、アメリカのユタ州にCOTOPAXI(コトパクシ)というアウトドアブランドがあるんです。アメリカにはパタゴニアだったりノースフェイスだったり大きなブランドがあるのですが、その一角を見事に崩してしまったというブランドなのですが、無店舗なんです。無店舗なのに若者なのに大人気で。
ポイントはどこかというと、出口の話で、彼らはQuestival(クエスティバル)という、アウトドア体験のためのフェスティバルをやろうと、コミュニティをつくってしまったんです。デニムづくりに話を置き換えると、デニムのファンの圧倒的な体験コミュニティをつくってしまったということです。いまアメリカの経済はミレニアル世代と呼ばれる若い人たちをいかに取り込めるかというところが鍵になっているのですが、既存のプレイヤーたちは彼らのマインドがまったく分からないんですね。

だからデニムに対しても、若い世代の思いはいろんなかたちであると思うし、ものづくりに携わりたいという欲求も強くなってきていると思います。だからそこに火を付けて欲しいと本当に思います。生産者と消費者ではなくて、使う人がデザイナーでなおかつ自分たちで発信する、若者のための若者によるファッションブランドみたいな。それがものづくりや地域に対する意識の高い若者たちとつながっていけば素敵だなと思います。

下山:みなさま本当にいろいろなご意見ありがとうございました。いままでたくさん職人さんを取材して回って、高齢の職人さんたちから「息子はもう違う仕事を始めたからもう畳もうと思ってるんだよ」という話を聴いて心が痛むことが多いのですが、うまく情報発信されていなかったり、需要と供給があるのにうまくつながっていないところをうまくマッチングさせていかなきゃなと思いました。そこが僕たちの活動でもありますので、今後ともよろしくお願いいたします。

MORE ARTICLES

NEWSLETTER