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【SOW! Vol.3】株式会社a.school 岩田拓真氏

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「SOW!」は、これからの未来を切り開くための叡智や、失われそうな叡智を持って取り組む人・団体(プレゼンター)に対し、各分野の専門家、日本を牽引する起業家(プロフェッショナル)が、自身の叡智をアイディアとしてシェアするサロン的セッションです。
 3回目の開催となる今回は、5組のプレゼンターが5分間のプレゼン後、プロフェッショナルによるディスカッションタイムを開始し、各プレゼンターたちが今抱えている悩み・課題解決への糸口をその場で探っていきました。

<プレゼンター>
岩田拓真氏

<プロフェッショナル>
伊藤洋志氏・加治慶光氏・小野裕之氏

「a.school」プレゼン動画

<a.schoolの課題>

探究型の学びを全国に、世界に広げていきたい。
現在の事業構造の2本柱は「探究型の学習塾の運営」「探究学習事業のプロデュース」だが、

①両事業とも、顧客の獲得に課題がある。どのようにマーケティングすべきか模索中

②サービスやリソース配分が分散しがち。どこに集中すべきか

の2点が課題。自分たちでスケールする絵を描いて行動しているのではなく、全国の学校や教育関係の事業主等から声がけがあって目の前の業務をこなしている状態。

塾だと行ける人が限られるのか?

加治:教育は非常に大きな問題なのと、アクティブラーニングは注目が大きいので、市場性はあると思います。同じようなことをやっているプレイヤーはいるのですか?

岩田:コンテンツを作り始めたのは7〜8年前で、3〜4年前から事業化してやっているのですが、同じ時期に立ち上げたのが数プレイヤーいます。最近は、少しずつ増えてきました。

加治:そういうところと連携していくことは考えていますか?

岩田:同じ時期に立ち上がってきた先頭を走っている何社かのプレイヤーで、探究型の学びをもっと打ち出していこうとシンポジウムの企画等を一緒にやっています。

伊藤:素直に思うのは、小学校でやってもらうのがありがたいなと。ある団体の働きかけによって、ヒップホップが体育に取り入れられたじゃないですか(笑)。そんな働きかけをして、公教育でやってもらえると楽しいなと思いました。塾だと、どうしても行ける人が限られますよね。

そのうち学校に行かなくても幸せだ、という人が出てくる

小野:僕は岩田さんに塾事業を勧めた張本人なのですが(笑)。4年前に岩田さんがGreenzのスクールに通っていて、その時に僕が、能力があるのにチャレンジしないのは悪だと言ったらしくて。

キャッシュポイントがつくりやすいので、学習塾という要素は、岩田さんの場合、ビジネスを回していくうえでは不可欠だと思います。加えて、教育成果のKPIのようなものを設定したほうがいいと思います。子どもに対する何かって、やったらやっただけいいよね、効果が出るのは数年後だよねという感じでザックリ語りがちだけれど、もう少し短期的に、数字的に語れないと、所得に少し余裕にある層のためのお遊びサービスになってしまうかもしれない。

もう一つは、公教育は政治的な話になり難しいので、今回の議論の場合除外する前提で話すと、たとえば、今のホームスクーリングは、日本だと学校にいけない人の代替手段みたいに見られがちですよね。学校に行くことが善で、行けないことが多少の悪であると。だから今は、ホームスクーリングマーケットは日本ではとても小さい。でも、学校に行かなくても幸せだという人が実際にはたくさんいて、箱としての学校はいるのか? というような議論がそのうちもっと語られるようになると思います。

岩田さんが最初にプレゼンテーションしたように、偏った子たちがいるのは悪いことで、マスのほうにフィットさせていくのが善だという語られ方が、暗にされてしまうのが常なので、a.schoolの次の展開は、たとえば、日本でまだほとんどないと思われるホームスクーリング事業にもう少し手をつけていくと良いのかなと思います。

今は教科書的でお利口さんなビジネスだけれど、もう少し破壊的な想像を持つべきかなと思います。公教育って別になくても良いじゃんということを本気で言えるまでを目指してみるとか。今は、それはエクスキューズとして語れれているけれど、本気で目指していくと良いかなと。そうすると、やっぱり成果のKPI化というのが重要になってくる。スタートしてからの4年間で、どんな生徒さんを送り出してきたのかというのを、情緒的な価値よりは数値的な価値として語れると良いなと思いました。情緒的な価値や親心だけで新しいマーケットをつくるのは難しいので。

資本調達してスケールさせることはあり得るか?

加治:社員数と売り上げ、資本構成はどうなっていますか?

岩田:社員数は4人、講師が5人、学生アルバイトが十数人、売り上げは2〜3000万円、資本構成はほぼ私が持っています。

加治:たとえば、資金調達してスケールさせるということは考えていますか?

岩田:成長の絵を描ければ、そのために資本を入れるのは考えられることです。今は、塾生がゆっくり増えていて、広がるスピードがゆっくりなので、まだそういうタイミングではないかなと。今後その絵をどう描いていこうかと悩んでいます。

加治:たとえば、ベネッセとか大企業に興味はないですか? コンテンツがしっかりしていると、意外と拡大する可能性はあります。たとえば、コンテンツが大学生のアルバイトでも教えられるまで確立しているなら、ある程度資金力のある企業だと一気にこのサービスを大きくできる可能性があると思う。

小野:コンテンツのしっかり感を数値で語る必要があるというのが、僕がさっきアドバイスした内容です。このサービスは遊びに見えなくもない。たとえば、近しい分野の取り組みつつ上場している会社として「LITALICO(リタリコ)」があって、それは発達障害という、ある意味社会的な課題に向き合う事業なので、今まで誰もちゃんとやっていないサービスとしてゼロから市場創造ということですよね。でもa.schoolは、この手のサービスはベネッセもやっているよねって言われると思う。そこを違うものとして語っていくのか、先ほど話したホームスクーリングで回していく企業だと語るのか? 前者なら、競合サービスとの差別化要因であるコンテンツ、カリキュラムの価値を、情緒的にも数値的にも語れなきゃいけないし、後者なら、ホームスクーリング市場がまだ無いので、資金調達してやる価値はありますと説得できる。逆に、そこには競合がほとんどいないので、コンテンツでの勝負は、相対的に見れば重要度は下がり、どれだけスケールできるのかを説明できることが重要なりますね。

そこで、岩田くんはどっちがやりたいのかな? と。そんなにスケールは必要なのか? スケールさせなくても、ある分野でのエリートの出身校になる道だって全然アリな訳ですよね。

岩田:そこは明確に、自分の中ではスケールさせたくて、本当は公教育もやりたいけれど、今は違うかなと思っています。どっちがやりたいかというと絶対にスケールさせたいという思いが強いです。

加治:それは、自分のような経験を持っている人たちの大きなポテンシャルを、できるだけたくさん大きく羽ばたかせてあげたいっていう、基本的な欲望や情熱ということですよね。それは、アントレプレナーにとっては一番大切なものだと思います。であれば、なりふり構わず拡大生産する方法を考えれば良いですね。このサービスはきちんとストラクチャされているので、後は、どこに行きたいかを見極めるのが大切なのかなと思います。

教育評価はどうするのか?

伊藤:コンテンツを作るのがお好きなようなので、そっちをやってしまうのではないかと思うのですが。

岩田:それはもう、そうですね(笑)。特性としてあります。

伊藤:だったら、拡大させるパートナーを探してやっていく方法もありますよね。

小野:外部の社長を雇う勇気はありますか? コンテンツメーカーってことは、たとえば、49%までなら外部資本を入れてもいいんじゃないかっていう話にもなる。ただ、それを意思決定する自信って相当なコンテンツ力がないと言えないけれど。そこまでですか?(笑)

岩田:正直、けっこう自信はあるんですけれど。その外部の資本を入れることに、すぐにイエスと言えるかというと、迷いますね。

伊藤:実際にKPIはどこに置いているんですか?

岩田:教育評価には、定性評価・定量評価があると思っていて、思考力や表現力がどう上がったかを定量評価にするのは難しいので、まずは、定性評価を丁寧にやっていこうとしています。項目を定めて5段階の基準をつくって、一人一人がどういう成長や学びをして変わったのか、学びの様子と課題をモニタリングすることで保護者の方に変化を可視化して伝えていて、塾生からは評価されています。数字で表現するのはまだ難しいですね。

オーディエンス①:KPIとか難しくてわからないんですが。プレゼン動画で出た、尖った子どもたちと公教育をイコールで語るのは違和感があります。私は、子どもTEDのようなものはどうかなと思いました。TEDって才能の変態のような人たちが登壇するものじゃないですか。子どもの頃って文化的なものの評価をされる機会が少ないんです。スポーツが得意なら甲子園に出るとか大会で優勝するとか、わかりやすく評価される場があるのですが、本当の好奇心に対する評価が少ないんです。良い意味で、はみ出した子どもたちが、才能を発表してぶつけて大人も子どもも圧倒する場を、私はすごく見てみたいし、そういうものがあったら良いかなと思いました。

加治:会場の皆さん、「私は自分がしたい勉強をずっと出来てきて、今この場にいる」という人は? 挙手をしてください。(会場数人挙手)

岩田さんは、いま手を挙げた人たちの共通のものを吸い取るのが大切だと思います。

では、a.schoolは尖ったままほうが良いか、たくさんの人たちに知ってもらったほうが良いのかを聞かせてください。まずは、一人でも多くの人に向けて広くやるべきだと思う方挙手を。(会場数人挙手)

そうではない、今のユニークさを大切にしたほうが良いという人は?(会場多数挙手)後者のほうが多いですね。

オーディエンス①:尖ったほうが大きくなれる!

小野:尖らせ方の議論として、すごい人を数名だけを育てる超オーダーメイドモデルは、既に違うプレイヤーがやっていますよね。岩田くんは、大量生産・大量消費モデルと超オーダーメイドモデルの中間をやりたいのかな? 中量生産中量消費くらいをやりたいのではと思いました。要は、その中間領域を作るのが一番尖ってるんじゃないかということです。

加治:全然違う視点ですが、テクノロジーはここには付与されないんですか? わかりやすいものだとレゴとかiPadとか。昨日たまたま会った京都大学の人で、子どもに4歳からiPadを与えて教育しているという話を聞いたばかりです。

岩田:ワークショップのなかでテクノロジーは使っています。ただ、遠くの自分たちが行けないところに届けるためのテクノロジーの使い方はあると思っているのですが、そういう使い方はしていません。今はリアルの場があるからこそ、その子の特性を観察したり、その場でフィードバックできたりと、場としてその子たちを育てていくことに力を入れています。それを、テクノロジーで遠くに届けようとすると、そぎ落とされていくものが多いのではないかと思っているので、そういう使い方がうまくデザインできていないんです。リアルな場で情報収集をしたりするテクノロジーの使い方はしています。

小野さんの質問に対する回答ですが、僕は真ん中を狙いたいというのがあります。1%の子どもたちのための教育を作りたいわけではなくて、ワクワクしながら自分の好きな事を探究して学べる探究型塾が、塾業界全体の20〜30%あっても良いという思いがあります。全部を公教育で変えたいとは思っていなくて、尖った子どもたちが超マイノリティーじゃなくて、20〜30%くらいいる程度までやっていきたいんです。

教育の評価基準が、一番の価値

加治:年間、何名くらいの生徒さんが在籍するのですか?

岩田:いまは百くらいで、これからはもっと、万単位でやっていきたいと思っています。

小野:岩田くんが保護者にフィードバックしているのも、可能な範囲で見せて欲しいです。a.schoolが出しているKPIにこそ価値があるのでは? と思います。一人の人を面白いということは簡単、みんなができることをつまらないと言うのも簡単ですが、その間のことを共有して理解するのは難しいんですよ。説明ができないし、俺にはわかんないけど…となる。そうすると、ある種あいまいな教育的価値というものを短期的にどう評価したら良いのかというKPIづくりがこの塾の一番の価値なのだろうなと。そしてその、いわばa.school流の教育的価値の評価基準自体を普及していくために塾事業をやるんだと、発想を変えた方が、たぶん良いのだろうなと。コンテンツよりも、保護者にフィードバックしている内容のほうが、僕たちにとっては学びになるのではないかと思いました。

伊藤:岩田さん自身の「教育は今度どうあるべきか」という思いを重視していくことが大切なのではないでしょうか。今までの教育の評価基準ではないけれど、岩田さんが重要だと思うことです。a.schoolではこんなことが学べるという、その設定が興味深いし、重要だと思います。

オーディエンス②: 僕が思ったのは、教育ってリスクを負いたくないところだと思うんです。教育にはいろんな解釈があるけれど、僕の解釈でいうと、生存確立を上げるためのものです。自分が長く安全に暮らしていくための基礎を作るというか。逆に尖った教育をすることがリスクを減らすことに繋がるのではないでしょうか。今の時代の流れはどうなっているのか? 10・20・30年後の世界がどうなっていくのか? 就労環境はどうなっていくのか? などを含めて、大きな文脈で語っていくと良いのかなと思いました。

公教育は必要だけれど、逆にパラレルな教育も必要ではないでしょうか。大人が一つの会社に勤めていると視野が狭くなって生存確率が下がるって言われるように、子どもも公教育だけ受けるのではなくて、もう一つの選択肢を持って生きて行くほうが生存確立が上がりますと伝えると、魅力的なストーリーになるかなと思います。そのサービスの結果、魅力的な人物が出てくれば、その人がロールモデルになりますよね。あとは、自分の力だけで生存確率を上げてきた人の話を聞くべきだと思います。そうすると、説得力が上がるじゃないですか。親は安心するし、子どものリスクを減らせる、安心できるという観点で語るとスケールするのかなと思いました。

伊藤:生存確率が上がる塾って言われると(笑)、何かいきなり、死ぬか生きるかってなりましたね(笑)。教育にはそれぞれテーマがあるので、岩田さんのような意気込みでやる塾もあって、他にサービスもある…そういう教育がたくさんあったほうが良いと思いました。

加治:ちなみに、アクティブラーニングと言う言葉は文部科学省のなかで使われ始めているので、岩田さんの発想が普及され始めたということだと思いますよ。

岩田:今回、自分が何を目指してやっていきたいのかが再認識できました。改めて思ったのは、なんで塾でやっているのかというと、学校じゃない第3の学び場をつくりたいと思っているからだと。子どもは、学校と家のコミュニティー以外の場を持つことが大切だと思っています。昔は地域が3つ目のコミュニティーだったのですが、今は、塾として、そういう場を作っていきたいと思いました。3つ目のコミュニティーだからこそ、自分の個性を出せる場になるのかなと思います。ありがとうございました。

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