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クリエイティブ発想と言葉のデザイン (1/3)
「伝える」から「伝わる」へ

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未来社会をより良いものにするための叡智。今までにない新しい価値を生み出すクリエイティブな発想はどのようにして生まれるのか? 人々の思いや考えを伝えるための最も基本的なツールである「言葉」を駆使して、良いアイデアをより多くの人々と共有するためにはどうすればよいか? コピーライターとして活躍し、「伝わる言葉」について書かれた本『伝わっているか?』の著者である小西利行さんに話を聞きました。

ゲスト:小西 利行氏

1968年生まれ。1993年大阪大学経済学部卒業 同年、株式会社博報堂入社。2006年同社退社後、株式会社POOL設立。TVCM、グラフィック、商品開発などのクリエイティブ・ディレクション、コピーライティングを中心に、マーケティング、WEB開発、施設開発なども行う。主な仕事に、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」/ハウスメイト「春部屋、はじめました」/日産セレナ「モノより思い出」/SONY「make.believe」/PlayStation導入キャンペーンなどがある。また、国内最大のショッピングセンター「イオンレイクタウン」の総合ディレクションをはじめ、施設開発も多数。受賞歴は、ニューヨークADC、クリオ、TCC、読売広告賞など多数。

「伝える」から「伝わる」へ

「ネクストウィズダム」って何だろうって考えたんです。「ウィズダム」は叡智とか分別と翻訳されると思うんですが、そこに「ネクスト」がついて、「ネクストウィズダム」になるとどういう意味になるだろう、と。いろいろ考えたんですが、「感動を作ることが叡智」っていうシンプルな答えに行っちゃったんですね。

日本語はすごくよくできていて、漢字を見ると意味が分かるんです。「感動」は「感じて動くこと」。じゃあ、「感じて動く」ってどういうことなのか。スポーツとか映画を見て「感動した!」って言う、あれは感動のうちのほんの一部でしかないと思うんです。感じることと動くことが一緒だったら、それは全部、感動なんですね。実際、世の中動かないと僕の専門である広告もコミュニケーションも成り立たないわけです。

でも、感じて動くためには、びっくりマーク「!」がいると思ってます。新しい発見とか新鮮な喜びが無いと、感じて動けない。では、どうするかというと、シンプルに人に言いたくなるようなアイディアを生んで、それが誰かに伝わって行ったら、「感じて動くこと」になるんじゃないかな、と思いました。

まず、僕の主題というか心のテーマである「伝えるから伝わるへ」という話をしたいと思います。「伝える」は自分のエゴで、「伝わる」は共感だと思うんです。例えば、僕が誰かを大好きだとして、一生懸命「大好きです」と言って花束を出したりしたら、「邪魔くさい」「やめてくれ」ってことになってしまう。「好きです」って言葉を伝えるんじゃなく、「好きです」っていう気持ちが伝わって初めてコミュニケーションが成立する。

「伝わるためのアイディア」がみんなから共感されて広がる時代です。フェイスブックでもツイッターでも何でもそうですけど、やっぱり、新しいアイディアとか初めて聞く話、見たことのない映像、そういったものがどんどん拡散していく。なぜ拡散するかというと、アイディアがあるからなんです。

面白い文章でもどこかに新しいアイディアが無いと共感されて広がらない時代。逆に言うとアイディアがあれば広がる。つまり、「伝わる」っていうことには全て新しいアイディアが必要なんだと思ってます。大切なのは、伝わるアイディアを発見する姿勢です。みんな伝えられるつもりで失敗してる。「一生懸命伝えた」「本気で伝えました」と言って失敗する。この一生懸命伝える感じが失敗になるんですね。

そもそも、「何か思いついた!」ってことじゃないと伝わらないと思った方がいいです。アイディアが無いと伝わらないからです。だから、僕は常に「伝える」を「伝わる」に変換することをテーマにやっています。そのとき、人の中にある喜怒哀楽とか恐怖とか興味を全部使っていくことになります。

この話をマジメにずっと喋るのも大変なので、世の中に落ちてる「伝わるもの」の例を見ていきたいと思います。

例えば、放置自転車をどうしたら無くせるか。「ここに自転車を置くな」という看板を置いても無くなりません。これは「伝える」であって「伝わる」ではないからです。「伝わること」を知っている人は、こういう看板を置くんですね。

*Pouch『この発想はなかった!! 駐輪禁止区域に自転車を置く気を一瞬でなくさせる方法を示した張り紙画像がTwitterで大反響!』より転載

これがあると、ここに自転車を置けない。「持っていかれるかも」っていう恐怖感が止めてるんですけど、これは分かりやすい転換です。「伝える」ではうまくいかない。では、どうやったら「伝わる」のか、本当にその人がとどまるのか、考えた結果だと思います。

Hey!Say!JUMPというジャニーズのアイドルグループがありまして。横浜アリーナでライブをやるときに、駅とアリーナの間をシャトルバスが運行するんですけど、そのシャトルバスの運営会社のおじさんがちょっとしたサービス心で書いたのが、これなんです。

*withnews『ライブ客を興奮させる市営バス 長渕剛や松田聖子、ジャニーズまで』より転載

これは、天才じゃないですか。「YOU、このバス、アリーナ行くよ!」ってジャニーさんなわけですけど(笑)。これはネットで爆発的に拡散したんです。このおじさんがちょっとアイディアを足しただけで、メディアとしては無料なんですね。お金は全くかかってない。でも、最初、上司に怒られたらしいんです。だけど、あまりにもたくさん好意的な反響が届くので、「もっとやりなさい」ってことになった。新しいのを考えるの大変で、おじさん困ってるらしいですけど、「ちょっとでも乗る人に楽しんでほしい」という気持ちが世の中の多くの人から賞賛される結果になった例です。

「恋愛をする」ってことを「フォーリンラブ(恋に落ちる)」って言うんですけど、なんで「フォール」なんだろう?と考えたんです。たぶん、誰かが名付けたんだと思うんですよ。ずっと昔、また言葉が成立していない頃、「この感じ、たぶん、フォールなんじゃないですか」って誰かが言い出して、それにみんなが賛同して、「フォーリンラブ」に決まった。それが今まで受け継がれているんじゃないかと。

実は漢字も同じで、最初に「感動」って書いた人がいるんですよね。それにみんなが賛同して、受け継がれてきている。今、世の中に残ってるものは、どれも昔、誰かが作ったアイディアなんです。

堅い仕事にこそクリエイティブ

ある銀行で僕がこういう講演をしたときに、銀行員の人が感想で、「クリエイティブが大切なことはよく分かったんですけど、僕の部署は堅いのであまり関係無いです。」と言うんです。クリエイティブって言葉はとても便利でみんな使うんですけど、ほとんどの人が自分には関係無いと思ってる。しかし、実際にはあらゆる人に関係あるものなんです。

どんな仕事でも必ず滞りが出てきます。そこでは何か問題が起こっていて、ブレークスルーが必要になる。ブレークスルーというのは既存のことではないので、新しいアイディアが必要になる。つまり、全ての仕事には、今までとは違うアイディアを発想する力が必要になる。だから、あらゆる人にとってクリエイティブがすごく重要になるんです。

もっと簡単に言えば、あなたの仕事を滞りなく進めていくためには、仕事を改善するアイディアが必要になってきますよね。そのアイディアを考えてください。それが、クリエイティブということです。

「堅い仕事にこそクリエイティブを」というのは、どんな仕事にもアイディアで改善していくことは同じようにあるんですけど、堅い仕事ほどそういう部分に手をつけられていないからなんです。

あるホテルに呼ばれて、「子どもとか家族のための施策がやりたい」ということだったんですけど、「子どもを会議に呼んだりしないんですか?」「子どもの目線で歩いたことはありますか?」と聞くと、そういうことはやっていない、と。それで、たまたま、車椅子があったので乗ってもらって、10分くらいホテルの中を回ってもらったんです。大人が車椅子に乗ると、ちょうど子どもの目線の高さになるんですね。そうしたら、カウンターが高すぎて、その上の表示板が見えないことが分かったんです。

だから、考え方そのものがクリエイティブ発想の方がいいんじゃないか、と思っています。資料作りよりアイディア作りに時間を使った方がいいし、会議より会話、上司より社会に受けた方がいい。

「成功しよう」って言葉は一見、クリエイティブ的なんですけど、僕は逆だと思っていて、「成功しよう」の中には、「失敗してはいけない」があるので、今まで成功してきた既存のやり方を踏襲しようってことになる。一方、「失敗しよう」は、「チャレンジしよう」を含んでいるので、どちらかというとこっちの方がクリエイティブ発想。何でも失敗していいわけじゃないけど、「失敗しよう」って言われたときのチャレンジの発想と、チャレンジしたことで残るもの、それらを自分たちの中に取り込んだ方がいいだろうな、と思いました。

センスが悪いのは怠慢だと思ってます

「センスがいい」というのは、能力じゃなくて努力だとはっきり思ってます。自分の周りにいるセンスのいい人たちの考え方を見ていて気づいたんです。例えば、これとこれ、どっちがセンスがいいか。答えは無いんです。なぜなら、状況とか条件、環境などによって答えが変わるからです。だから、絶対的な答えは無くて、センスというのは状況によって変わる答えを選び取る力なんです。

選び取る力があるなら、選び取らない力があってもいい。100のうちから5、6個選び取るのをセンスがいい、と言うなら、90個選び取らないのも残りの10個を選び取ったのと同じことになるので、やはりセンスがいい。

何年も同じ仕事をしていると、正解よりも不正解をたくさん積み重ねていくわけです。そうすると、不正解を選ばなくなるからセンスがいい人に勝手になっていく。意識してそれを積み重ねたか、っていうことが大事なんですけど、失敗し続ける人の方が後々伸びていけるんですね。

センスがいい人になろうと思ったら正解に合わせるじゃないですか。合わせる人は失敗しないので、自分の中ではなんとなくいい感じに思えているんですけど、結局、蓄積されていないんです。

自分の感覚の世界の中で正解とのギャップを知ることがすごく重要で、「こっちが正解」というのを全部押しのけていったら、勝手に自分らしい答えに導かれるはずで、それが自分らしいセンスを生むっていうことだと思ってます。

別に天才になれ、と言ってるわけではなくて、「がんばろう」みたいなことですから、それをやらないなら怠慢じゃないですか。

たまに偉い人のサクセスストーリーを聞くんですけど、僕はそれを「成功の残骸」って呼んでいて、それは目指してもいいけど、真似をしたらダメなんです。真似をしてもずっとフォロワーだから。その人とは別のアイディアの出し方が必ず別にあるはずなので、その方法論を一生懸命考えた方がいいです。それが自分の成功プロセスになる。

僕はセンスが無くて、頭が固いんです。だから、すぐ正解の方に行っちゃうんです。正解というのは、今まで通りということです。だから、失敗を恐れず一生懸命が考えていくのと、「それじゃない答え」を作ってみよう、というのを常に心がけています。例えば、プレゼンの3日前に企画ができあがると、「じゃあ、明日までにそれじゃない答えを作ってみよう」って絶対言うようにしています。

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