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Next Wisdom Meeting #1 “古今東西から紐解く叡智” 熊平美香氏:「限界のない学びこそが叡智を生む」

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11/19に開催された「Next Wisdom Meeting #1」のレポートをお送りします。人を変革し創造的にするのは制度でもなく資本でもなく、教育なのではないか? 一方的な押しつけの教育ではなく、自分で考え決断する自発的な学習と、そのサイクルを可能にする教育システムについて、また、私たちを創造的な学習と自己変革へとモチベートしてくれる叡智を持った人々の言葉をお二人のゲストからお聴きしました。その場の熱気をみなさんと少しでも共有するために、彼女たちのメッセージの一部をご紹介しながら、当日の様子を振り返ってみます。

開会のご挨拶 当財団代表理事 井上高志(株式会社ネクスト 代表取締役社長)

カンファレンスのキーワードは「ウィズダム」「クリエイティビティ」「イノベーション」。会場に集まった約100名の参加者が、熱心にゲストのスピーチに耳を傾けていました。。

FIRST SPEACH:「限界のない学びこそが叡智を生む」

ゲスト:熊平美香氏(一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 代表理事/日本教育大学院大学 客員教授)

プロフィール:ハーバード大学大学院(MBA)修了。教育問題の解決に貢献するという新たなミッションを掲げ、「学習 × チーム × リーダーシップ」という3つの力を強化し、教員養成を行う日本教育大学院大学客員教授、ティーチフォー ジャパン理事、オランダのシチズンシップ教育ピースフルスクールプログラムを展開など幅広い活動を行う。著書に『チーム・ダーウィン「学習する組織」だけが生き残る』(英治出版)。

未来教育会議

私はいま「教育」「企業」「若者」「女性」の4つのチェンジに関わっています。教育は社会を変える力を持っています。未来の社会をつくるのは若者であり、女性の活躍によって社会を変えることができます。それらを実現するために未来教育会議(リンク http://miraikk.jp)という組織をつくり、企業のみなさんと共に取り組んでいます。私たちのミッションは三つの視点、私たちはどのような社会をつくりたいのか、その社会の実現のためにはどのような人材が必要なのか、そしてそのために必要なのはどのような教育なのか。私たちはこれら三つのミッションに基づいて活動をしています。

私はもともと、家業である自分の会社を変えるということが最初の仕事でした。そして他の企業の変革をお手伝いするようになりましたが、様々な企業と関わる中で「これは変だ」と思うようになったのです。私自身アメリカの大学院で学び、海外の人たちとの交流も多いのですが、日本人ほど勉強をし、優秀で幅広い知識を持っている国民はいません。しかし、問題を解決することができない。これが私にとって非常に大きな疑問でした。人は解決できない問題にぶつかると、壊れたテープレコーダーのようになります。問題に直面しても「問題だ、問題だ」と同じ言葉を繰り返すだけで、何も解決できない。これまでの20年間、日本はこのように問題を山積みにしてきたのではないでしょうか。この状況を変えるには大人になってからでは遅すぎると感じ、教育の世界に入りました。

人間の学習には限界がない

1972年に発表された人類の危機に対するローマクラブのレポート『成長の限界』はみなさんご存知だと思います。その後1979年に同様に発表された『限界なき学習』では、「自然資本には限界はあるが、人間の学習する能力には限界はない。人間の学習こそが私たちを救ってくれるのではないか」ということが書かれています。2020年には人口が90億人を超え、中国やインドが20世紀の先進国と同じように成長を続けるには地球3個分の資源が必要だと言われています。また、いま世界を見ても8億人が飢餓に苦しみ、10億人以上が貧困にあえいでいます。この状況を学習で変えられるのではないかと考えています。

知能は一つではない「マルティプル・インテリジェンス」

教育について深く学ぶにあたって、まずハーバード教育大学院に行き、フューチャー・オブ・ラーニング研究会で「マルティプル・インテリジェンス」という新しい人間の知能に関する概念をつくったハワード・ガードナー先生に師事しました。彼は人間の知能や可能性は一つの指標で測れるものではなく、8つのインテリジェンスの組合せと度合いが一人の人間の個性であると定義しました。

1)言語的知能:文字や言葉を効果的に使いこなしたり、情報を記憶する知能

2)論理・数学的知能:論理的なパターンや相互関係、抽象的な概念に対応できる知能

3)空間的・視覚的知能:空間や視覚情報を的確に認識し、自由に転換できる知能

4)身体・運動的知能:考えや気持ちを身体を使って表現する知能

5)リズム・音楽的知能:音質やメロディーやリズムを認識しつくり出す知能

6)対人関係の知能:他人の気持ちや感情、モチベーションなどを見分ける知能

7)内観の知能:自分自身を把握し、その上で行動を起こすための知能

8)自然・環境の知能:自然の事象を認識し、共通点や違いを認識する知能

教育をシステムで考える

私が未来教育会議をつくった背景には日本の教育のシステム不全があります。現場の先生たちや学校の一つひとつ、教育委員会も含めて、全ての教育に携わる人々が日本の教育のために一生懸命目の前の仕事に取り組んでいらっしゃいますが、結果がなかなか伴わない。このような状況は個別の問題ではなくシステム全体に問題があると考えられます。それぞれの立場の人々が目指す社会のイメージがバラバラで、課題に対しても対症療法的で、その結果として現場の負担が増えて、教育システムも複雑になり、子供たちに負荷がかかっています。何よりも子供たちが一番身に付けなくてはならない主体性が奪われているという現実は非常に残念なことです。この状況を変えるためのフレームワークづくりを、いま未来教育会議で進めています。

ユニリーバ社の「サステイナブル・ティー」

学習するのは子供や若者だけではありません。大人や企業も学び続けることで無限に成長することができ、それが社会の変革につながります。ハーバードビジネススクールには世界中の課題が集まり、その課題に対する最新のケーススタディーが行われています。先日ハーバードビジネススクールで開催された、インターナショナル・リサーチ・シンポジウム&グローバル・アドバイザー会に参加した際に議論されていたケースは、ユニリーバ社の新たな取組みでした。ユニリーバ社のCEOであるポール・ポルマン氏は「長期的に存続し発展するためには、社会と環境に合わせて我々のビジネスモデルを変える必要がある。決してその逆であってはならない。」と表明しています。その彼の言葉を体現するかのようなプロジェクトが「サステイナブル・ティー」です。

その内容は、ユニリーバの紅茶事業の100%の原料をレインフォレスト・アライアンスで調達することを2020年までに目指すというものです。レインフォレスト・アライアンスとは長期的な視野に立ち、バリューチェーンの末端にある農家が持続可能な発展を遂げるために必要な生活向上と、環境や生態系保護に対する影響を含めた認証制度で、企業が採用するには短期的に見てコストがかかります。このケースに対して様々な反対意見がなされましたが、元ユニリーバの社外役員のフランス人が放った、場の空気を変える一言が非常に印象的でした。「大切なことは、CEO自信がこのことを本当に信じるかどうかだ。そして何が正しいかということ。正しい事は続くが、正しくない事は続かない。正しい事だと考えてそれを信じるなら、あとはやるだけだ」と。

叡智とは何か?

「叡智とは何か?」この深い問いに対して、息子と一緒に考えたことをみなさまにお伝えして、私の発表を終わらせていただきます。

・叡智は悩んだプロセスの集積でしかない、解決策自体、アウトプットだけを外の人が見ても、それはただの情報でしかない。

・イノベーターは、困難に向き合うプロセスを通して、問題に向き合っていくのであって、単発の発想だけではソリューションを手に入れることはできない。

・プロセスにはベクトルがあり、情報にはベクトルがない。叡智はつくるもの、貢献するものである。

・人は悩む限りにおいて限界なく学習し続けるが、悩むことをやめた瞬間に、情報の消費者になってしまう。

動画フルバージョン 熊平美香氏:「限界のない学びこそが叡智を生む」

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