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Next Wisdom Gathering 004 “これからのエネルギーと文明の発展” ハワイ、エネルギー政策の先端を走る 三好琢氏

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ゲスト:三好琢氏(株式会社トライミライ 取締役)
参議院議員・前田武志氏の秘書を務める。主に政策に関する調査・調整の役割を担当し、議員の国土交通大臣就任にともない大臣秘書官を務める。離職後は行政・政治に関するコンサル業を行い、県会議員、企業・団体等の支援を行う。今夏(株)トライミライを起業。自ら奈良県議選に立候補するなど選挙経験多数。航空自衛隊、広告業等にも従事。

燃料費が高い、ハワイ

エネルギー問題を解決する先進的な事例としてハワイを取り上げたいと思います。ハワイは島国ですので燃料代がとても高い。普通の家庭で1ヶ月あたりの電気代が、僕のヒアリングしている限り300ドルから350ドル。1ドル100円で計算して、2〜3万円くらい使っています。2008年にはハワイ全体の燃料費が年間で60億ドルでした。この60億ドルというのを人口140万人、仮に1人当たりで割ると約40万円、4人家族ですと160万円位を使っています。ちなみに日本で同じように計算しますと約88万円、1人当たり約20万円になります。

ハワイを走る、電気自動車

ハワイでは燃料コストが2005年から2008年にかけて1.5倍にもなり、このままでは破産してしまうという問題意識を持ちました。そこで、取り組んだ対策の1つが電気自動車でした。なぜ電気自動車なのか? 燃料代が、ガソリン比べて10分の1になります。また、ガソリンはエンジンで爆発して力を作りますが、残りのパワーは音になったり熱になって消えてしまいます。その点で非常にエネルギー効率が悪い。比べて電気自動車は10倍位の効率の良さがあると言われています。

さらに電気はご存知の通り太陽光や風力など、様々なところから調達できます。これはハワイという環境にとても合っていました。そのような理由で電気自動車がどんどん普及しています。電気自動車を普及させるためには充電スタンドも必要です。そこでなんとハワイでは充電スタンドの設置を義務化する法律を作りました。その内容は、駐車場100台分につき1カ所スタンドを設置しなくてはいけないという義務です。さらに、充電スタンドの検索をしてくれるアプリケーションも作ってしまいました。しかも、これらをつくったのは民間ではなく行政なのです。

再生可能エネルギーのポテンシャルが高い、ハワイ

さらにハワイの行政は再生可能エネルギーに関しても調査をしています。上の図は電力需要と再生可能エネルギーの島毎のポテンシャルを示しています。上から二つ目のオアフ島ではポテンシャルに対して需要が2倍以上あります。逆に一番下のハワイ島では再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い。再生可能エネルギーの発電源はバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱、海洋などです。ハワイ島では電気を全て地熱発電でまかなう事が可能で、さらに今後、島毎に異なる電力需要と供給のバランスをとるために、島と島の間を海底ケーブルでつなぐ計画をしているそうです。

石油会社が、自然エネルギー教育を

学校ではエネルギー教育が行われています。ある学校では、屋根に500kwh分の太陽光発電パネルが付いていて、暑い昼間の時間帯に太陽光発電を行うことで、クーラーの需要が1番大きいピークタイムに合わせて発電をしています。ある高校ではガソリン自動車を改造して電気自動車をつくることもやっています。また、Chevronというオイルメジャーはエネルギー教育のプログラムを入札で競り落として、計12年間の義務教育期間における教育を請け負っています。彼らは石油でビジネスをする一方で、石油がなくなった未来を見据えて事業展開を行っていますし、ハワイでは州を挙げて子供たちに新しいエネルギーの教育をしているのです。

石油利用を1/3にしよう

ハワイのエネルギーに関する取組で私が「叡智」と呼ぶのは「Hawaii Clean Energy Initiative(ハワイクリーンエネルギーイニシアティブ)という法律です。ハワイは全米で1番化石燃料に頼っています。そして経済は観光業と軍事基地に50パーセント以上依存しています。そのような状況ですので、ハワイはエネルギーというものを経済の中心に据えて、より自律性の高い経済体制、エネルギーの安全保障体制をしっかりと作っていきたいと考え、それを法律にしています。

具体的にいうならば、2030年時点の原油支出を、2008年と同じ60億ドルに留めるということです。上の図の点線はハワイ州が2030年に至った時に必要とするエネルギー量、しかし化石燃料を外から買ってくるのは水色の部分だけにする。逆に省エネでグリーンの部分の30%。そして水色の40%の部分をエネルギーの代替でまかなう。原油価格は上がっていくという前提ですから、今と同じだけの原油の量を買ってしまうと経済は破綻してしまいます。

そして僕が一番感動したのが5番目の「クリーンエネルギーの分野で世界のリーダーとなる」という一文です。またこれらの目標を達成していくためには州全体の協力が必要であり、他人任せの縦割り行政ではダメだということも書かれてあります。

みんなが目指す世界観を実現するための、行政

ハワイが州全体で進めているこの取組みを日本の行政機関に置き換えて説明してみます。エネルギーの安定供給と経済振興の部分では経済産業省の管轄になります。エネルギー自体を管轄にしている資源エネルギー省も入ってくる。エネルギー教育では文部科学省が、国土交通省も当然関わってきますし、税の優遇や補助金などを行うには財務省が、バイオエネルギーには農林水産省、次の社会における新しい職業訓練のあり方をつくるために厚生労働省も参加します。ハワイではこのクリーンエネルギーイニシアティブがあるおかげで、それぞれの省庁がそれぞれの分野で最大限の努力をしているわけです。

僕は政治の世界に関わってきたので、このハワイの取組みに対して非常に感動しました。まさに、議会が目的を定め、その定められた目的に対して政府が一丸となって実行すること、これこそがあるべき民主主義だと思っています。何のために議会があるのか?日本では議会と政府(行政)の役割がひっくり返っているのではないでしょうか。政府がやりたいことに対して、国会の方がついていく。でも本来は国民の代表である議員が「こんな世界観を目指そう」と決めたことに対して、行政がそれぞれの分野で何ができるのかを考え実行していく、というのが本当の民主主義の姿なのです。

合意形成の叡智:法律と自由と、わたしたち

さて、法律を作るという事は、自由を制限することです。例えば、通行人が1人もいない、他の車の影も形もない一本道で車を走らせるときを想像してみます。何km/hで走ってもいいじゃないかというのは普通の感覚です。しかし、自分たちが好きなスピードで走れる自由を、敢えて制限速度という法律をつくって国に委ねることによって、歩行者としては安心して通行できる。

また、いかに電気自動車が好きだからといっても、明日からはガソリン自動車を使ってはいけませんという法律ができると、電気自動車でしか走れなくなってしまう。法律を作ることは自由を制限することであるという認識が非常に重要です。

例えば、日本ではセグウェイという新しい乗り物は公道を走れません。道路交通法上走れないことになっています。しかし、高齢者が乗っている電気車いすは走れる。結局セグウェイがマーケットを広げることができなかったのは法律によるところが大きい。逆に、世界で最初の自動車「T型フォード」ができた時代を考えてみると、もし自動車は私道でしか走れない法律ができていたら、いまのような車の時代はこなかったでしょう。

新しい社会をつくるには、ます個人の叡智が生み出した自動車のような新しい製品やサービスだけではなく、それを実際に社会に組み込むための合意形成という叡智も必要なのです。法律をつくって個人の自由を制限してでも、社会全体として新しい未来を目指すための合意をするということ。そしてハワイは、そういう新しい世界を目指すために、社会がさまざまな負担を個人に強いながらも、合意形成を実際に行い、法律を作り、未来に向かって一歩一歩努力をしているということです。

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