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SOW!〜SHARE OUR WISDOM〜開催レポートPart4 暗黒銀河を観ることができると、生命の源がわかる! 銀河誕生の謎に迫る

EVENT

Vol.4「SOW!」Search Out Wisdom

SOW! はこれからの未来を切り開くための叡智や、失われそうな叡智を持って取り組む人・団体(プレゼンター)に対し、各分野の専門家や参加者のみなさんとブラッシュアップをしながら、クラウドファンディングをその場で行うイベントです。

会場で応援したいプロジェクトの立案者から直に話を聞いて、心打たれて賛同したくなった企画に、その場でファンディング参加ができる形式です。みなさんのイベント参加費3,000円のうち1,000円を支援金として、ゲストにお渡しします。

開催5回目を迎える今年のテーマは、『アップデイト』。2019年の財団の大テーマ『人間にしかできないこと』をもとに、これまでの伝統や技術、活動をこれから100年先を見据えながらアップデイトしようとしている人やチームをプレゼンターにお呼びしました。

 

プレゼンター
天文学者・筑波大学 宇宙観測グループ 中井直正さん

ゲスト(プロジェクト応援)
・楽天株式会社 常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター 北川 拓也さん
・スーパーイノベーター ヤフー株式会社 SR推進統括本部 沼田尚志さん
・ファッションジャーナリスト、一般社団法人フュートゥラディションワオ代表理事/NWF評議員 生駒芳子さん
・カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長、当財団代表理事 楠本修二郎
・株式会社LIFULL 代表取締役社長、当財団代表理事 井上高志

【プレゼンターNO.4】暗黒銀河を観ることができると、生命の源がわかる! 銀河誕生の謎に迫る

・天文学者・筑波大学 宇宙観測グループ 中井直正さん

1954年生まれ。関西学院大学卒業、名古屋大学・東京大学の大学院修了。国立天文台野辺山宇宙電波観測所に長く務めたのち、2004年から筑波大学勤務。2018年から関西学院大学勤務。銀河や巨大ブラックホールの観測的研究に従事。行方不明の星たちを探して銀河誕生の謎に迫る。南極望遠鏡の実現に悪戦苦闘している。日本学士院賞、仁科記念賞等を受賞。

▶▶︎プロジェクト概要

https://readyfor.jp/projects/antarctic-telescope

ディスカッション

会場1:東工大で天文学の研究をしている者です。二点ほど質問があります。一点目は望遠鏡なんですけども、すばる望遠鏡アルマ望遠鏡は、国際協力で多数の国が協力して一個の望遠鏡を作ると思うんですね。南極の場合は特に、どこの国の領土かっていうのがない大陸なので、そういう場合に望遠鏡を建設するにあたって、国際協力をとる必要があるのかないのか?

中井:いま企画している電波望遠鏡の総工費は26億円ですが、これでも中型の望遠鏡になります。日本の望遠鏡として作りたいと思っていますが、設置候補地として南極の「ドームC」というフランスとイタリアの基地があります。そこに作るときはフランスとイタリアの協力が必要で、既に話はしています。この次のステップとして、もう一桁感度の高い、直径30メートル、1,000トンくらいの望遠鏡も考えていますが、これは350億円くらい、日本単体ではできません。アジアを中心とした国際協力で進めようと、いま話を始めています。

北川:ありがとうございました。宇宙の起源を理解するというのは夢のある話だなと思ってすごく興奮しました。一つ大気圏が邪魔な時にやることは、衛星を飛ばすこと。僕はしばらくハーバードにいたのですが、MITとハーバードの協力で確か宇宙に飛ばして望遠鏡を作るって話があったと思うんですが、そのアプローチはどうですか?

中井:おっしゃる通りです。大気圏外に出れば大気が無いですから、邪魔物は無いので一番いいです。ただ、直径10メートルで100トンのものを、いまの技術で打ち上げることができません。しかし、部品レベルで打ち上げて上空で組み立てることは技術的には可能です。ただし、衛星でやるとコストがだいたい100倍くらいかかります。ですから、コストが、数千億円〜1兆円ぐらいになるかなと。

北川:そうですよね。でも、そういう意味ではスペースエックス等々の競争があるのでかなり衛星自体の値段が10年20年で下がってくるということ、先ほどのORIGAMIの技術があれば打ち上げることはできる気がするので、もしかしたらそういう絵を描いて、この新しい電波望遠鏡を使えば、今までの望遠鏡の100倍わかりますみたいなプレゼンを政府にした方が、もしかしたら通るかもしれません。

中井:なるほど。将来的にはかなり期待しているんですけどね。プレゼンの仕方を考えてみます。

会場2:お話ありがとうございました。とても面白かったです。南極は水蒸気が少なくて電波を観測しやすいということですが、他の場所と比べてどのくらい効率が良くなるのでしょうか?

中井:例えばいまハワイのマウナケア山の頂上にある15メートルくらいの望遠鏡があります。その望遠鏡で観測すると100年かかるようなものも、この電波望遠鏡を使うと1年間でできるようになります。

井上:ありがとうございます。今日は2つの宇宙の話が出てきてロマンがあって素敵だなと思いました。さっきの北川さんの話を聞いて、その通りだなと思ったんですが、目的が何で手段が何か。目的というのは、暗黒銀河を見ることで何が分かるのか、宇宙の誕生から進化、生物の誕生、それから人類の誕生、そして、未来にとって人類や色々な星、生物のためにどういう知見が得られるのかというその目的を探るためだ、と仮にテーマ設定をするとすれば、人類が協力してやるべきことで非常に大義名分になってくると思います。

次に地上からこの望遠鏡でこの遠い宇宙を調べることが重要なのか、それとも素粒子物理学からのアプローチで17種類の素粒子が見つかって、そこから宇宙の誕生からここまでの進化を解き明かそうとしているチャレンジもあります。目的が何で、そこに対して地上で望遠鏡を作ることなのか、北川さんが言ったように宇宙に望遠鏡を作ることなのか、それとも素粒子を解析していくことなのか。手段というのは、目的に合わせてそれぞれ最適なものが変わってくるんじゃないかと。ということで、電波望遠鏡に具体的な実用性が無いと言ってしまうと多分補助金も引っ張り出せないので、ある意味ロマンがあるようなテーマ設定にすると、それは国として、人類として、世界としてやらなきゃいけないですね、という動きに繋がるんじゃないかなと思った次第です。

中井:おっしゃる通りです。まさにそうです。あくまで、電波望遠鏡は手段であってですね、その目的は生物が生まれるための根源的な原材料が、いつどうやってできたか、そういうところを解明したいということです。素粒子はその前の段階で、宇宙がなぜ大爆発したのか、素粒子出ないとわからない。そのもう少し後のところの生命を作っているのは炭素とか酸素ですね。その起源はどこに始まったのか、そこを知りたいですね。

司会:中井先生、最後に一言いただけますでしょうか。

中井:宇宙天文学と南極というのは一般の人には非常に興味を持っていただけるんですが、ただそれだけでは実現が難しいですね。私もそんなに先がないんですけれども、生きている間にぜひこれを実現したいと思っています。

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