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そもそも、お金ってなんだ?
お金はどこから来て、どこへ行くのか?
お金がまわらなければ、経済はまわらない。
いま、お金はITと融合し現金レス社会が到来しています。
さらに既存の金融機関を不要にするブロックチェーン技術により、仮想通貨というアナーキーなマネーも登場。
今後お金はどのように変わっていくのか? それでも変わらないお金の本質とは何なのか? お金の未来は、私たちの未来はどうなるのか??
今回のケイザイ祭では、あらためてお金の存在価値とお金とともに存在する社会の未来像について考えました。
【お金の歴史】そもそもお金とは何か? お金の成り立ちと、その思想的背景について考えましょう
1)なぜ人類は「お金」という概念を生み出したのか? 私たちの生活を支える、貨幣経済が誕生した理由 →https://logmi.jp/business/articles/257780
2)トップ100人とボトム40億人の資産価値は等しい––通貨の成り立ちから、お金が抱える構造的問題を考える → https://logmi.jp/business/articles/257999
3)物々交換から貨幣経済へ お金の歴史から学ぶ、資本主義の誕生とともに私たちが失ったもの → https://logmi.jp/business/articles/258071
<第1部ゲスト>
東京大学東洋文化研究所教授
黒田明伸氏
中国経済史を出発点にアジア・アフリカの事例をとりこんだ貨幣の世界史の再構成を試ている。相互に代替性のないさまざまな形の貨幣が各地域に併存していた状況から貨幣間の補完性という論点を提示し、米国科学アカデミー紀要などに紹介されている。著書に『中華帝国の構造と世界経済』名古屋大学出版会(1994年)、『貨幣システムの世界史-「非対称性」をよむ』増補新版、岩波書店(2014年)。主たる論文に‘What is the Complementarity among Monies? An Introductory Note’, Financial History Review 15-1, 2008; ‘Anonymous Currencies or Named Debts?: Comparison of Currencies, Local Credits and Units of Account between China, Japan and England in the Pre-industrial Era’, Socio Economic Review 11-1, 2013. 現在東京大学東洋文化研究所教授。
<第1部モデレーター>
京都造形芸術大学教授・触れる地球ミュージアム主宰・当財団評議員
竹村真一
地球時代の新たな「人間学」を提起しつつ、ITを駆使した地球環境問題への独自な取組みを進める。「触れる地球」(2005年グッドデザイン賞・金賞、2013年キッズデザイン賞 最優秀賞・内閣総理大臣賞、2008年G8北海道洞爺湖サミットや2016年G7伊勢志摩サミットで展示)や「100万人のキャンドルナイト」、「Water展」「コメ展」(21_21 DESIGN SIGHT)などを企画・制作。東日本大震災後、政府の「復興構想会議」専門委員に就任。また国連UNISDR(国連国際防災戦略事務局)からの委嘱で、2012年以降「国連防災白書」のコンセプトデザインを担当。「食の万博」ミラノ万博では日本館の展示を企画・監修。J-WAVEナビゲーターも務め、2015年10月から「アーストーク」をホスト。著書に「地球の目線」(PHP新書)、「宇宙樹」「22世紀のグランドデザイン」(慶応大学出版会)、「地球を聴く」(坂本龍一氏との対談;日経新聞社刊)、「新炭素革命」(PHP)など。
【お金の現在】 私たちにとってお金とは? 現在のお金の価値を再考しましょう
1)“ありがとう”が見えるお金 東京・国分寺だけで使える地域通貨「ぶんじ」はなにが新しいのか? → https://logmi.jp/business/articles/258352
2)地域通貨はなぜ定着しなかったのか? 国分寺の「ぶんじ」の仕掛け人が語る、ブームが終わった2つの要因 → https://logmi.jp/business/articles/258604
3)行き過ぎた投機性は人を狂わせる––ビットコインなど、仮想通貨の負の側面を説く → https://logmi.jp/business/articles/258813
4)搾取しようと思うと価値が減る? 「無料のビールおいしくない問題」に学ぶ“幸せな交換”の条件 → https://logmi.jp/business/articles/259053
<第2部ゲスト>
クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店店主
影山知明氏
1973年東京都国分寺市生まれ、愛知県岡崎市育ち。大学卒業後、経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、 独立系ベンチャーキャピタルを共同創業。 総額30億円のファンドを立ち上げ、投資先とリスク/リターンを共有した事業開発に従事。 2008年、空き家となった生家を建て替え、多世代型シェアハウス『マージュ西国分寺』をオープン。 1階には、こどもたちのためのカフェ『クルミドコーヒー』を開業。 2017年にはとなり駅の国分寺に、2店舗目となる『胡桃堂喫茶店』をオープンさせた。 NHKテレビ NEWS WEB の第4期ネットナビゲーター(2015-16年、火曜日担当)。 著書に、『ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~』(大和書房、2015)。
<第2部モデレーター>
当財団代表理事、株式会社LIFULL代表取締役社長
井上高志
株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務時代に「不動産業界の仕組みを変えたい」との強い想いを抱き、97年株式会社ネクストを設立。不動産・住宅情報サイト『HOME’S(ホームズ)』(現『LIFULL HOME’S』)を立ち上げ、掲載物件数No.1(※)のサイトに育て上げる。現在は、国内・海外併せて14社の子会社を展開、世界57ヶ国にサービス展開している(2017年6月時点)。会社設立20周年となる2017年4月に社名を「株式会社LIFULL(ライフル)」に変更。個人の活動として、ベナン共和国の産業支援プロジェクトを展開するほか、一般社団法人21世紀学び研究所 理事等を務める。 ※産経メディックス調査(2017.1.27)
【スペシャルトーク】いまさら聞けない「仮想通貨」とは? あらためて確認しましょう
ICOで資金調達すると売上にカウントされるかも? bitFlyer加納社長が語る、仮想通貨の現状と課題 → https://logmi.jp/business/articles/260345
<スペシャルトークゲスト>
株式会社bitFlyer 代表取締役
加納裕三氏
1976 年生まれ。2001 年に東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発、トレーダーとしてデリバティブ・転換社債トレーディングに従事。2014 年 株式会社 bitFlyer を共同設立。日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事として 2016 年の「仮想通貨法」の成立に尽力。オリジナルブロックチェーン「miyabi」を共同開発(関連技術の特許は一部取得済み、一部申請中)。2016 年国際会議サイボスにおいて金融サービス分野の形成に貢献した金融イノベーターの 1 人に選出。過去世界49カ国を旅し、エベレストのベースキャンプまで登山。
【お金の未来】新しいお金のかたちを考えます。 新しいお金で未来はどう変わるのか? それとも変わらないのか?
1)そもそも「お金の価値」とは何か? 仮想通貨時代に考える、これからの経済の形 → https://logmi.jp/business/articles/259249
2)ブロックチェーンは絶対に安全とは言えない––仮想通貨が根づくために必要な3つのイノベーション → https://logmi.jp/business/articles/259528
3)「お金は多いほうがいい」という価値観は崩壊する メタップス佐藤氏が語る、ベーシックインカム後の世界 → https://logmi.jp/business/articles/259758
<第3部ゲスト>
評論家・翻訳家
山形浩生氏
1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。途上国援助業務のかたわら、広範な分野での翻訳および雑文書きに手を染める。著書に『たかがバロウズ本』(大村書店)、『新教養主義宣言』(河出文庫)など。主な訳書にクルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(ちくま学芸文庫)、バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』(みすず書房)、ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)、ジェイコブズ『アメリカ大都市の死と生』ほか多数。
株式会社メタップス代表取締役
佐藤航陽氏
1986年生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し、代表取締役に就任。2011年にアプリ収益化事業、2013年に決済事業を立ち上げ、2015年に東証マザーズに上場。現在は、お金の流れを予測する人工知能の研究開発プロジェクトに従事し、時間市場の創出を目的に「タイムバンク」を初秋にリリース。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「Under 30 Asia」などに選出。
<第3部モデレーター>
DEFTA PARTNERSグループ会長、内閣府参与 未来投資会議(構造改革徹底推進会合 企業関連制度改革・産業構造改革)、アライアンス・フォーラム財団代表理事、当財団評議員
原丈人
27歳まで中央アメリカ考古学研究に従事。渡米し29歳で光ファイバー事業をシリコンバレーで起業。85年にベンチャーキャピタルを立ち上げ90年代には全米第2位となる。米欧イスラエルで情報通信とバイオベンチャーを立ち上げいくつもの世界的企業を育てた。その後、国連政府間機関特命全権大使、大統領顧問など欧米アフリカの公職を歴任し、アフリカの金融制度改革、栄養不良改善事業、公益資本主義を広める活動をアライアンス・フォーラム財団を率いて行う。現在は内閣府参与として健康医療国家インフラづくりを目指す。
Next Wisdom Foundation研究員による考察
ゲスト達のお話を聞いていると、あらためて、お金というのは何かと何かを交換するために発生したもので、お金そのものに大きな価値はない、ということが分かる。お金をお金で持ち続けている限り、お金は宙づり状態のままで、現実社会に具体的な価値を生むことはない。
お金を使って、より大きなお金を生もうとするのが投機という行為だが、お金が投機に向かう理由は、多くの人がお金を使って「交換したい」と思うものがどんどん世の中からなくなっていることの裏返しなのではないか。もしくは、交換したいものを見つける能力、創り出す能力が衰えていると言えるのかもしれない。「お金」そのものが目的化してしまい、お金の先にあるものへの想像力が失われているのかもしれない。自分の人生や社会全体にとって本当に必要なものは何なのか? その実現のためにお金は必ずしも必要ないかもしれない。
また、お金はコミュニケーションツールでもある。よく考えてみると、小さな取引から大きな取引まで、知らない人との取引から友人知人との取引まで、あらゆる取引をわざわざ日銀券を使ってやる必要もないんだと気付かされる。地域通貨を使うことによって、それまで域外に流出していたお金をコミュニティ内に留めておくことができるし、逆に地域通貨(日銀券も大きな意味では地域通貨)によって妨げられていたコミュニケーションもある。コストゼロであらゆる場所で決済できる、地域に縛られない仮想通貨は究極のコミュニケーションツールと言えるかもしれない。
そして、お金は権力を一カ所に集めて人民を管理するためのツールでもあった。お金を一つにすることによって、税金も取りやすいし、人をコントロールしやすくなる。お金という価値軸がいくつもあることは、権力者にとっては都合の悪いことなのかもしれない。地域通貨や仮想通貨など、人々が使うお金を自分で選べるようになること。多様なお金は民主化のためのツールでもある。
このようなことを考えると、ますますお金が物理的に紙の上に定着しているのは大した意味がないことが分かる。歴史的にみると、お金の本質は、貝や米や金や銀や印刷物と憑依する対象を変えてきたが、お金の本質は物質ではない。つまりお金の電子化や情報化というテクノロジーによって、やっとお金が本来あるべき姿に近づいていると言えるのかもしれない。