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エネルギーを通して考える 未来に残すべき地域と日本の姿

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【満員御礼】「オフグリッドの世界と、その可能性」〜エネルギー編vol.2〜

かまぼこで有名な小田原の老舗企業「鈴廣」。その老舗企業が本業のかまぼこだけではなく、いま新たな取り組みで全国的に注目されています。

鈴廣本社の建物を100%再生可能エネルギーで動かし、地域の企業と共にエネルギーの地産地消で地域活性化を実現し、なかなか進まない国の再生可能エネルギーへの転換に対して他の地域と連帯しながら改革の声を上げています。その新しい動きを牽引している副社長の鈴木悌介さんに、鈴廣の再生可能エネルギーへの取り組みと、日本のエネルギー政策の課題についてお話を聞きしました。

<プロフィール>
鈴木悌介(すずき ていすけ)  鈴廣かまぼこグループ 代表取締役副社長

1955年(昭和30年)、神奈川県小田原市にてかまぼこ屋の次男として生まれる。神奈川県立湘南高校、上智大学経済学部卒。1981年から1991年まで、米国ロスアンジェルスにて、スリミ、かまぼこの普及のため、現地法人の立ち上げと経営にあたる。帰国後は家業である鈴廣の経営に参画。 慶応元年(1865年)創業の歴史を尊重しつつ、変化し続ける日本人の食生活の中で、かまぼこの存在価値を高めるべく挑戦の日々を送る。「食べもののいのちを大切に」をモットーとする。

商工会議所活動にも関わり『日本の元気は地域から』と、地元のみならず、全国のネットワークを活かし、 地域の資産を活かした地域の活性化と自立を目指し奮闘中。2000年・2001年度 小田原箱根商工会議所青年部 会長、2001年度神奈川県商工会議所青年部連合会、2003年度 日本商工会議所青年部 会長、2009年第3回ローカルサミット実行委員長などを歴任。現在、アジア商工会議所連合会 若手経営者委員会副委員長、小田原箱根商工会議所会頭、合同会社「まち元気 小田原」 経営諮問委員、小田原北ロータリークラブ会員、場所文化フォーラム会員など。

電気料金の一部を、地域に還元する

今2冊目の本を書いているところです。2012年に1冊目『エネルギーから経済を考える』を書いてから4年以上が経ちました。久しぶりに読み返してみると、手前味噌のようですが、いまだにまったく古さを感じないんですね。しかし、それは3.11以降6年半経っても、世の中の基本的なところが変わってないということ。ただ、変わってきたところもたくさんあるので、それには希望を持っていきたいと思います。

2012年12月に小田原の民間38社の出資で、ほうとくエネルギーという会社ができました。。この会社はメガソーラーの発電を中心にやっています。次に、地域で電力を売買する湘南電力という会社ができました。ほうとくエネルギーが作ったエネルギーは、当初FIT(固定価格買取制度)で東京電力に買ってもらっていたのですが、今は全て湘南電力に売っています。
湘南電力は、電気を集めて売るという仕事をする会社です。はじめは、サッカーチームの湘南ベルマーレエナリスという東京の新電力の会社の合弁会社としてスタートしましたが、今年の5月にエナリスが持っていた株をほとんど私ども地元の会社が引き受けたので、今では90%以上地元の資本の会社です。

湘南電力はもともとは大口の契約が中心で、私ども鈴廣の電気も3年ほど全て湘南電力でまかなっているので、東京電力と契約が無いんです。電気料金も少し下がりました。

2016年の4月から電力の小売りが自由化になったわけですが、湘南電力にはそんなに社員がいませんので、一般家庭にセールスに行ったりメンテナンスに行ったりできないんですね。そこで、地元に小田原ガスという都市ガスの会社とフルカワというプロパンガス会社があるのですが、彼らに湘南電力の代理店として電気の小売りをする仕事を引き受けていただきました。
両社とも小田原の百年企業ですが、上手い具合に両社とも代替わりして40代の社長さんになったところでした。都市ガスとプロパンガスというのは、地域の中では競争相手で仲が悪いんですが、そんなところでいがみ合っている場合じゃない。

ガスはいち早く自由化されるでしょうから、外から黒船がドカンと来たときに太刀打ちができないわけです。彼らが偉かったのは、「これからはガス屋でございますという時代ではない。トータルでエネルギーのことが分からないとダメなんだ。そうでないと100年続いた会社を次の100年に残していけない」、そう言って引き受けてくれたわけです。

彼らは何千軒というお客さんを持っています。セールスマンもメンテナンスをする人もいる。プロパンも都市ガスも電気もワンストップで提案できて、何かあったらすぐ飛んできてくれる。なおかつ、湘南電力は原発の電気は使わないと言っていますし、払った電気料金の一部を地域に還元します。最近、「湘南のでんき」という地域還元のプランをつくって、湘南ベルマーレの支援や環境問題に生かせる商品も売り始めました。

合理的な電力供給のカギは『蓄電池』

昔の電気というのは高いところから低いところへしか流れない。だから大きな発電所を作ってそこからダムのように流すしかないと思われていたわけです。ところが今は、テクノロジーが発達したので、電気も融通がきくんです。

従来は電力を供給する側が全部コントロールしなきゃいけなかった。だからバックアップ電源として大型の火力発電所が必要だったわけです。今は稼働していますが、原発が稼働していた頃はほとんど動いていなかったので、無駄な設備を持っていたわけです。

ところが、今は需要側で融通できるようになってきました。そのひとつのカギは蓄電池です。バッテリーをたくさん需要側に置いて電気を貯めておくことによって、需給調整しやすくなる。いわばダムや、ため池のようなもので、池が大きければ大きいほど調整がやりやすくなりますね。

何がいいかと言うと、ピークカットができるんですよ。需要側からすると契約電力が下がるので電気料金下がる。供給側は一年のうちのごくわずかなピーク時間のために、追加の電源投資をしなくて済む。

鈴廣の敷地にも湘南電力が所有しているバッテリーが置いてあって、平素は彼らがウェブでモニターしながらバッテリーをコントロールしています。万が一のときには、非常用電源として使えるので、防災の観点でもいい。単に電力をこっちから切替えてくださいというのではなくて、付帯的なサービスが出てきているんです。

私たちは『小田原・箱根のエネルギーコンソーシアム』と呼んでいるのですが、ほうとくエネルギーも湘南電力も、ガス会社さんが入った動きも含めて、地域でお金を回していきたい。地域の経済循環を活発にしていきたい、ということです。これが今考えているひとつ目のことです。

地方創生の切り札は、エネルギーの地産地消

今、この国は人口が減っていく中で、単純な規模の拡大という意味の経済成長はなかなか難しくなっています。店舗の数を増やせば売上げが伸びるという時代ではない。

地域の経済という立場から言えば、地域で回るお金をどうやって増やして、回るスピードを上げるかということが重要になってくると思うんですね。

そのためには、エネルギーはすごくいい題材だと思っています。多くの方たちが、原発をやめたら日本経済がダメになると言うが、私はまったく反対の見方をしていて、むしろ、そんなものに頼っているからダメ。そこから外れるという決心をしたら、日本の経済は回ると思っているんです。

小田原市の環境局にデータを出してもらって、地域外からどれだけエネルギーを買っているか調べたんですが、人口20万人の小田原で毎年300億円ほどになるんです。東京の板橋区で同じような取組みをしている仲間に聞いたところ、板橋区は55万人で570億円だというんですよ。それだけのお金が地域外に流出しているんですね。

先日、北海道の下川町というところに視察旅行で行きました。旭川からさらに車で2時間くらい山に入っていったところにあります。東京23区くらいの広さがあって、約90%が森です。もともと林業と鉱業の町で、昭和30年代には1万5千人くらいが住んでいたんですが、今は3400人しかいない。絶滅危惧都市みたいなところなのですが、全国から視察がひっきりなしなんですよ。

下川町は、ちょうど10年くらい前に彼らは腹をくくったと言うんです。自分たちに残されたものは森しかない。だから、森を徹底的に生かした、森とともに生きるライフスタイルに変えていこう、と。

森の木はトドマツとかカラマツで、本州では人気のない建材なのですが、道内では結構使えます。あとは、その木を使って集成材を作ったり、炭を焼いたり、住宅を建てるときに床下に入れる炭などの商品を開発しています。あとは、炭を作るときの燻煙と木酢液を利用して防腐加工のガーデニング用の枕木を作ったり、葉を集めてアロマオイルを作ったりしています

一番の肝は木質チップです。バイオマスですが、発電はしていません。町に11か所くらいボイラーがあって、そこで24時間チップを燃やしてお湯を作っているんです。道路の下にお湯管が走っていて、そのお湯が地域をぐるぐる回っているんですね。

そのエリアにある住宅や公共施設では、お湯管から熱をもらって暖房にするわけです。冬はマイナス35度になるところですが、それがあるために非常に快適な住環境ができる。町役場の人の話では、以前は毎年13億円、外からエネルギーを買っていたそうですが、地域の森を徹底的に使うことによってかなり減ってきているそうです。

それまで減り続けていた町の人口が、今は3400人で止まっているそうです。高齢化率の高い町なので、自然減するわけですよ。しかし、それを補えるくらいに社会増が増えてきている。私を案内してくれた役場の人も埼玉県からのIターンだそうです。そういう若い人が増えている。

考えてみれば、下川町は日本の中で特殊な場所ではありません。もともと明治くらいまでは、どの地域も薪と炭という形で森からエネルギーをとっていたわけです。それが、石炭、石油、それらから作る電気という時代になって、外から買うものになった。そうすると、お金がどんどん外に出て行くわけです。だから、現金収入が無い地域は貧しくなるわけです。そうすると若い人が出て行って過疎化する。

日本中に下川町と同じような状況の地域がたくさんあると思います。なので、エネルギーで日本中の地域が復活するということはあり得ると思っています。それは昔に戻れという話では無くて、今のテクノロジーを使って、地域の中に眠っているエネルギーを生かすということなんです。

『地域間競争』のない地方創生を

地域の資源を生かすテクノロジーはたくさん開発されています。それを上手に使うことで、その地域は豊かな町に変わっていく可能性があると思います。そういう事例が増えていくと、過度な東京集中も緩和されて地方の人口も増えるでしょうから、人口政策的にもいいと思うんです。

小田原で300億、板橋区で570億、下川町で13億。日本の市町村を足していくと、28兆円になるはずです。なぜかと言うと、日本が海外から買っている化石燃料の代金が28兆円だから。そのうちの1割でも2割でもこの国の中で賄うことができたら膨大な金が日本の国内に還流します。いますぐに化石燃料に取って代わるというのは難しいので、全部は無理ですが。

でも、たとえば小田原で300億のうち30億だったら可能性があると話をしています。この30億を地域に還流することができたら、小田原でいろんな課題解決に使える。雇用を増やすとか介護とか医療とか教育とか。日本中で28兆円の1割なら3兆円、2割で6兆円です。私は日本の経済の活性化、地方創生を、自然エネルギーの地産地消をやっていくというのが、一番効果がある経済政策だと思うんです。

今、地方創生と言っても、日本中ほとんどの市町村が観光振興です。小田原・箱根もまさに観光地ですから、必死になってやっています。観光業に従事する人を2400万人から4000万人に増やしましょうという目標はいいと思うのですが、最終的には地域間競争になるんですね。

ましてや、もうひとつの大きな施策である定住人口の増加。これはまさに地域間競争そのものです。そもそも日本全体で人口が減っているわけだから、自分のところで増やそうと思ったら、どこかから奪ってくるしかない。そうすると、必ず負けるところが出てくる。

ところがエネルギーは地域の中でできる話です。小田原なら300億のうちの30億を自分のところで賄いましょうという努力をすればいいわけで、他の地域との喧嘩になりません。地域間競争にならないwin-winの関係になる経済政策として、地産地消の再生可能エネルギーの地産地消をやる。

商売で一番大変なことは、需要を作り出すことです。でも、エネルギーに関しては、需要は既にあるんですよ。すでに300億使っているわけだから。そのうち1割を自分のところで賄いましょうという話です。そのことによって、毎年30億のお金を外に漏らさずに地域で回すことができたら、地域の課題を解決するとても大きな原資になるんです。

エネルギー=電気ではない

今お伝えをしたいの二つ目は、エネルギー=電気ではない、ということです。

私は神奈川県のエネルギー政策を作る委員を4年間やっていますが、神奈川県全体の最終エネルギーで、電気として使っているのは30%しかない。小田原でも40%余。それ以外みんな熱なんです。そこに観点をあてないと、エネルギー全体の姿は見えないんです。

国のエネルギー計画は、エネルギー計画と言いながら、電源構成の話しかしていない。それは間違いだと思います。「電気は3割が原発だ。それが止まったらどうするか? 化石燃料は無くなる。再生可能エネルギーは高い。やっぱり原発しか無い」そういう話に持っていこうと、電気の話ばかりしているとしか思えない。

でも、熱という観点で見ていくと、この国には使っていないエネルギーがたくさんあると気がつくんです。会社でやってみていくつか分かったことは、ここは井戸水が豊かなところなのですが、この井戸水もエネルギーなんです。

ここにあるレストランは井戸水で空調を回しています。どういうことかというと、外から取り入れた空気を、まず井戸水の中に通すんですよ。井戸水は一年中温度が変わらないので、夏は冷たくて冬は暖かい。ここだと15~16度くらいです。その中に夏の35度の空気を通してあげると、熱交換して10度くらい温度が下がって、25度になる。あとは2、3度調整してあげればいい。

冬は逆のことをします。たとえば0度の空気を井戸水に通すと、3~4度くらい温度が上がります。それだけでもエアコンの負荷がガクンと下がるから、電気が節約できるんです。だいたい3割くらい電気を使わずに済んでいます。この水を使って150年間かまぼこを作ってきましたが、井戸水がエネルギーになるということにやっと気づきました。

電気だけでなく、熱も含めた視点から見えてくることがたくさんあります。たとえば、ドライブインの2階に私たちの団体の食堂があって、そこの屋根の上に太陽光の温水器を入れました。発電しないで太陽熱で温めるんです。太陽光パネルに見えますが、その中に不凍液という特殊な液が循環している。太陽光で温めた不凍液をパイプで水の中に通すと、熱交換してお湯が作れるんです。それを使って食洗機のお湯を賄っています。

屋根の半分に太陽光発電のパネル、もう半分に太陽光の温水器を乗せて比較してみたんですが、そうすると単位面積あたりで温水器の方が3.5倍くらい熱効率がいいんです。つまり、太陽光発電の電気でお湯を沸かすより、太陽熱で直接お湯を作った方が圧倒的に効率的なんです。
太陽光は発電もできますが、膨大な熱を持っています。それをどう使うか考えたら、まだまだやれることはあります。今までやってきたことをまとめてこのビルを作りました。実際に見た方が、私が話すより伝わりますから。

原発をやめれば、日本の経済は動く

ドイツと日本の環境省の方が東京でやったシンポジウムに、パネリストで呼ばれて話をしたことがあります。そのとき、ドイツの方から「鈴木さんの取組みは素晴らしいと思うが、進めて行く上で何が一番ボトルネックですか?」という質問を受けたんです。私は敢えて「日本の政府が原発をやめるって決めないことだ」と答えました。

地域でエネルギーを使うのに役立つテクノロジーはあるのですが、機器の生産が高いんです。うちが入れた井戸水の仕組みも、機械を見ればシンプルな構造ですが、量産していないから高いんです。逆に言えば、みんなが使えば安くなるしそれは日本国内の新しいビジネスチャンスにもなる。日本政府が原発をやめると決めたら、この国の経済は大きく動くと思います。

核のゴミをどうするか。私たち製造業は、「産業廃棄物をどう処分するか」という計画の申請をして認可されない限りは工場を動かせないのですが、廃棄物の処分を考えずに唯一動かせるのが原発です。

30・40年しか使えない機械を廃炉するのに40年、50年かかる。それもまだ伸びるかもしれない。核燃料を含めたら何万年もかかる。これで経済効率がいいわけがないんです。

福島第一原発・第二原発について

半年ほど前、久しぶりに第一原発第二原発へ行きました。

東京電力に申し込むと、福島原発の中に行けるんです。先に、富岡町にある第二原発に行ったんですが、そこは壊れていないので原子炉建屋と格納庫の中に入ります。防護服を着て線量計を付けて、入り口で指紋認証をして、様々な注意を受けます。第一原発の方は壊れているので、バスで回るだけでした。

その帰りの電車で、3つのことを考えました。うちも一応食品工場をやっていますから、工場を動かすことの難しさは身に染みて分かっています。どうやっても人的なミスはあるし、機械は故障する。減らす努力はできてもゼロにはできない。ところが、原発は人的ミスゼロ、機械故障ゼロの状態でしか動かないわけです。あれを動かせるのは神様しかいないと思いました。

そういうものすごく難しい機械なんですが、説明の中で「ここから蒸気が出てタービンを回すんですよ」おっしゃる。「これは巨大な湯沸かし器じゃないか」と思った。だったら、こんな難しくて危険な方法を取らなくても、他にやり方があるのではないか? これが一つ目。

二つ目は、入るときにセキュリティチェックがあるんです。でも、その現場を守っている人は自衛隊でも警察でもなく、みなさんもよく知っている警備会社です。彼らは武器を持ってない。地上は厳重ですが、空を見たら何も無い。海側も何も無い。もし夜陰にまぎれて他所の国の工作員が入ってきたらやりたい放題だなと思いました。

最後に思ったのは、福島の原発関連で働いている人の数です。福島復興本社で4000人、第二原発で300人、第一原発4000~5000人の作業者、合わせて約1万人です。この人たちは1銭も売上げを上げていない。付加価値を生まない仕事を毎日しているわけです。ボランティアじゃありませんから、給料をもらっているわけです。そのお金をいったい誰が払っているかというと、我々です。電気料金や税金です。

なぜ、原発の再稼働は進むのか?

こういう話をさせていただくと、いろんな分野、立場の方が賛意を示してくださる。原発反対派ばかりでなく、経済界にもいらっしゃる。では、どうして原発再稼働が進んでいくのか?

ここからは、まったくの私見です。原発事故の2011年以降、化石燃料の輸入金額は増えていますが、価格高騰と円安が原因です。輸入量自体は減っているんです。温暖化の話でも安全保障の話でも無く、電力会社とそこに膨大な金を貸し込んでいるメガバンク、そこの周りで商売をしている超大企業の財務的な問題に尽きると思うんですね。

東京電力の財務諸表をずっと見ていたんですが、その中の貸借対照表(バランスシート)、左側のページに資産の部というのがあります。固定資産の中の4番目くらいが原子力発電設備で8000億円くらいです。それから、原子力の燃料の中に、加工中等核燃料という項目で5千何百億とあるんです。

調べてみたら、使用済み核燃料のことでした。東京電力のバランスシート上では、あれはゴミではなく、資産になっているんですね。再処理して再び原発の燃料として使える、という前提なんです。だから、もんじゅの廃炉があれだけ揉めたわけですよ。やめちゃうとそのストーリーが崩れちゃうから。

もし、原発を使わない、という決定をされてしまうと、設備と核燃料含めて1兆5千億円くらいバランスシートから落とさなくてはならない。東京電力は12兆円くらい資産がありますから、いきなり債務超過にはならないが、相当に財務が毀損してしまうわけですね。

誰が一番文句を言うかというと、まず株主です。東京電力の場合は、株のほとんどを国が持っています。次に文句を言うのは銀行。融資先がそんなことになったら困る。あとは、メーカー系企業です。経営が行き詰まっていますから、原発を輸出すると言っているわけです。彼らも絶対やめたくない。

あとは、政治家も小選挙区制ですから、票が減ることは言わないし、やらないですよね。原発の話は非常に微妙なので触れない方がいいわけです。

政治家も勉強しないし、発言行動しないので、どこかで決まったことがスーっと流れていく。そうすると、政策的に今すぐ原発が止まるのを期待するのは望みが薄いと思わざるをえないんです。そうは言っても、私たちは諦めるわけにはいかない。

私は、小さいが自分が腹をくくって責任を取れる自分の会社という現場を持っています。そして、もうひとつ、ほうとくエネルギーとか湘南電力とか顔が見える仲間と作る地域という現場がある。その中で自分ができることを小さくてもいいから、具体的に作っていく。そんな仲間を日本中に増やしていくことによって、国策で決まったことを現場から変えていきたいと思うんです。

 

 

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