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Next Wisdom Meeting #1 “古今東西から紐解く叡智” パネルディスカッション

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Next Wisdom Meeting #1 “古今東西から紐解く叡智”

トークの後は当財団の代表理事2名と、研究員の小柴によるモデレートの下、ゲストとのパネルディスカッションを行いました。ゲストお二人の専門分野からの意見に加えて、女性、母としての意見、叡智を持った人々の子供時代のエピソードなど、会場からの質問も交えながら白熱した議論が繰り広げられました。その時の様子を一部だけお伝えします。

NWF)教育が社会を変えるというのが今回のカンファレンスのテーマでしたが、私たちが実際に子供に接する際に、どのような点に気をつけるべきでしょうか?

熊平)自分で決める、選ぶ、考える、伝える。それが大事だと息子には伝えています。当初は、グローバル人材を育てたかったので、バイリンガルに育てようと思ったのですが、英語で息子に話しかけていたら、「おかあさん、ここは日本なので、英語で話すのはやめてください」と息子に言われ、幼稚園に入るころには、英語教育を断念しました。ただ、自分の意見には必ず理由を言うこと、この事だけは徹底して教えました。日本では意見を言えばそれでよいが、海外だと意見に理由がなければ意見を言ったことにすらならない。言葉は日本語でも英語の脳にしておこうと気をつけていました。

吉成)ブランソンさんの子供時代はかなりハチャメチャで、成績も悪いし、足の怪我をしてスポーツもできなくなり、人の前に出るとアガってしまい吃音になってスピーチもできない。そういう踏んだり蹴ったり中で、ある時、自分の才能に気がついた。それは、コミュニケーションする能力がとても高かったということ。その人が何を欲しているか、どんな人かが瞬時に分かるといいます。また両親はリチャードに勉強を無理やり強いることもなく、どんなにひどい失敗をした時でも、たとえ世界が敵にまわっても、両親は彼の味方であるという安心感、そのおかげで自分はサバイブできたとおっしゃっていました。

もう一つのおもしろいエビソードは、アメリカのある小学校の話です。授業中に生徒がうるさくて先生の話をきかないとき、日本の多くの先生は大きな声で「静かにしなさい」と言うのではないでしょうか。しかし、その時の先生は違いました。騒ぐ生徒のところへ歩いて行って、バナナを一つ手渡したんです。で、その子や他の生徒達が何だろうとあっけにとられていると、先生は教壇に戻ってリンゴを耳にあてて「こちら地球管制塔の〇〇、宇宙ステーションの△△くん応答どうぞ」と言ったんですね。子供たちは笑ってしまって、あっという間に教室は静かになりました。発想の転換が上手いのに驚いたのと、その場で何が重要かということがよく分かっている。銀行型の教育とは対照的で、とてもクリエイティブな先生だと舌を巻きました。

NWF)日本でも女性の社会参加に関する議論が高まっていますが、女性閣僚や企業の女性登用の話などに違和感も感じています。男性がつくってきた価値観の中で男女がどれほど平等かという議論は、もはやどうでもよいのではないでしょうか。もっと「母性のリーダーシップ」とも言えるような、新しい価値観が将来的に求められる気がしますが、お二人はどのようにお考えでしょうか?

熊平)私がサウジアラビアに行ったとき、そこで「負けた」と感じたんです。いかに私が男性の社会に合わせて生きてきたかを知らされました。現地の女性はアバヤという黒い服で全身を覆われていて窮屈に見えますが、実際は全く違いました。男性と同じくらい「女性の王国」でした。結婚式も男女が別々に祝い、女子大にはあたりまえのように保育園があって、尋ねてみると「当たり前でしょう、私たち女なんだから」と一言。21世紀は女性リーダーの時代だと言われています。カリスマではなくチームワークとシンパシー、闘いではなく共生、そのような価値観が目指されている気がします。女性がどう生きるか、いままでは本人の自由だと思っていましたが、最近になって考えが変わりました。世界のジェンダーギャップレポートの結果、日本は105位。教育と健康の分野では男女平等なのですが、政治と経済への参加が非常に低い。これを見た時に、日本の意思決定の場のどこにも女性が参加していない、だから教育も変わらないんだと気がつきました。

吉成)世界を見ると、少女結婚や貧困などが圧倒的に深刻な問題で、女性がリーダーシップを取る取らないといった問題はごく一部の恵まれた国の話かもしれません。その一方で、アイルランドで初の女性大統領になったメアリー・ロビンソンさんや、ノルウェーで最年少にして初の女性大統領になったグロ・ハーレム・ブルントラントさんなどの女性リーダーと話をする中で、一国のリーダーとなるような女性はどんな人なのかを知る事ができました。私が強い印象を受けたのは、お二人とも非常にオープンだということです。

ロビンソンさんが大統領時代にソマリア視察で記者会見を開いた際、ソマリアの悲惨さを思っておもわず言葉に詰まってしまった。もともと法学者で普段はクールなのですが、自分の見た現状があまりにも悲惨だったので、思わず涙を浮かべてしまった。それがBBCの記者を感動させて、大々的なニュースになった。それで彼女は一躍有名になり、アイルランドという国を一挙に世界のマップに上げてしまった。そういうことができるのが女性なのかもしれません。力の駆け引きでなく、人間的な感情に裏うちされた行動が取れる。そういう意味では、彼らは「普通の人」の感性を持っている。私たちよりもはるかにオープンで忍耐強く、能力も優れていますが、その根本には普通の人の感性が生きている。

閉会の言葉

当財団代表理事 楠本修二郎(カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長)

この財団は何のために存在しているのか。通常の会社組織では行動計画や年度計画、三カ年計画などを基に活動するのが一般的な常識ですが、私たちはまず学んでいくところから始めます。このようなことを言うと多くの人には驚かれますが、私たちは一度立ち止まって、当たり前のことを違う角度から考えなおしてみたり、先人の知恵を踏まえて時代を見るということが、いま求められているのではないかと感じます。今日ここにお集りいただいた各界のリーダーである皆さんにも、次の時代の新しい流れを感じていただければと思います。

私は飲食店経営をしていますが、ゲストのお話をお聴きして、ホスピタリティの先生がおっしゃった一言を思い出しました。その先生はサービスの仕事を「肉体労働でも知識労働でもない、感情労働なんだ」と表現されたんです。確かにそうだと感動しました。未来の教育の現場を想像したとき、いまの学校や先生という役割がなくなる可能性あるかもしれませんが、生身の人間同士の感情や共感という部分は変わらないでしょう。そのような分野で、私たちも新たなイノベーションを起こせたら素晴らしいなと感じました。今日はお集り頂き有り難うございました。

Text / Photo:
KIYOTA NAOHIRO
Text / Photo:
Mirai Institute

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