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NWFおすすめ本特集Vol.1

Next Wisdom Foundationが発行するメールマガジンでは、定期的に研究員・事務局員がごく個人的に好きな本・影響を受けた本を特集しています。個性満載の研究員・事務局員たちらしく、マンガから手に入りづらい一般流通していない本まで多種多様で面白い! ここでは一部を紹介します。

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研究員・花村えみのおすすめ本

『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために(監修編著:渡邊淳司・ドミニク・チェン、ビー・エヌ・エヌ新社)』
ウェルビーイングの概念をどうやって社会実装していくのか? そろそろ具体的な道筋について議論を厚くしていく必要を感じています。
ウェルビーイングという概念はそもそも難しいのです。何が「ウェル」なのか世界でも定義は確定しておらず、個々の精神論や自己啓発に傾いてしまうと、社会構造に問題を残したまま個に責任転嫁する、茹でガエルを生み出す理論になってしまいます。また社会的弱者を救う福祉(ウェルフェア)と自律的な活動や自己実現を通しての福祉(ウェルビーイング)を混同すると議論が成り立ちません。
声が大きい個のウェルビーイングが優先されるのではなく、私たちという集団におけるウェルビーイングとは何かの再定義、どう社会実装していけるのかの技術、これらについて煙に巻く表現を使わずに核心をつく、意欲的な1冊でした。

『重版出来!(松田奈緒子・小学館)』
2020年、NWFで初めて書籍を刊行しました。そこでしみじみ痛感。本を売り続けるって大変! この作品を読むと本(漫画)というのは面白いだけじゃ売れない。編集者・営業・宣伝・製版・印刷・デザイナー・取次・書店員というプレーヤーが心血を注いで「売ろう」と動いたから売れるんだ、チーム戦なんだ、愛される本を作ることが大切なんだ、ということに改めて気づかされます。
この作品は数あるお仕事系漫画の中でもピカイチに名言が多いのが特徴。私も頑張ろう! とほっこり前向きな気持ちになりますよ。

『まんがでわかる ジョージ・オーウェル『1984年』(監修:山形浩生、漫画:前山三都里・宝島社)』
コロナ禍で黙認された政府による追跡機能、中国のITによる超監視社会。権力と個人の関係について、いま私たちは何を経験しているのか、を考えたくて本書を手に取りました。
「現代は分かりやすい国家権力が作動しているのではなく、権力を行使しているのが誰で、何のためなのか、実はあまりわからない。とはいえ、自ら喜んでフェイクニュースに流され、積極的に広める役割を頼まれもしないのに買って出る。私たちは率先して自ら監視してもらおうとしている? その方が便利だから。(山形浩生氏の文中解説)」
抗わないのは便利だから、楽だから、実害がないと思っているから。しかしそれは本当でしょうか?「戦争は平和なり、自由は隷従なり、 無知は力なり」というのはオーウェルが描いた超管理を行う党のスローガンですが、人間の本質を鋭くついています。思考実験としても1984年の世界から反面教師として学べることは実はとても多いと感じています。

『北北西に曇と往け(入江亜季・KADOKAWA)』
この漫画はアイスランドの光とコーヒーの香りが溢れる写真集のようであり、シズル感あるローカルグルメが頻出するガイドマップであり、ピンと張り詰めたミステリーでもある! コロナ禍で旅ができない中で、ページ越しに雄大なアイスランドの大自然を感じられて、旅に出たくてたまらないうずく気持ちを何度も発散させてくれました。あぁ……旅に出たい。

『グッド・アンセスター(ローマン・クルツナリック・訳:松本紹圭、あすなろ書房)』
未来を創り出すために必要な叡智とは? というテーマでランチ時間のセッションを11回シリーズでお送りしてきました。一貫して思うことは、気候変動も生物多様性もESGの可能性を考える時も「長期思考」をいかに持てるか、が鍵だということでした。キーフレーズは本書の副題の通り「わたしたちは『よき祖先』になれるか」です。
誰しもが短期思考と長期思考の両思考回路を持っていますが、どう意識的に長期思考のボタンを押し続けられるか。本書で紹介されている手法で私が気に入ったのは、日付を書くたびに年の前にゼロを置くというものでした。この文章を02021年に書いている、という感じです。このゼロひとつで何万年という時間の中の一瞬に生きていることに気づき、なんとも謙虚な気持ちになりませんか。

 

事務局長・後藤香織のおすすめ本

『日本宗教史 (末木文美士、岩波新書)』
私事ですが今春から大学の通信「歴史遺産コース」に入学しまして。その必修科目で「とっつきにくいわー」と思いながら手に取った本(笑)。
いわゆる日本の神・仏・儒についての通史なのですが、知っているようで知らない時間軸で見ていく日本の宗教史です。一口に宗教と言っても、そこには外国からの影響やその時代の情勢、民衆の生活の成熟などなど様々な要素が絡んで今に至っていることがわかります。
「あーだから信長は比叡山と揉めたのね」とか「日本が大戦に突き進む思想の元にもなった国家神道は明治維新になってぽっと出てきたわけじゃないのね」などなど、通史で見ていくことの面白さと深さを実感しました。

『マンガでわかる仏像:仏像の世界がますます好きになる!(監修:三宅久雄、誠文堂新光社)』
そんなわけで京都のお寺めぐりが趣味になっている私。「仏像もっと詳しく知りたいぞ! でも一度説明を聞いてもすぐ忘れちゃうのよね」と困っていた時に、京都国立博物館で見つけた漫画です。仏像の種類やそれぞれの役割、装飾などをわかりやすく解説しています。ストーリー仕立てになっていてビジュアルがある漫画は、何かを学ぶためにとても役立ちますね! 遥か昔に「あさきゆめみし」で受験を乗り切った自分を思い出しました(笑)。

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争(庭田杏珠・渡邉英徳、光文社)』
「平和教育の教育空間」の研究を実践する東大大学院生の庭田さんと情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方についての研究をする渡邉教授の共著。
AIとヒトとのコラボでの「記憶の解凍」をしていて、戦前から戦争のモノクロ写真をAIで自動色付けした後に戦争体験者の対話などやSNSコメント、資料をもとに人の手で色付けした写真が収められています。手にとった途端、いきなりその時代の人々や出来事が私の中で身近に「ぐわーっ」と迫ってきてかなりの衝撃を受けました。今まで戦争関連の資料や写真は見てきたはず。でもその時とは全く違う感覚に襲われました。80年前の戦争はすぐそこにあった現実で、そしてこれからも何かのきっかけがあればこんな世界が簡単に再現されてしまうのかも……。

 

研究員・小柴美保が2021年に読んだ本の一部

『シリコンバレー最大の捏造スキャンダル(ジョン・キャリールー・訳:関美和・櫻井祐子、集英社)』
革新的な血液検査技術を発明したとして『第二のスティーブ・ジョブス』ともてはやされたエリザベス・ホームズ。実際にスティーブ・ジョブスのように黒いハイネックしか着ない女性。彼女が率いたバイオベンチャー「セラノス」は蓋を開けたら嘘だったって話。アメリカのジャーナリズムの強い正義感とゴリゴリの訴訟社会の現実を垣間見た。著名人たちの意思判断の拠り所は評判重視かよってのも……。すごいのは、その後エリザベスは裁判の前にホテルチェーンの御曹司と結婚して子どもも生まれているというなんだかよく分からないが強い展開になっていること。先月くらいから彼女の裁判が始まってるそうで見逃せません(笑)。

『牛を屠る(佐川光晴、双葉社)』
屠殺場で10年働いた著者の記録。屠殺場だからということよりも、仕事に向き合うってどういうことなのかを感じる・考えることできる1冊。文章が明快できれい。

『分解の哲学 分解と発酵をめぐる思考(藤原辰史、青土社)』
科学的だけれど科学の話ではなく歴史と思想の本。発酵はもてはやされ、腐敗は嫌悪される今の世の中ですが、この紙一重の現象にそれぞれの意味や歴史を紐解く。ゴミゼロやサーキュラーエコノミーを考える上でぜひ読んでほしい1冊。

 

事務局・石川歩が最近読んだ本

『Humankind 希望の歴史(ルトガー・ブレグマン・訳:野中香方子、文藝春秋)』
上下巻ある分厚い本で見た目も硬派で読みづらいかと思いきや、意外とするする読めます。この本を手に取ったのは、NWFで毎年開催していた『ケイザイ祭』のゲスト候補に著者の名前が挙がっていたから。ケイザイ祭の頃に『隷属なき道(文藝春秋)』という著書が話題になっていて、当時29歳という若さもありNWF内で盛り上がりました。
希望の歴史は、過去の事件の歴史的解釈や心理学実験の結果”常識”と捉えられている事象について丁寧に取材して、定説を覆していきます。”性悪説”前提で成り立っていた常識が”実は違った”と納得できるときの快感がどんどん続いていく。シンプルに好奇心を満たしてくれるし読んでいて明るい気持ちになれる本です。

『動物たちの家(奥山淳志・みすず書房』
子どもの頃一緒に暮らした犬・鳩・ハムスターなどの動物たちを思い出しながら小さい生命を考えるカメラマンの記録。子ども時代の無知ゆえに小さな動物たちを死なせてしまったかもしれない・生を全うさせられなかったかもしれないという文章を読むと、私のそばにいてくれた犬はどうだったのか、動物が人に飼われるって幸せなのかと思いがめぐります。小さな生命が私たちに与えてくれる柔らかくて温かい気持ちが言語化されている美しい1冊です。

『プロテストってなに? 世界を変えたさまざまな社会運動(アリス&エミリー・ハワース=ブース・訳:糟野桃代、青幻舎)』
今の社会にもやもやしている現状はありつつ、自分が行動して何かが変わるとも思えない。そんなことを考えている方がいたらおすすめです。
古代エジプトの労働者ストライキからブラック・ライヴズ・マターまで、世界中の抗議活動の様子、背景や結果が可愛いイラストと一緒に紹介されています。植物を育てることで抗議活動をする事例も出ていて、骨太なイメージのある社会活動がもっとチャーミングにもできるのだなと感じました。

『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語(内田洋子・文藝春秋)』
モンテレッジョというイタリアにある小さな村は、かつて本の行商で生計をたてていた。この事実を知った著者がモンテレッジョの歴史をたどっていくノンフィクション。本好きが読めばもっと本が好きになるし、読まないという方は読みたくなるかも。本という優れた文化が現代まで継がれてきた歴史の一端を知ることができるし、本への愛があふれた1冊です。イタリア在住の著者なのでイタリアの風景描写がよくて、モンテレッジョに旅をする気分にも浸れます。

『酒肴ごよみ365日(萬田康文・大沼ショージ、誠文堂新光社)』
365日、毎日のつまみが写真と簡単なレシピで紹介されている便利な1冊。普通に冷蔵庫にある食材でちょっと変わったつまみが作れるので重宝しています。切り餅を3センチ角に切ってフライパンで多めの油で揚げて、塩とカレー粉をかける『カレー揚げ餅』はお正月用に買った餅を年内にどんどん消費しています。ビールによく合いますよ~。

 

研究員・編集長 清田直博のおすすめ本

『秋山豊寛さんの本全般』
2021年は民間人の大富豪たちが宇宙旅行を競い合い、12月にはZOZOの前澤さんもカザフスタンのバイコヌール基地から宇宙へ向かいましたが、31年前の1990年に同じ基地(当時ソ連、翌年冬にソビエト崩壊、現在はカザフスタン領)から日本初の宇宙飛行士として飛び立ったのが秋山豊寛さんです。秋山さんは日本初の宇宙飛行士であり世界で初めて宇宙に行った民間人です。当時僕は中学生で、居間のこたつに入りながらテレビに釘付けになっていたのを思い出します。ユーミンの曲がずっと流れていました。当時の日本はバブル景気で、テレビ局のTBSが自社のプロジェクトとして記者を宇宙に派遣したわけです。いま考えるとすごい時代ですよね。宇宙から地球を見てきた秋山さんは、その後テレビ局を辞めて農家に転身し、福島県の阿武隈山地の麓に移住します。そして3.11の原発事故に被災し、福島を追われることになります。その後京都で暮らし、今は三重県で有機無農薬の野菜を作っています。いつか取材してみたいです。彼の宇宙飛行についての詳細は、今年亡くなってしまった立花隆さんが秋山さんを徹底的に取材した『宇宙よ』(文藝春秋,1992)、農家になった後の話は『鍬と宇宙船』(ランダムハウス講談社,2007)、原発難民になった後の話は『来世は野の花に 鍬と宇宙船Ⅱ』(六曜社,2011)、『若者たちと農とデモ暮らし』(岩波書店,2017)をお読みいただくのがオススメです。今や宇宙旅行は富豪達の成功の象徴になってきましたが、お金持ちの方々にはどんどん宇宙に行って宇宙的視野を獲得していただいて、未来の地球のためにどんどんお金を使ってくれるといいなと思います。ノブレス・オブリージュ。

◉『土中環境』高田宏臣、建築資料研究社、2020
3.11をきっかけに僕も秋山さんのように都心を離れて中山間地で畑を耕すようになったのですが、次第に山に生えている樹や林業にも興味を持つようになりました。農業、特に無農薬栽培や自然栽培では土づくりが大事と言われています。『奇跡のリンゴ』の木村秋則さんはリンゴの無農薬栽培に行き詰まり、首を吊って死のうと深夜に山の中に入ったところで、いきいきとしたドングリの木に出会い、その木を育てた山の土をすくって食べることで悟ったわけです、自然は全てつながっていると。そして山の土壌をリンゴ畑で再現することで、無農薬栽培の奇跡のリンゴが生まれました。ところで最近、日本各地の山で倒木や土砂災害が増えていますが、その原因は土壌にあると考えているのがこの本の著者の高田さんです。山をコンクリートで固めて治山治水することで、山の土壌への水の浸透が止まり、水と空気の流れが止まり、微生物が死に、根が腐り、木が倒れ、山が崩れる。先人達は山の中と地面の下で起こっている生命の循環を想像しながら山づくりをしていました。都市に住む人にもぜひ読んでほしいです、自然の見方が変わる本です。全部つながってます。

◉『「たま」の本』竹中労、小学館、1990
水の流れや空気の流れ、自然の循環を考えていると「水系」や「流域」というものが重要なのではないかと分かってきました。分水嶺で区切られた「流域」に住む人たちは、そこを流れる川の水や地下水などを利用しながら同じ水循環の中で生活しているわけです。人間の身体の60〜70%は水でできていると言われます。東京都の水道水の約20%は多摩川水系から、約80%が利根川荒川水系から取水されています。つまり、東京都民の20%は多摩川人、80%は利根川荒川人と言うことができるのではないでしょうか。江戸の町人達は「玉川の水で生湯を使う」こと、つまり多摩川から取水されて玉川上水を流れて江戸市中に張り巡らされた上水道の水道水を生湯に使うことを都会人として誇っていました。僕自身も多摩川水系一級河川秋川の上流部に住んでおり、青春時代を中流域で過ごし、多摩川には並々ならぬ愛着を感じています。ところで、この2年間はコロナ禍で少なくない人が東京を脱出したり、特にエンターテイメントに関わる人達が三密回避で舞台を失ったわけですが、東京都ではコロナで仕事を失ったアーティスト達を支援する「アートにエールを!」というプロジェクトを実施しました。その支援で作られた動画作品の1つ、僕のFacebookのタイムラインに偶然流れてきたのが『さよなら人類』という90年代に「たま」というバンドの代表曲でした。この本の著者の竹中労さんは反骨のルポライターで、美空ひばりやビートルズや牧口常三郎のルポルタージュで知られているのですが、彼が最後に取材したのが「たま」だったところに凄みを感じます。

◉『日本サウナ史』草彅洋平、カンカンピーポー、2021
東京には冬に凍る湖はありませんが、人が飛び込める川があります。多摩川水系一級河川秋川の上流部にある会員制キャンプ場「HINOKO」に今年の春、東京で唯一の常設のアウトドアサウナの施設ができました。村の薪(杉)をガンガン燃やしてヒノキウォーターを焼き石に垂らしてロウリュして汗をかいたあと、秋川の冷たい水に飛び込んで、河原の大石の上に横になってボーッとしてるとたちまち「ととのう」ことができます。今や予約が一杯でいっぱいでなかなか簡単に味わうことができなくなってしまったのですが、オープン前にこのサウナに入って太鼓判を押してくれたのがこの本の著者の草彅洋平さんです。内容は詳しくここで語ることはしませんが、サウナを語りたいなら、まずこの本を熟読してからにしたほうがいいと思います。

◉『デザインの現在』土田貴宏,PRINT & BUILD,2021
国内外100組のデザイナーの近年の作品(家具やプロダクトや空間)を集めた本。副題が「コンテンポラリーデザイン・インタビューズ」になっている通り、工場生産による大量生産を前提とした近代デザインではなく、ワンオフでギャラリーに展示されるような作品も「デザイン」の範疇に入ってきていることが分かります。アートとデザインがどんどん近づいてきている気もしますが、アートが物体であることから離れはじめた代わりに、コンテンポラリーなデザイン作品がそのポジションを埋め始めているような印象も受けるし、これだけゴミ問題やSDGsが叫ばれている中でデザイナーたちが敢えて「モノ」を作り出す意味を模索する、その苦労もインタビューから伝わってきます。デザイン思考を語りたいなら、まずこの本を熟読してからにしたほうがいいと思います。

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