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【メールマガジン】家族の平和は「一人の人間として平等である」と信じることから始まる

Next Wisdom Foundation事務局は、定期的にメールマガジンを配信しています。ここでは、反響の多かった回を公開していきます。
今回は2022年4月18日に配信したメールマガジンを紹介します。

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最近、『どうぶつ会議』(エーリヒ・ケストナー、絵:ヴァルター・トリヤー 、訳:光吉夏弥・岩波書店)を読みました。子どもの頃は、絵の可愛さや動物会館に一堂に会した動物たちの振る舞いに夢中でしたが、いま読むとケストナーが絵本に込めたストレートな平和への思いにガツンときます。

簡単に紹介すると、人間が起こした世界大戦という問題を人間自身で解決できないことに業を煮やした動物たちが”動物会館”に集合してどうぶつ会議を開きます。子どものために早く問題を解決するよう人間を促す動物たちですが、人間の話し合いは紛糾するばかりで解決しない。そこで動物たちは全世界の人間の子どもを連れ去ります。パニックに陥った大人たちに動物が突きつけた5か条が良いんです。「国境をなくすこと」「戦争しないこと」「警官は弓と矢を持って、学問が平和に役立っているか見回ること」「書類を減らすこと」「教育者が一番高い給料をもらうこと」。初版1954年の本ですが、版を重ねて今も読み継がれています。

今回のメールマガジンは、今期のNWF活動テーマ【A piece of PEACE】の取り組みにあたって研究員が読んでいる本の紹介と、5月から新たに始まるドコモgacco株式会社との共催オンラインイベント『教養再考ー振り返れば教養』を紹介します。最後までお楽しみください。

家族の平和は「一人の人間として平等である」と信じることから始まる
Next Wisdom Foundation研究員 花村えみ

個人の幸せについて考えるとき、避けて通れないのが家族関係の問題です。娘を縛る母、NOをいえない娘の関係に踏み込んだ信田さよ子さんの著書母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』(春秋社)が話題になったように、多くの人が親との関係性に悩んでいます。そもそも家族については「法は家庭に入らず」という明治民法の精神や、家族イデオロギー(親は子どもを愛すもの、子どもは親の愛に応えて生きるもの)が今なお根づいているため、しつけという名の暴力が平然と横行します。DVドメスティック・バイオレンスという言葉自体も1995年に初めて使われるようになったのだとか。それまでは夫婦喧嘩、もしくは生意気な相手をしつける行為であり、被害自体が社会通念上存在しませんでした。信田さんの指摘通り、まさに家族は無法地帯といえます。

信田さよ子さんは臨床心理士としてDV・子どもへの虐待・親への暴力・性暴力・引きこもり・依存症などの悩みを抱える当事者や家族のカウンセリングを40年来行ってきました。家族をできるだけ壊さないよう、また事件化を防ぎ自殺者を出さないよう、問題の解決のために奔走してきた人物です。
『家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ』(KADOKAWA)では、「こんなのウチだけでしょ」という他人には言えないプライベートな出来事が、実は歴史的で構造的な背景を持っているという視点を展開します。溜め込んだ生きづらさを「こころの問題」などと個人化や病理化して当事者を孤立させないために、必要不可欠な視点だと感じました。

【A piece of PEACE】の一環で家族の平和をテーマにした時にこの本を手に取りましたが、痛感したのは家族における平和は当たり前ではなく、個が安全に暮らせる関係性は努力して作っていくものだということでした。
例えば息子の引きこもりが起こる状態とは家族関係の限界を意味します。信田さんたちは家族関係の抜本的構造改革のために、まずお母さんたちに「私は」という発言を心がけるようにと助言するといいます。「あなたは」や「あの子は」と他者を主語に生活するのではなく、この私はどうなのかを絶えず表明するようにと。母と息子の甘え・憎悪・許し・謝罪の複合感情による共依存関係から脱するために、「私から出発することで、あなたという別の私を成立させる」というやり方です。相手と距離を取るということは、物理的に離れるという方法だけではないのだとハッとさせられました。

家族は違う性別・年齢・社会的な力の強さを持つプレイヤーが共存する特殊な集まりです。その中で支配・被支配という関係ではなく、「一人の人間として平等である」と信じることから始める。家族の平和はそれなしに成立し得ないのではないかと、この本に出会って感じるようになりました。

COTEN RADIOを聞いている。

今期のNWF活動テーマは【A piece of PEACE】です。ウクライナ情勢を注視しつつ、NWFとして平和の解像度を上げるためにどんな活動ができるのか話す中で、先日話題にあがったのが株式会社COTENが運営している『COTEN RADIO』です。https://cotenradio.fm/

「特別編 緊急収録 ウクライナとロシア」と題して6回に分けてウクライナとロシアの歴史を解説してくれています。
日本に住んでいると、国家はゆるぎなくあるもので、ころころと首相が変わっても国家という枠組みはなくならないと漠然と信じています。しかし、この回を聞くと、世界を見渡せばそんなことはなく、”国家”の拡充をめぐって争いが続いてきたことに気付かされます。また、日々流れてくるウクライナ情勢のニュースは西側の視点から語られるものが多いのだなということにもハッとさせられます。

まだ『COTEN RADIO』を聞いたことがないという方は聞いてみてください。面白くて止まりません…! 個人的には、ヒトラー編の後にガンジー編を聞くのが好きです!

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