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【メールマガジン】なるほど、今のロシアの性質はこういうことなのかもしれない

Next Wisdom Foundation事務局は、定期的にメールマガジンを配信しています。ここでは、反響の多かった回を公開していきます。
今回は2022年10月11日に配信したメールマガジンを紹介します。

痛切な思いで従軍体験を語った彼女たちの思いは、なぜ届かないのか

Next Wisdom Foundation研究員・花村えみ
参考図書:『戦争は女の顔をしていない コミック版』(原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、作画:小梅けいと、監修:速水螺旋人)

第二次世界大戦中、ソ連ではナチス・ドイツとの戦線に100万人を超える女性が自ら志願し従軍していました。支援部隊のみならず、狙撃兵や飛行士、高射砲兵としても戦っていたんです。

この本はウクライナ生まれでノーベル文学賞を受賞した女性ジャーナリストが、ソ連側に従軍した500人以上の女性から体験を聞きとり、まとめた作品を漫画化したものです。女性たちは凄惨な戦場にありながら自分にとって譲れないことは何だったのか、を静かに語り出します。

それにしても、ナチスに侵攻されて2700万人という犠牲者を出し、この世の地獄をみた国が、いま侵略する側になるという悲劇。次代を担う若者たちがこんな従軍体験をしないで済むようにと、痛切な思いで体験を語った彼女たちの思いがなぜ届かないのか。今こそ手に取るべき本だと思います。

平和という”建前”でもいいんだ

Next Wisdom Foundation事務局・石川歩
参考図書:『ヘルシンキ 生活の練習』(朴沙羅・筑摩書房)

京都市生まれの社会学者が、コロナ禍に子ども二人を連れてヘルシンキに移住した様子を綴った本。

コロナ禍で不要不急の海外旅行を自粛する状況で「父親に会うことは不要不急か」と聞く著者に、「必要緊急です」と答える国境警備隊。ワンオペ育児で鬱になりそうな著者に、まずは母親を重視するヘルシンキのソサエティ。
この本は、日本とフィンランドの社会の捉え方の違いを社会学者の視点でレポートしている。

フィンランドは三度の大きな戦争を体験していて、一つが内戦、二つはソ連との戦争。フィンランドの軍事博物館を訪れた著者は、「戦争がどんなに恐ろしく、避けなければならないものであるか、この博物館は示していない」と感想を書いている。

読んでいて私もハッとしたのだが、日本は経験した戦争を否定し、戦争を放棄することを前提に戦争が語られる。でも、フィンランドの軍事博物館では戦争の肯定、あるいは否定の欠如があり、戦争はあるものと割り切っているという。これを読んで私の思考はぐらぐらと揺れてしまった。戦争を肯定してしまったら、平和が大事という大前提が崩れてしまう……。こんな惑いを著者の言葉がグッと引き戻してくれた。「平和主義という建前は、欺瞞的なものかもしれない。でも、人々はその建前を欺瞞ではないものに作り変えるために、その時代なりの方法で努力してきたのではなかったか」

A piece of PEACEの活動は、NWFと活動に関わってくださる皆さんで平和とは何かを問い・進めています。これからも取材レポートで発信していくので、皆さんにぜひ読んでほしいです。

なるほど、今のロシアの性質はこういうことなのかもしれない

Next Wisdom Foundation研究員・小柴美保
参考図書:『北方の原形 ロシアについて』(司馬遼太郎・文藝春秋)

ウクライナとロシアの昨今の関係性から派生して、題名を見て手に取った本。しかも作者は司馬遼太郎。一体どういう本なのかとワクワクした。読んでいくと、この随筆の中から、モンゴルやシベリアの当時の情景がなんとなく浮かんでくる。さすがだ。

ヨーロッパとアジアという異なる文化圏に挟まれたロシアという国の成り立ちの特異性を認識した。特に驚いたのは、ロシアは元から強い国ではなかったこと。ロシア史が”タタールのくびき”と呼ぶモンゴルの爆発力といったら凄まじかったと。私にとってモンゴルはスーホーの白い馬やモンゴル相撲など遊牧的なイメージだったので、なかなか衝撃的だった。シベリアの極寒の地をどうやって保持するのか。そこに日本へのロシアの期待感と日本の鎖国による歯車の噛み合わなさ。などなど、なるほど、今のロシアの性質はこういうことなのかもしれないと思わず頷いてしまった。

「国家にも、器量がある。器量とは、人格、人柄、品性とかいった諸概念を集めて輪郭をぼやかしたような何かであるとしたい」他国とその国の人々についての無神経な感覚が、国の器量を落としてしまう。私たちもその創造力を多分に持って生きていかなくてはならない。

Next Wisdom Foundation

地球を思い、自然を尊び、歴史に学ぼう。

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誰もが相手を慈しむ世界を生もう。

全ての人にチャンスを生み、
共に喜び、共に発展しよう。

私たちは、そんな未来を創るために、
様々な分野の叡智を編纂し
これからの人々のために
残していこうと思う。

より良い未来を創造するために、
世界中の叡智を編纂する
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