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Design is not for the better life but the life itself. デザイン再考(2/3) デザインを感じる三つの要素

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【満員御礼】Design is not for the better life but the life itself. -デザイン再考-

CC BY 2.0, Richard Barry, pure power and beauty

Design is not for the better life but the life itself. デザイン再考(1/3)からの続き

僕はいろいろな仕事をやってきたわけですが、その中身はというと、時代をサーフする流体力学のように、波乗りをしてきただけなのではないかと思うんです。「デザイン」とは何かを考えると、まず自然の中にある絶対的な美しさ、木の枝の張りかたや川の流れかたなど自然界の絶妙なバランスから成り立っている普遍的な美意識が第一にあって、その次に時代の空気や流れがバームクーヘンのような層になって、そして最後にデザイナーの個性みたいなものでかたちになる。その3つの要素で僕はデザインを見ています。

デザイナー個人の要素で言うと、例えばマーク・ニューソンの場合、彼は歯ブラシをたくさん集めているんです。どこへ行くにも歯ブラシをいっぱい持ち歩いて歯を磨く。毎朝バーッと何十種類も歯ブラシを出して「今日はどれで磨こうか」と。でも、それはそんなにお金のかかることではなくて、1本100円くらい。それを何十本も持ってるということで「贅沢だ」と言う。それを見た時、これはものすごい贅沢な趣味ではないかと、こいつはなかなかイケてるなと僕は思ったわけです。こいつと仕事をしようと決めたんです。デザイナーが良いかどうか、デザインがいいかどうかという前に、そういうデザイナーの癖みたいなものが大事なんです。倉俣さんなんかも酔っぱらった時に気が合うかどうかが大切だと言っていたし、スタルクはしょっちゅうシャンペンを飲んで、シャンペンのキャップのところにある針金を使って椅子を作ったりして、そこがなかなかイケてるなと。彼らと出会った当時は全然無名で、マークもそこらにいる美術学生みたいなもんでしたが、そういうちょっと他の人と違うなという人間性と、そして下手だけどマークはサーフィンをやっていて、波のような普遍的な美と時代の空気感があった。

最近では「COMMUNE 246」という場をつくりましたが、例えばポートランドのACE HOTELなんかに行くと、普通のホテルのような「宿泊専用」とは一切書いてなくて、宿泊者に限らず誰でもロビーに集まってくる。そこにはWi-Fiが通っていて、ロビーの席で仕事をしているフリーランスの人がいたり、近所にオフィスのある小さな会社が打ち合わせをしていたり、宿泊や滞在と働くということが一体となっていて、人が集まるロビーになっている。隣の部屋にあるレストランで注文した料理をロビーまで持ってきてくれて、食事をしながら打ち合わせをしているのです。請求を忘れたりしないかと心配するんだけど「そんなことどうでもいいじゃないか」という感じでやっていて、そっちに時代が動いている。そのロビーでは、プライベートな家の空間と同じで、無限に自由で無限に多様で、どんな人種でもどんな職種でも平等なんだよという思想を感じるわけです。

CC BY-NC-ND 2.0, ~dgies, Ace Hotel Lobby

「デザインとは何なのか」というのは僕にも分からないことで、とにかく何が綺麗で何か時代に合っているか、本質はどこにあるのか、そういうことに常に興味を持ちながら流れていくということが、僕が今やっていることです。次の時代の美は何かというより、叡智は何かという next wisdom の先に next design が出てくると思うんですね。next living がありnext life style がある。次の時代がどうなっていくのかというより、今の時代がどうなっているのか、ということに常に興味を持つということがデザインの根本にあるのではないかと思うんです。

COMMUNE 246 

「COMMUNE 246」では、ありとあらゆることをやろうとしています。今そこで働いてる若者で、鹿児島の実家が養豚業をやっていて、マラソンが速くて青学の駅伝部にスカウトされてきたんだけど、駅伝には出れなかったという男がいます。卒業して実家に戻るのはもったいないからCOMMUNE 246で2年ほど働きたいというので、では「豚を連れて来い」と言ったんですね。それで豚を買うことになりました。果たしてどうなるか。青山通りで車にひかれたらどうするかとかね。首輪は付けた方がよいのか、もしかしたら首輪は引っかからないかもしれないなとか。それで今日もどういう風に豚小屋を作るかに熱中してしまって。それで大きくなってしまったら殺せないのではないかと、では豚を食べてはいけないようにしようとか、いろいろ考えていたわけです。

 

CC BY 4.0, 無料PhotoBank

そういうことが僕の興味の中心で、今日は豚の事を朝からずっと考えていました。豚はきれい好きで賢いんだよね。トイレもちゃんと決めてやるとそこでするんですよ。毎日お風呂入れてあげてね、そうやって2年間育てあげようかなと思ってるんです。せっかくだからかわいい豚小屋をつくって、お風呂もちゃんとつくってそこでシャワーを浴びさせてやろうかなと思ってるんです。そのマラソンランナーが高木という名前なので、豚の名前は「高木ブー」にしようと思って。今日思いついたことなんですけどね。「高木ブー1号」とか、2匹めは「高木ブー2号」とかね。真面目にそういうことを夜な夜な本気で考えています。

 

Design is not for the better life but the life itself. デザイン再考(3/3)へ続く

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