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SOW!〜SHARE OUR WISDOM〜開催レポート Part1「世界で唯一の「折り紙」技術で月に家を建てたい!」

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Vol.4「SOW!」Search Out Wisdom

SOW! はこれからの未来を切り開くための叡智や、失われそうな叡智を持って取り組む人・団体(プレゼンター)に対し、各分野の専門家や参加者のみなさんとブラッシュアップをしながら、クラウドファンディングをその場で行うイベントです。

会場で応援したいプロジェクトの立案者から直に話を聞いて、心打たれて賛同したくなった企画に、その場でファンディング参加ができる形式です。みなさんのイベント参加費3,000円のうち1,000円を支援金として、ゲストにお渡しします。

開催5回目を迎える今年のテーマは、『アップデイト』。2019年の財団の大テーマ『人間にしかできないこと』をもとに、これまでの伝統や技術、活動をこれから100年先を見据えながらアップデイトしようとしている人やチームをプレゼンターにお呼びしました。

 

プレゼンター
・株式会社OUTSENSE 代表取締役社長CEO髙橋鷹山さん
・CTO 石松慎太郎さん

ゲスト(プロジェクト応援)
・楽天株式会社 常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター 北川 拓也さん
・スーパーイノベーター ヤフー株式会社 SR推進統括本部 沼田尚志さん
・ファッションジャーナリスト、一般社団法人フュートゥラディションワオ代表理事/NWF評議員 生駒芳子さん
・カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長、当財団代表理事 楠本修二郎
・株式会社LIFULL 代表取締役社長、当財団代表理事 井上高志

【プレゼンターN0.1】世界で唯一の「折り紙」技術で月に家を建てたい!

・株式会社OUTSENSE 代表取締役社長CEO髙橋鷹山さん(写真右)
1994年生まれ。大学3年次、宇宙建築について学ぶべく東海大学へ編入学。宇宙空間で使用する大型展開構造物の研究に尽力する。また並行して、学生団体「TNL」を創設。「宇宙で暮らすを実現する」をモットーに、宇宙建築を志す学生たちのプラットフォームとして精力的に活動を行う。大学院に進み、JAXA特別研究員としても研究を続けるが、次第に研究現場の実情と自分の創りたい世界との間にギャップを感じるようになり、半年で自主退学。日本を代表する宇宙ベンチャー「ispace」でのインターンを経て、本気で宇宙に挑戦することを決意する。2018年8月、学生団体や研究室の仲間たちと共に、株式会社OUTSENSEを創業。「折り紙」を応用した独自技術で「家を折り畳む」を実現し、「月に家を建てる」ことを目指す。

▶▶︎ プロジェクト概要
https://camp-fire.jp/projects/119111

ディスカッション

井上(当財団代表理事):ありがとうございました、素晴らしいですね。住宅というとLIFULL HOME’Sを運営しているので、まさに我々の分野です。僕らと孫泰藏さんなどで進めているプロジェクト「Living Anywhere」も、「どこででも生活できる」というコンセプトでやっています。実はVUILDの秋吉くんという人が、まさにこういう折りたたんだ状態で車で牽引して現地で広げて使うというプロダクトを、コンセプトモデルとして考えています。だから、ここまでできているのはすごいと思ったんです。

ふと思ったのは、これを月に作るというのもとても良いですが、月に作る手前のもう少し現実的な社会実装で、移動型の住まいやキャンピングカー、仮設住宅だと現実的にお金が集まるんだろうなと感じました。

一方で、地球とか火星に作る時には、小さいとはいえ運ぶのにすごく燃料が必要ですよね。ドバイでは、3Dプリンターを持ち込んで、現地にある火星や月の地面を掘り返して素材として利用しながら3Dプリンターで無人で家を作るという研究が進められているそうです。

OUTSENSE:ありがとうございます。僕らも地上での事業をまず始めていきたいと考えています。もう一つのご質問で、3Dプリンティングの技術は本当に素晴らしく発展しているなと日々感じています。しかし僕らは、地上で完成したものを持っていくというところに一つ大きなこだわりを持っています。実際に確実に3Dプリントのみで月面に建物ができる、そこで密閉性を確保できるということが本当にできるのかということが懐疑的かなと思っていて、そういった意味で、まずは地球上で完成したものを持っていくということにこだわっています。

井上:こだわっているんですね。もう一つ質問ですが、ファーストステップ、セカンドステップと進んでいく中で、鷹山さんが「今一番ここが困っている」ということは何ですか? クラウドファンディングでお金が必要ということ以外で。

OUTSENSE:まず、事業をどういう風に決めていくのかというところに悩んでいて、まだ決めきれていなくて。最終的には宇宙に行きたいっていうことが強くあるので、そこに結びつくようなロードマップを描くというところが、すごく難しいなと感じています。

楠本(当財団代表理事):いま井上さんがおっしゃったのと一緒で、まず地球でものすごくニーズがあると思うんですよ。それが日本の折り紙っていうキーワードにされていらっしゃるのがすごく素敵だし、ブランディングはバッチリできているなと思いました。そこで質問なんですが、もし仮に、宇宙はまだ建築基準法とかできていないから(笑)、国内のレギュレーションでやるとしたら、建築物になるんですか? 工作物になるんですか? 両方あり得るんでしょうか?

OUTSENSE:そうですね、事業によっては建築物になってくるかなと思っていて。ただ、移動できるかどうかというところも建築物になるかどうかの基準だと思うんですが、まずは工作物のような文脈で入っていくのがいいのかなと考えています。

楠本:工作物の場合、何層くらいのものまで構造的に可能ですか?

OUTSENSE:地球上の場合は重力が強いので、壁の厚みをどれだけ薄くできるか。薄くなればなるほどかなり倒れやすくなってしまうので、上に積むということに対して制限はあるのですが、2センチくらいの厚みであれば、理論上はかなり高くまで、現状想定しているものでは直径6メートル、高さ5メートルのものをまず作ってみたいと思っています。

北川:いざ月に持っていって、組み立てて、住んだ時に、空気をどう入れるかという次のステップまで考えると、折り紙式の利点は何ですか?

OUTSENSE:この構造物にプラスで膜構造を使っていきたいと考えています。膜だけで作ってしまうと例えば隕石が当たったなどという時に、外部要因に対して非常に弱いので、きちんとハードの構造を作ってあげるということがすごくメリットになると考えています。

北川:ここは難しいところだと思うのですが、研究出発だとどうしてもソリューション発でものを考えてしまう。この場合は、「このORIGAMIをなんとか使ってやりたい」という想いがある。それと同時に、「月に住みたい。」と。あえて、「俺にとってORIGAMIが大事なのか、月に住むことが大事なのか。」っていうことを自分の中で葛藤することがすごく大事だと思うんですね。

OUTSENSE:まず宇宙に構造物を作りたいというのが最初で、いろんなものを調査したんです。その中の僕が携われる中で、このORIGAMIっていう構造物がベストだという考えで今はこれをやっています。もう一度そこに立ち返ってみるのもいいのかなと今お話を聞いていて思いました。

生駒:私はもともとファッションの人間なのですが、今は伝統工芸の分野で色々と活動しています。編集者なので、次に何が流行するかいつも考えていて、実は伝統工芸の次は宇宙だと感じているので、興味深くお聞きしました。実はファッションの世界で折り紙といえば三宅一生さんなんです。三宅一生さんは折り紙とか、アルゴリズムの理論で、132 5.という再生ポリエステルを使ったお洋服を作られているんですね。

私がご質問したいのが、軽さとおっしゃっていましたが、どんな素材を使われるのか。もう一つは、月にもエコロジーがあると思うんです。月にこういう異物を持ち込むということに関して、その点をどうお考えなのか。いずれは、月に工場を作って、月にある素材でお作りになることがエコロジカルなのではないかと、私は思いました。この地球も人間がいるだけで汚染されたと言われています。今のところ月に人間がいないとしたら、人間がわざわざ持ち込んで月を汚染してしまうのかなという、ちょっとシニカルな言い方ですけれど。また、月の環境との共生をどういう風にお考えなのかをお聞きしたいです。

OUTSENSE:先ほどまだ説明していなかったところがありまして、折り紙を利用した構造物はやはり薄くて変形が許されるものじゃないとできなかったのですが、今回の技術では厚みがあって、さらに硬いものでも折れるというのが最大のイノベーションです。それによって様々な材料で折りたたみの構造物が作れるようになりました。材料としては、まだ検討中です。

生駒:軽さというと、炭素。あるいは、再生素材。夢を壊すようで悪いのですが、一応その辺をお聞きしたいなと思います。

OUTSENSE:僕たちのビジネスの最初のステップとして、この構造物自体を全て月に建てるとは考えていなくて、月に都市を作るための一番最初の拠点になるための一つの建物を建てられればいいかなと考えています。その後の発展のための一つの拠点としてこの構造物を使うと。ここから月と共生していける都市のきっかけとしたいです。

会場1:今マンションに住んでいて、大規模修繕の最中で困っているんですが、この構造物にも修繕は必要なんでしょうか?

OUTSENSE:一つこの構造物のメリットとして言えることは、一部分だけを交換することが可能なんですね。構造として全体が成り立っているので、ヒンジを付け替えるだけで割と簡単に修理ができると思います。

会場2:折り紙のような昔からの技術を使って宇宙開発に参画している事例はORIGAMI以外にもあるのでしょうか?

OUTSENSE:すぐには思いつかないです。ごめんなさい。

会場3:いま質問しようと思っていたんですが、JAXAで宇宙開発をしている者です。宇宙開発では折り紙機構はよく使われているものの一つです。ORIGAMIのすごい点はそれを構造物として使うところだと思います。基本的に宇宙開発の分野には新しい技術が実はなくて、基本の技術は大体古いものです。それが大前提としてあるかなと思います。

井上:もう一度、せっかくこの場なので、北川さんがおっしゃったのがすごくいい学びだなと思いました。イシューをどうにかすることにこだわり続けるのか、ソガメ折りという技術にこだわり続けるのか、どちらを選ぶかによって、今後の進め方が全然違うと思います。実は僕は建造物にこだわらなくていいんじゃないかなと思っていて、まずは地球上で、家具やインテリアで普及させるのでもいいのではないかと。

見た目が新鮮で、コンパクトで、強度もあると言ったら、アウトドアメーカーさんに行って開発資金を協力してもらって今時のキャンパー達が見たら「スゴイ」と思うような製品をまず作ってもいいかもしれない。そこで資金を貯めながら、技術開発の精度も上げていって、その先に宇宙があると。僕のアイデアだと、家具やインテリアやキャンプ用品ぐらいしか出てこないんですが、せっかくこれだけ叡智のある人たちがいるのでアイデアをいただくといいんじゃないかなと。

生駒:お茶室はどうでしょう? 移動できるお茶室を探しているんですよ。いろんなところでお茶会やりたいので。Anywhere お茶会。

司会:最後の締めくくりで何か熱い思いをぜひお願いします。

OUTSENSE:僕たちは2025年、2030年に宇宙の家を作っていきたいと考えております。今後技術的に高いハードルがどんどん出てくるかなと思うのですが、そういったものを皆さんの叡智を借りながら進んで、最終的に実現していきたいと思うので、よろしくお願いいたします。

Next Wisdom Foundation

地球を思い、自然を尊び、歴史に学ぼう。

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全ての人にチャンスを生み、
共に喜び、共に発展しよう。

私たちは、そんな未来を創るために、
様々な分野の叡智を編纂し
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より良い未来を創造するために、
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