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30分で石油をつくる!? ポリカルチャー藻類の可能性

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私たちの生活は石油に大きく依存しています。電気のほとんどは石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料から生み出されています。衣料も石油からつくられる化学繊維で、食品や医薬品の中には石油由来のものも多いのが現実です。化石燃料を燃やすことがCO2の増加と地球温暖化や気候変動の大きな原因になっていると言われており、石油利権を巡る紛争や戦争も起こっています。

石油はかつて地球を覆っていた植物や藻類が海底に堆積し、数億年かけて熱と圧力によって変化してできたものです。その石油生成の過程を科学的に再現することに成功した筑波大学の渡邉信教授を取材し、藻類の持っている可能性、科学的に生成された藻類オイルが石油に取って代わる可能性について、話をお聴きしました。

 

<プロフィール>

渡邉信 教授
筑波大学 藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター長

藻類学者。東南アジア淡水系およびシャジクモ類の保全生態学や、アオコなど有毒藍藻の研究で知られる。近年は藻類オイルの研究に携わっており、2010年には炭化水素生産効率の高い従属栄養性藻類であるオーランチオキトリウムに関する研究を発表した。

エネルギー、食料、健康、藻類の可能性

藻類石油に替わるオイルを作るということで、近年、非常に注目を集めています。しかし、エネルギー分野だけでなく、食料や健康などいろいろな分野で利用されてきています。

石油はエネルギーだけじゃなくて、プラスチックを作るのにも使われています。つまり、化学製品を作るのにも必要ですね。日本で輸入している原油の約10%がここに使われています。10%といっても1500万トンだから、バカにならない量ですね。この分野にも、藻の作るバイオオイルが使えます。

それから、食料源としても使えます。ノリ、ワカメ、コンブなど大型藻類は日本の伝統的な食品です。微細藻類は直接の食料というよりは将来の家畜の飼料や、農産物の肥料として使っていこうという流れがあります。アメリカの農務省などが今一番力を入れているのが、この分野です。

健康分野では、DHAとかEPAというオメガ3脂肪酸が注目されています。これも藻類で作ることができます。今は魚の油から取っていますが、実はこれらは藻類由来の成分なのです。海の魚はオメガ3を作る酵素を持っていなくて、食物連鎖によって藻類由来の脂肪酸を体内に取り込んで、蓄積しているだけなのですね。だから、養殖の魚はわざわざエサにDHAを混ぜてあげないとオメガ3を蓄積しないのです。つまり、健康食品の原料としても、魚の養殖飼料としても藻類が使えます。

われわれは、エネルギーはもちろんのこと、こういった分野も含めて、多方面に展開して行こうと考えています。そのために、筑波大学に藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センターができたわけです。エネルギー以外の分野でも、健康食品への応用などで成果が出始めているところです。

ボツリオコッカス(光合成により炭化水素を生成する藻の一種)
CC BY-SA 3.0, Botryococcus_braunii.jpg, NEON_ja

 

藻類が今の地球をつくった

藻類は一番古いものだと、30億年以上前に地球上に現れているわけです。陸上の植物だと、せいぜい4億年です。まったく歴史が違います。地球の大気を今の状態にしたのは藻類なのですよ。30億年前の大気は二酸化炭素がほぼ100%だった。今の大気の状態になったのは5億年くらい前です。

藻類が二酸化炭素を吸って、酸素を出す。酸素が増えることでオゾン層ができた。それで、ようやく宇宙からの紫外線がカットされるようになって、陸域に生物が住めるようになったわけです。陸上に植物が進出し、動物が住むようになり、最終的には人間が現れる。藻類がそれをやってくれなかったら、今の地球は無いのです。

そもそも、藻類って何かと聞かれると言い方がとても難しい。光合成をする植物の中で、被子植物、裸子植物、コケ、シダ類を除いた全部を藻類と呼びますが、強いて言うなら、根茎葉の区別が無くて光合成をする植物。しかし、光合成をする仲間から枝分かれして、今は光合成をしなくなったものまで藻類に含まれる。だから、藻類の仲間には非常にさまざまな生物が入り込んできます。

細菌の仲間にシアノバクテリアという生物がいますが、これは別名を藍藻といって藻類になります。クロロフィルaという葉緑素を持っていて、酸素を発生する光合成をしますからね。

そして、このシアノバクテリアを他の生物が取り込んで葉緑素を持つようになることを一次共生といいます。緑藻紅藻灰色植物といって、海苔の仲間などが紅藻類になります。また、緑藻の仲間がどんどん進化したものが現在の陸上植物です。

さらに、捕食生物が第一次共生の藻類を食べて色素を持つようになることを二次共生といいます。この代表的なものにコンブやワカメ、これも藻類です。他にも渦鞭毛藻類といって赤潮を作ったりする仲間や、リザリアという有孔虫なのだけど色素を持っているものもいます。ユーグレナもその仲間です。こういう種々雑多な生物が藻類の仲間に入ってくるわけです。

藻類の研究に関しては、日本が世界でトップレベルと言ってもいいでしょう。日本人は昔から海藻を食べていましたから。一番初めは、海藻がどういう分布をしているかを調べるところから始まりました。そして、クロレラの培養です。古くから食料源として期待されて、現在でも健康食品などに使われています。本格的な研究は1900年代に始まって50~60年代には世界のトップレベルの研究をすすめていました。

微細藻類というのは、ほとんどが海や湖沼・河川・池などの水域に棲んでいて、ゴミみたいに小さなものばかりですから、昔は誰もやってなかったんですよ。小さすぎて形が細かいところまではよくわからないのです。そこで、まず培養技術が発展しました。そして、電子顕微鏡の登場で微細なものまで見えるようになって、いろいろなことが分かってきました。もともと訳の分からない生物だったわけですから、研究もそれほど進んでいなかった。調べれば調べるほど、どんどん新しい知見、おもしろいことがいっぱい出てきているというのが今の状況です。

今まで細菌類とかカビ類からは、いろんな役立つ成分や物質が取り出されて製品化されていますが、藻類の場合はまだゴールまで行ったものが非常に少ないのです。今、培養して活用されている藻類は数えるほどしかなくて、100種類あるか無いかですよ。その一方で現在、種として記載されている藻類は4万種を超します。でも、未記載の方が圧倒的に多くて1000万種を超えるって言われていますからね。これは完全に未開発の資源だと思った方がいいです。

良質のオイルを作り出すオーランチオキトリウム

〜オーランチオキトリウムは、直径5~15μmの非常に微細な単細胞の藻類。2010年に沖縄の海で発見された。水中の有機物を取り込んで高濃度の炭化水素オイルを産生するだけでなく、増殖が非常に速く、25なら3時間で倍増することから、石油代替オイルの産出源として非常に大きく注目を集めている。

オーランチオキトリウムというのは、系統的にはコンブやワカメに近いグループです。でも、色素を持たないものだから、ずっとカビの仲間だと思われていました。だけど、電子顕微鏡で観察すると生活史の過程でべん毛を持っているステージが出てくる。それが、コンブやワカメのべん毛持っているステージとそっくりなのです。べん毛の構造は進化的に保守的なので、そう変わるものじゃない。DNAの鑑定により、明らかに藻の仲間だったのが証明されたわけです。南の海のマングローブ水域に多く住んでいる藻なのですが、よくよく調べてみると、東京や青森の海からも見つかりました。つまり、日本の気候でもよく増える種類です。

オーランチオキトリウムが注目されたのは、2010年以降です。長い間、みんなに相手にされていなかった生物だから、まだまだ分からないことも多くありますが、いろいろ調べていくと、とんでもないことが分かってきています。まず、他の藻類に比べても、オイルを作る生産量がものすごく高い。オイルを体内に70~80%くらい蓄積します。中には、炭化水素系といって石油とほぼ同じ成分のオイルを蓄積するものもあります。そして、オーランチオキトリウムのいいところは、ものすごく増殖が速いところです。光合成でオイルを作る藻も見つかっていますが、それらよりも10倍、100倍速いのですよ。

もちろん非常に良質のオイルを作るわけですが、他にもオーランチオキトリウムの作る脂肪酸は変わっていまして、頭皮のエネルギー活性を高める効果があると分かってきました。つまり、薄毛に効く。他にも、ストレスを緩和する作用とかが、われわれの研究で分かってきています。

オーランチオキトリウムの顕微鏡写真 ※写真提供:筑波大学

オーランチオキトリウムは、大気中の二酸化炭素を直接吸収するわけではありません。色素を持たないから光合成をしないのです。菌類とかバクテリアと同じで有機物を吸収して増えています。「二酸化炭素を削減するためには、光合成をして大気中から吸収してくれないとダメじゃないか」と思う人もいるかも知れません。でも、直接吸収しなくてもいいのです。間接的でもいいのです。アメリカ人は「間接的光合成」という言葉を使っています。

たとえば、バイオガスバイオアルコール(バイオエタノール)がそうです。光合成する生物からエネルギー資源を取り出すから、そう言われている。でも、陸上の植物が、直接ガスを作っているわけではないのですよ。植物の作った糖分をメタン細菌が分解して出るのがバイオガス。植物が作った糖分やデンプンを酵母菌が分解し、アルコール発酵をして作られるのがバイオアルコール。それと同じように考えべきです。

陸上の植物などが光合成で作った糖分やでんぷん、炭化水素物をオーランチオキトリウムが吸収してオイルに変えてくれる。そうやって、二酸化炭素が循環する輪を作れれば、カーボンオフセットになります。

何億年前の二酸化炭素を石油の形で地下から取り出して使うから、二酸化炭素が増えてしまうのです。そうじゃなくて、いま地上にある分を回しましょう、ということです。そこをみんな誤解してしまうのですね。光合成しないから二酸化炭素削減に貢献しないじゃないかと。それを言ったら、バイオアルコールもバイオガスも同じです。必ず、従属の微生物が介在してるのですから。

低炭素社会の実現に向けて

藻で作ったオイルが実用化されるようになるまで、まだ25年くらいかかると思います。一番のハードルは、藻を大量に培養するところです。それから、藻からオイルを抽出する、オイルに変換するという工業的なプロセスのところ。ここがコスト的な隘路になります。

オバマ政権時代のアメリカでは、米軍が自分たちの使う燃料の半分をバイオ燃料にするという方針を出したので、少々高くても買っていました。ソラザイム社というベンチャーがクロレラの仲間の従属栄養性の藻を使って、サトウキビの残渣などを有機物として与えてできたオイルからジェット燃料を作る。それを米軍に売っていました。

2009年頃だとリッター4000円くらいだったのが、一気に下がって、2012年には700~800円くらいになりました。そこから、200円くらいまでは下げられるとは思うのですが、100円以下となると技術が高度になるから、結構時間がかかると思います。

コストが下がるということは、オイルの生産にかかるエネルギーも下がるということです。藻類から取り出すエネルギーよりも、その過程で使うエネルギーの方が小さくないと意味が無いですから。二酸化炭素の削減効果があり、エネルギー収支がプラスになることが大切です。海外の人件費と電気代が安いところに行けば、コストは大幅に下がるかもしれないけど、それでは意味がありません。安い電気を大量に使ってオイルを作っても、二酸化炭素が増えてしまいますから。それだったら、直接石油を使った方がまだましでしょう。

当面は、間伐材とか生ゴミのような、捨ててしまうはずだったものを燃やして、エネルギーを取り出す方が簡単かもしれません。藻類を一生懸命増やして、収穫して、オイルを取り出して…とやるよりは、そっちの方がよっぽど簡単です。だけど、それでは取り出せるエネルギーの総量に限界があるのですね。そして、需要に合わせて原料の供給を増やせるものではないから、安定供給も難しい。それでは、本当の意味の持続性にはならないわけです。

人類の長期的なことを考えると、拡大生産ができる、再生産ができる、そういうものを選んでいかないといけないのです。

もちろん、藻類がナンバーワンと言うつもりはありません。藻類だけで成り立つわけじゃない。何にでも欠点はあるし、利点もあります。欠点を見つけて、「あれは使えない」と足を引っ張り合ってもしょうがないのです。間伐材なんかも熱源としてきちんと利用していけばいい。こっちの欠点はあっちで補いましょう。利点は利点として生かしましょう。そういう上手な組み合わせがエネルギーを考える上では必要ですよね。

仮に、日本のエネルギーを全部まかなうには、どれくらいの規模が必要になるか、ちょっと計算してみましょう。

たとえば、縦横高さが10mの水槽でオイルの生産性が最も高いオーランチオキトリウムを育てると、だいたい50トンのオイルができます。日本の原油輸入量が年間1.5億トンと言われていますから、それをすべてオーランチオキトリウムで置き換えようと思うと、3万ヘクタールの土地が必要になります。単純計算でいえば、今、日本全体で耕作放棄地が40万ヘクタールあるので、その10分の1を利用するだけでまかなえるわけです。

もちろん、ここからライフサイクルアセスメントを考えてやる必要があります。有機物の搬入から、オイルの精製、消費地への輸送まで含めた計画のことです。一か所にまとめて全部やるほうが一番お金もかからないのですが、そんな広い場所は確保できないし、藻からオイルを取り出す施設も必要になります。そして、藻に食べさせる有機物を大量に確保して供給してやることも考えていかなければいけません。そういう難しいことを全部考えていかなきゃならない。

ですから、10ヘクタールの土地でオーランチオキトリウムを育てて、それぞれにオイル抽出施設も併設してやる。それを全国に3000ヶ所作る、といった方が現実的だと思います。

分散させるのは、コストとかエネルギーの観点では効率が悪くなりますが、安全性は高くなります。1か所ダメになっても分散型なら大丈夫。何かあったときに、エネルギーを作る場所が1か所だと非常に危険です。そこがやられると、おしまいですから。

日本全体のことを考えると、もちろん再生可能エネルギーで100%代替できるにこしたことはないです。いきなり、それを達成するのは、さすがにハードルが高い。しかし、今は再生エネルギー比率が4%くらいと、ほとんど無いに等しいわけです。それをせめて10%以上に上げよう、と考えれば現実性が出てくる。当面の目標でいえば、二酸化炭素の排出量を10%とか20%くらい削減していけばいいわけですから。そのために、何をどれだけやれば貢献できるのか、低炭素社会に変えていけるのか。これを考えていかなければいけません。

もちろん、全部が藻類じゃなくてもいい。他のものも全部合わせて100%に近づければいいわけです。藻類が10%でいいとなれば、先ほどの3万ヘクタールが3000ヘクタールでよくなります。より現実的な数字に近づきます。ひとつで全部賄おうとするから、とんでもない数字が出て、無茶な話になるわけですよ。

家庭でもオーランチオキトリウムを栽培できる?

いずれは、家庭でもオーランチオキトリウムを増やすことができるようになるといいですね。オイルを取り出す部分は工業的プロセスが必要になるから家庭では難しいけど、オーランチオキトリウムそのものを増やすのは、家庭でもできたらいい。藻を育てるだけだから簡単そうに見えるけど、ハードルはあります。バクテリアとカビもオーランチオキトリウム同様、有機物で増えますから、それとの競争に勝たないといけない。

通常は、圧力釜でバクテリアやカビをいったん殺して、タンクの中にオーランチオキトリウムだけを入れる、という培養をしています。その装置を家庭ごとに付けるのは、なかなか難しいですが、そこをどうクリアするか、っていうだけの話とも言えます。要は、オーランチオキトリウム以外の生物が生きづらい環境を作っちゃえばいいのです。

いずれ技術革新によって簡易な装置でも、ボタンを押すだけでオーランチオキトリウムが急激に増えるものができるかもしれません。もしくは、ゲノムをちょっと編集して、特殊な環境で生きられるオーランチオキトリウムの変異体を作る、というやり方もあります。

たとえば、酸性、アルカリ性が極端な水の中だと、そこで生きられる生物なんかほとんどいないですから、そういう環境で増える変異体を作ればいいわけですね。そういう時代はまだまだ先のように思えるかもしれませんが、そんなに時間はかからないと思います。意外と早く訪れる可能性があります。

もうひとつのハードルは、オイルの抽出です。オーランチオキトリウムがたくさん増やしたとしても、そこからオイルを抽出するところにハードルがある。エネルギーに持っていこうとするとオイルを抽出しないといけないわけですが、そうじゃなくて、これを食べてみるのはどうでしょうか。健康食品としてのオーランチオキトリウムです。

いずれそんな遠くない将来、オーランチオキトリウムの健康食品は出てきます。すごい機能がありますから。それを、ちょっと自宅で作ってしまう、というのは可能かもしれません。自分が食べるのが嫌だったら、家畜に食わせるのもいいです。鶏に食わせると、ものすごい機能性を持った卵を生んでくれるとか。

30分で石油をつくる

藻類の用途はいろいろありますが、中でもエネルギー利用は非常に重要な課題です。他の用途に比べて時間はかかりますが、絶対に続けていかなければならない。特にエネルギー資源の乏しい日本の場合は、10%でも5%でも藻類でエネルギーを賄えるようにしていかなければならないと思っています。

震災後、「福島でぜひやってくれ」というお話をいただいて、南相馬市に藻類バイオマス生産開発拠点を作ったのですが、オーランチオキトリウムではまだコストが高すぎるし、大きなタンク作るとか有機物の供給とか、いろいろな問題がありました。他の光合成藻類も東北のような寒いところは苦手ですから。オイルを作る藻は、寒いところでは増えにくいのです。

藻類の燃料を作るときには、最低でも1日平米あたり40グラムの藻を増やさなければいけない、と言われています。でも、それを実現しているところは、世界中でも2、3か所しかないのです。それもオーストラリアの北西部とか長い日照時間と年中暖かいところです。日本だと沖縄でも日照時間が短くてクリアできない。ましてや福島だと冬場は寒い。

そこで、ガラッと発想を変えました。現地に自生している藻を使って、そのまま増やそう、と。冬でも水が凍ってなければ藻は増えますから。栄養と二酸化炭素さえ与えてやれば、バーッと増える可能性があるのではないかと。

目的に適した藻を探すということをしないで、現地のいろんな種類の藻をまとめて育てるのです。ポリカルチャーといって、多種混合培養です。当初は寒いところだし、1日平米あたり10グラムもいけばいいかな、と思っていたのですが、年平均で一日平米30グラムという結果が出ました。もう少し工夫してあげれば、40グラムにいくと思います。

では、そこからオイルをどう取り出すか、という問題がありました。普通は、藻の中に貯めているオイルを抽出するのですが、オイルをたくさん産生する藻を使っているわけではないから5~10%くらいしかオイルを蓄積しない。しかもどんどん増殖するから吸収した二酸化炭素や栄養素をタンパク質合成に使っちゃうのですね。

そこで、水熱液化という技術が登場します。地中に埋まっている石油は、もとを正せば大昔の藻類だったという説が広く認められています。例えば中東の石油は1-2億年前にできたと言われています。当時は中東という陸地はなく、テーチス海という浅海がひろがっていました。そこに藻類のプランクトンが大量に発生していましたが、その後の地殻変動等で藻類の死骸が海底に蓄積し、当時の海底の高温高圧の環境で1億年以上かけて石油になったといわれています。そのプロセスを30分くらいでやってしまうのが、水熱液化という技術です。これを使って、増やした藻を原油にかえてしまうわけです。実は、これが実用化に一番近い技術じゃないかと思っています。

もちろん、水熱液化には大量の電気を使うので、きちんとエネルギー収支を見てあげる必要があります。エネルギー収支は、使った電気の量を見るだけではダメなんですね。電気を作るときにどのくらい燃料を使ったかまで見てあげなくちゃいけない。

古い発電所のエネルギー変換効率が35%くらいだから、それで計算すると、できるエネルギーと消費するエネルギーがトントンくらい。ところが、日本で今一番いいと言われている発電所だと59%くらいになるので、それを使えば1.5~1.6という値になります。つまり、使ったエネルギーの1.5倍のエネルギーを得ることができるわけです。もちろん、これから技術に改良を重ねて、35%の変換効率でも1.5を超えるところに持っていきたいし、できれば2倍を目指して行きたいんですよね。

エネルギー収支を上げるには、電気だけじゃなくて光合成をおこなう藻類を育てる窒素やリンなどの肥料を作るときに使うエネルギーやコストも削減してあげる必要があります。一番短期的には、下水との組み合わせに可能性があると思います。下水に含まれる栄養分を食べさせて藻類を増やし、一方、下水もきれいになる。これは、仙台の下水処理場で基礎研究をやっています。

「従属栄養性藻類」=オーランチオキトリウム(光合成しない)
「独立栄養性藻類」=ボトリオコッカス(光合成する)
この2種類の藻類の働きによって、下水を炭化水素化(オイル化)する。
*仙台市HPより引用http://www.city.sendai.jp/kankyo/jigyosha/kezai/sangaku/project/sorui/index.html

ただ、ここで間違っちゃいけないのは、二次処理水じゃなくて一次処理水を使うということです。二次処理水は窒素やリンを多く含んでいるので、藻類が増えやすいのですが、それだと下水処理のエネルギーをセーブできません。下水処理で一番エネルギーを使うのが、一次処理水から二次処理水に持っていく活性汚泥処理なのです。

一次処理水で藻類を増やせれば、下水処理に使うコストを大幅に減らせる。そうすると、全体のエネルギー収支がものすごく違ってきます。もちろん、使える下水量は限られているから、どこかに限界があるわけですけどね。しかし、短期的には下水を使うのがいい。ただし、下水と使うとなると現法では様々な規制があるので、研究の現場だけの努力ではできず、国をあげてしっかり取り組まなければいけません。

下水の場合も、日本全体で年間200億~300億トン程度処理されていると言われていますが、それはあくまで公共部門だけで、工場が出す産業排水も含めた数字はわかりません。まず、そこを全部計算して、きちっとした資料を出すことが必要です。どれくらいの下水が出て、その中にどれだけの有機物や窒素・リンなどが含まれていて、どれくらの資源になるのか。日本政府が出したバイオマス量の試算も再検討してみる必要はあるでしょう。まずは真面目に調査をするところから、意識を変えて取り組まなければいけません。

だけど、きちんと見てくれる人もいますし、この技術が重要だって言ってくれる人もいます。まだまだ捨てたものではないと思います。福島でやっている方法は、発展途上ですから、実用化に向けていろんな技術開発が必要です。でも、今より生産性が高くできるのは確かです。だから、藻類オイルの実用化は意外に早いかもしれません。もうちょっとがんばれば。

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