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研究員取材レポート【ゼロ・ウェイストタウン 上勝町】の続編、上勝町におけるゼロウェイストの変革のキーパーソンとして長らく関わってこられた、上勝町のNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー元代表であり、現在各地で一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンとしてご活躍中の坂野晶さんの取材インタビューです。ダボス会議でのご活躍などグローバルな視点を持ちながら、上勝町というローカルでゼロウェイストに取り組んだ際の苦労や、ローカライズさせるための努力などをお聞きすることで、都市の人々がごみ問題に向き合う際のヒントをいただけるのではないか。さらに、東京に拠点を移されてから様々な地域や企業との取り組みの中で、現在感じている課題や希望などをお伺いしました。
<ゲストプロフィール>
坂野晶さん
一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事
兵庫県西宮市生まれ、鳥好き。絶滅危惧種の世界最大のオウム「カカポ」をきっかけに環境問題に関心を持つ。大学で環境政策を専攻後、モンゴルのNGO、フィリピンの物流企業を経て、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町の廃棄物政策を担うNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーに参画。理事長として地域の廃棄物削減の取組推進と国内外におけるゼロ・ウェイスト普及に貢献する。米マイクロソフトCEOらとともに、2019年世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)共同議長を務める。2020年より一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンにて循環型社会のモデル形成・展開に取り組む。2021年、脱炭素社会へ向けた1,000人のイノベーター育成プログラム”Green Innovator Academy”を共同設立。
<インタビュアー>
天野恭子
Next Wisdom Foundationプロジェクトフェロー研究員
大阪府出身。大阪市立大学工学部卒業後、大手総合商社にて勤務。会計部署で数字を通して事業運営を知る経験を積んだ後、再生可能エネルギー関連の事業に従事。国内外の太陽光発電所、洋上・陸上風力発電所の新規開発、運営管理などを行う中で、環境貢献とビジネスの両立の難しさを感じ、外資系コンサルティングファームに転職、大企業向けにサステナビリティに特化した経営戦略支援を行う。
自己紹介はこちら→https://note.com/nwf/n/n7038fa7ff624
「リサイクル率」だけにとらわれないこと
NWF研究員プロジェクトフェロー天野恭子(以下天野):上勝町を離れて、いまどのような活動をなさっているのでしょうか?
坂野晶さん(以下坂野):2020年4月に上勝町を出て、一般社団法人ゼロウェイストジャパンという組織を立ち上げて活動しています。上勝町の中だからこそできることはあったのですが、上勝町でやっていたことをうちでもやろうという自治体は少なく、上勝町という特殊な環境に彩られている部分もあり、他の地域の方々にとって「自分ごと化」しにくいのかもしれないと感じていました。違う場所で違うやり方で、各地域の社会的、文化的、様々な背景をベースにしながらゼロウェイストをやる方法を作っていきたいと思ったんです。
現在は主に地域の団体や自治体と一緒に各地でゼロウェイストを進めています。自治体との仕事の場合は、調査から計画策定、施策まで一緒に作ることもあります。行政の支援だけではなく、地域の団体さんと地域の住民の方がやりたいことに伴走して、地域の中で継続的な取り組みになるよう支援している場合もあります。行政や地域の方との活動を優先的にやっていますが、企業への廃プラスチックの削減に向けた支援などもしています。また、教材の開発も行なっていて、学校現場だけではなく、地域の中や会社の中で行動変容に繋がるようなツールとしても使っています。
公開可能な事例ですと、長野県小布施町の環境政策の一環としてゼロウェイスト政策立案に伴走(参考イベントhttps://greenz.jp/event/obusemachi/)をしたり、島根県雲南市の公益財団法人うんなんコミュニティ財団さんとボトムアップで地域の活動を生み出すサポート、上勝町で作ったゼロ・ウェイスト認証制度を全国展開したり、他の業種に広げたりしています。ゼロ・ウェイスト認証制度は、お店単位でごみを減らす仕組みを可視化していく目的なので、ビジネスといっても小さなカフェ単位で行なっているものもあり、制度を取り入れている主体はさまざまです。
天野:上勝町でゼロウェイスト活動を行う中で、最も苦労されたポイントは何でしょうか?
坂野:上勝町には5年間いましたが、必ずしも地域の全ての住民が「環境に良いことは大事だから分別しよう」と思っているわけではありません。上勝町のゼロウェイスト活動は「45分別」や「リサイクル率80%以上」などが分かりやすさで有名なのですが、それは単に分かりやすさがないと飛びついて来ないメディアがいるからです。その構造自体がおかしいと感じています。リサイクルや分別をすることは分かりやすいし大事なことの一つなのですが、一番大事なことではない。分別するだけではごみは減らないんですよ。
上勝町の実態を見ると、リサイクル率は確かに8割になりましたが、ごみの排出量は横ばい。ごみは分別しているだけであって、ごみを出している総量は減っていません。なぜかというと、そもそも上勝町は他の自治体と比べて圧倒的にごみを出す量が少ないので、それ以上減らすことが難しくなっているから。上勝町のごみ排出量がなぜ少ないのかというと、昔から「自分たちのものは自分たちで作る」という自給自足的な暮らしをしている方々が多いからです。しかし最近はそうした暮らしをする方が減り、さらに町内の個人商店が減っていることもあり、町外のスーパーで買い物をして、そのごみを捨てるという行動になっています。町外のお店の売り方や買い方を変えるのは難しいので、そこから出るごみを減らすことはできません。そこが上勝町の今の限界だと思っています。
ですので、分別やリサイクル率だけではなく、本来的に「どうすればごみを出さないように生活できるのか? 使い捨てのものに頼らない暮らしができるのか?」という問いに向き合うことがゼロウェイストの本質だと言えます。いま日本でゼロウェイストの取り組みを測る指標は「ごみ排出量」と「リサイクル率」しかないからリサイクル率が注目されてしまう。でも、リサイクル率なんて実はたいした数字ではなくて、母数が変われば変わる。例えば、生ごみは上勝町では各家庭で処理してもらっていますが、この数字は排出量が少ない理由にはなっても、リサイクル率では全く考慮されません。だから、リサイクル率だけ見ても、ゼロウェイストの実態は伝わらないと思っています。
上勝町の取り組みが知られるようになって、それをヒントにしようと思ってくれるのは良いことなのですが、分別やリサイクルだけに注目するのではなく、そのごみを排出する構造自体に疑問を持つことが大事です。それができないのが我々の思考力の限界なのかもしれませんが、それを越えて考えることが大事ですね。
では、都会ではどうかと考えると、最終的にどうしても出てしまうごみをできるだけ資源化できる仕組みを作ることは大事です。今はいろんなリサイクル技術があって、特に都市部の方がものを集めやすいので、リサイクルの循環の仕組みは作りやすい。と同時に、私たちの暮らしの中で、モノを長く使う工夫をすることや、使い捨てを減らす工夫も同じようにやること。都会に住む方は忙しく、買い物や暮らしについて考える時間を割けず、自分の時間自体を消費して暮らしているので、ごみを減らすことを考える時間が無いのだと思います。とはいえ、ある程度思考と時間さえ割くことができれば、東京の方がよっぽどオーガニックやパッケージレスの買い物のオプションは増えてきています。
「仕組み」の全体像をつかむ
天野:たしかに、そもそものベースラインが地方と都会で違う中で、忙しい都会人が少しでも自分ごととしてごみ問題や暮らし方を考える時間を持つことが大事ですね。都会の方がリサイクルしやすいとのことですが、具体的にどのような点なのでしょうか?
坂野:都市部に限らず、リサイクルするには綺麗な状態のまま、たくさんのものが同時に集まることが大事です。例えば、上勝町はあれだけリサイクル率が高いのですが、人口が少なくリサイクル拠点から遠い場所にあるので、リサイクルに出せる量が溜まるまでの保管期間が必要です。保管期間が長いとその間に劣化して汚れになったり、残っていた食べ物のカスなどは3ヶ月も置いておくと腐敗します。そうなるとリサイクルに必要な品質も圧倒的に下がります。
容器や缶は洗ってごみに出す必要がありますし、汚れたビン、カン、ペットボトルにはリサイクル過程で高圧洗浄をかけるのですが、高圧洗浄をかけるまでの行程が衛生的によくないので、ごみに出す前に洗った方がいいんです。短期間で、まとまった量を、しかも品質の良いものを集めるのがリサイクルにとってはベターで、資源としての循環割合も増やすことができます。
例えば、2021年の東京オリンピックのメダルはリサイクルした金属で出来たもので、表彰台は使用済みプラスチック容器を原料に3Dプリンターで作られています。資源は既に私たちの身の回りに眠っているんです。鉱物やプラスチックは地下資源からできていますが、採掘の過程で紛争や人権を無視した労働に繋がる可能性もあります。だからこそ、都市部で集められる廃棄された家電品などから、貴金属やレアメタルをリサイクルして活用しようという「都市鉱山」の考え方は重要なのです。
今後も私たちが地下資源を使い続けることは、直接的にも間接的にも社会的に悪影響があるということを考えると、これ以上新たに採掘するのではなく既に掘り出し終わったものをどれだけ長く使い続けられるかという観点の方が大事です。だからこそ、リサイクルする前にできるだけ長く使い、リサイクルできないものは半永久的に価値を落とさずに使い続けられる技術はないかと考えていきたいのです。
いま私自身が考えているテーマは「仕組み」で、原因と結果がどのように繋がっていて、どこが複雑骨折しているのか、ということを全体像として捉えることが大事だと思っています。例えば、クライアント企業に自社のサプライチェーンがどうなっているのかお伺いしたときに、その全体像を把握して説明できる企業は意外と少ない。その一方で行政はというと、日々決まったことをやってるので、ルーティンから外れて発生した課題に対してその原因は何かを自分で考えて答えられる人が少ない印象があります。
ですから、今ある仕組みの全体像を辿って、まず自分で知ることが大事です。全体がわかると、何が問題なのかクリアになってきます。その次に、今ある仕組みを前提に検討するのか、それが難しいのであれば別の仕組みを作ることもオプションとして考える、そんな思考のプロセスを常に辿ろうとしています。疑問を持つことは大事なので「なんでこうなってるんだっけ?」ということを改めて問い直してほしいですね。
オセロのように社会は変わる
天野:そもそも坂野さんがゼロウェイストに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
坂野:もともとはゼロウェイストではなく、絶滅危惧種の鳥に興味がありました。そこから次第に「なぜ絶滅危惧種が生まれているのだろう?」という疑問を持つようになりました。その原因は人間活動なのですが、その仕組みの構造を変えて行く方法を考えないと、単純に種を守るだけではダメだなと思ったのがきっかけです。そこから政策分野に興味を持つようになりました。ただ、政策をいきなり仕事にするのはなかなか難しいので、どうしようかと思ってたところに、偶然上勝町とのご縁があり、当初ごみ自体には興味は無かったのですが仕組みづくりに興味があり、トライアンドエラーでチャレンジさせてもらえる上勝町という場所に6年前に移住しました。
天野:坂野さんが来たことで、上勝町のゼロウェイストの活動が世界的に知られるようになりましたが、「仕組み」はどのように変化しましたか?
坂野:上勝町の現場でのチャレンジも大事ですが、上勝町の中だけで活動することに限界があるのは最初から分かっていたので、外を巻き込むことでゼロウェイストという地球規模のテーマに共感してもらえる人を増やすことが大事だと思っていました。特に、日本のメディアは海外メディアでの評価に影響を受けることが多いので、まず海外発信を増やしました。そのおかげで海外から人が来るようになり海外メディアにも取り上げられるようになってから、日本国内でもさらに注目されるようになりました。上勝町での活動は社会の変化や新しいライフスタイルの浸透にも沿っていたので、結果的にゼロウェイストという言葉も広がり、いいタイミングで流れに乗って取り組みを進めることができました。
天野:ゼロウェイストを進めるにあたって、上勝町や他の地方自治体などでの小さな仕組みと、東京のような都市部での大きな仕組みの間で、共通点や違いなどはありますか?
坂野:大きな仕組みというものは、何かスイッチがあってそれを押したらガラッと変わるものではなくて、じわじわ小さな変化が積み重なって気がついたら大きな変化になっていた、そんな感じの変化だと思います。いますぐ大都市東京を変えるぞ、と思っているわけではなくて、様々な小さな自治体と徐々に取り組むことで、オセロのようにちょっとずつ色が変わる地域が増えていき、どこかでばっと色が逆転するといった風に、大きな仕組みが変わるような気がします。既存の仕組みの中で頑張って変化を促すよりも、外で違う仕組みを作り始めて、意外とこっちの方が数が増えてきた、という方が結果的に早いのかもしれません。
上勝町など地方での動きを見て、都市部でも「ゼロウェイストの考え方いいよね」という人が増えてくる。その人たちが田舎に移住するわけではなく、身近なところで出来ることをやり始める。だから、東京でもコンポストのコミュニティがあったり、バルクショップ(量り売りのお店)が増えたり、そのような動きが広がってきていて「みんなこういうの求めてたよね」という流れになってくる。そういう流れが可視化され始めると若い世代が動き、企業も動くという循環が生まれます。また、脱炭素の流れもあり、企業もそろそろ変わっていかないとまずいと大企業こそ感じています。
天野:そのような変化の中で、坂野さんの役割はどのように変化していますか?
坂野:さきほど説明したような「外圧」は意外と早く来ると思っているのですが、いよいよ変わらなきゃやばいぞ、というときに答えがないケースが日本には多い気がします。私が今お付き合いしているのは地方自治体ですが、そこで出来上がった仕組みは実は都市の人々の参考になるものもあったり、コピーできるものが詰まっています。そのような事例をどんどん作らなければと思っています。また、とりあえず進めたいと思っているけれど、まだ方向性が定まっていない方々に対して、どんな考えやメッセージで、どんな人たちを巻き込むべきか、ということを一緒に考える調整役としての仕事もやっています。
経済性との両立は可能か?
天野:Think globally, act locally を意識することはありますか?
坂野:GlobalとLocalの違いを感じたことはあまりないのですが、上勝町だからこそできることもあれば、上勝の立地ではできないこともあります。また、要素分解すれば他の地域でも出来ることはたくさん隠れているのですが、それを他の地域の方が「我々の地域でやるには大変だから」と、やらない理由を探しているだけのこともあるかもしれません。
天野:地域によっては、ゼロウェイストによって住民の生活に支障が出るかもしれませんし、大都市の場合は経済性との両立という面で難しいと思われる部分もあるかもしれませんね。
坂野:経済性については、活動の主体が企業か行政かによって文脈が異なるのですが、企業の場合は包括的に見たときのコスト削減に繋がるので、ごみを出さないという考え方は当たり前になってきています。特に製造業では、ゼロウェイストに取り組んでいる企業が多くて、例えば、製造中に工場の中で出したごみや水は浄化して何回でも使うというところもあります。ただ、自社製品を売った後となると回収コストなどの観点から難しい場合が多いですが、業態によっては、自社のものは自社で回収しましょう、という方が理に叶っている企業もあります。例えば、プリンターは昔からリースで対応していて、自社で修理してインクはサブスクで買ってもらう、というビジネスモデルがあります。
一方で、いま問題になっているプラスチックのパッケージなどは、回収しても企業にとってメリットが少ないので対応が難しいのですが、そもそもプラスチックの原価が安すぎるので、ここの価格崩壊が起こった時点で止まるとは思っています。そして、その未来は意外に近いのではないかとも思っていますし、企業にとってはそのようなケースを考えておくことが長期投資につながります。例えば、サプライチェーンを考えたときに、原料が石油由来なのかどうか透明性が問われているので、そこに対して説明できないことは止めていかなければなりません。そして石油製品を使うことが難しいならば何で代替するのか、その検討を始めること自体が企業にとってのリスク回避になります。
一方で行政の場合は、実際にはお金がかかることよりも作業の手間がかかる方が、ゼロウェイストにおけるハードルが高いです。例えば、分別方法を変更するだけでも、住民説明が大変な手間になります。また、ごみを資源化して業者に引き取ってもらえばコスト削減になるのではないかという意見があっても、ほとんどのごみは焼却炉で処理することになっているので、あと何年で建替えするのか、建替えにいくらかかるのか、建替後の焼却炉をどれだけ小さくできるのかによって、建替の投資や運用の計画が変わってきます。その焼却炉の計画を立てた上で、ごみをこう減らしていくかという中長期計画を立てるのが本来のやり方ですが、その計画を中長期の視点で立てることは、数年で役職が変わる行政では非常に難しいことです。
市民性を高めるには
天野:先ほど分別のためにみなさんが思考や時間を割くことが大事とおっしゃいましたが、やはり実際には対価としてお金が重要で、上勝町でも「ちりつもポイント」という形で住民に払っています。目先の日常と世界の課題をリンクさせることは難しいと感じました。分別のメリットを住民の方がお金以外に見出すことは無理なのでしょうか?
坂野:そこは住民の市民性のレベルに依存するのではないかと思います。市民性とは、どこまで社会の問題を自分ごととして捉えられるかです。「環境問題って大事だよね」と考える余裕のある地域かそうでないか、それが地域の取り組みの差を生むと思います。例えば、今関わっている雲南市や小布施町は市民性が高い印象があります。その理由は、もともと農業の収量などが安定している地域であったり、広域で助け合う文化があったり、様々な歴史の中での社会的文化的背景によるものだと思います。一方でそうした安定的な環境を確保できなかったりした地域では市民性の醸成が難しかったこともあるかもしれません。ただ、これは東京のど真ん中も同じと言えるのではないでしょうか。
天野:市民性や公共性を持ちにくい人たちに対してお金以外の方法でどう意識を変えてもらうか、それも課題かもしれませんね。
坂野:意識が変わるポイントは人によって違います。上勝町の現場で分かったことは、環境や社会に良いことを理解して実践できる方は多くても2割、1割は何をやっても伝わらない人、マジョリティの約8割の人たちは無関心。この8割の無関心な人たちをどう動かすかが大事だということです。ちょっとは関心を持ってくれる人もいれば、仕組みに組み込まれていればなんとなく行動をしてくれる人もいる。環境に対して関心が無くても地域への貢献ということであれば協力してくれる人たちもいる。そういった選択肢をいくつ用意できるかだと思います。
天野:『ヒルビリー・エレジー』というアメリカの貧困層の現実を描いた作品がありますが、貧しい暮らしを乗り越えるために自分の目の前の生活に必死で、自分以外の他人や社会に目を向ける余裕がなかなか無いという社会は、今後も存在し続けるとのだろうと思います。
坂野:そうですね。自分が必死なときに他のことは考えられないというのは、自分が忙しいときにごみのことなんて考えられないのと一緒だと思います。これは所得の関係もあるとはいえ、自分の公共性を拡張するきっかけをどう作るかなので、無理やりにでも作るしかありません。会社と自宅以外でなかなか公共の方と関わらないと閉ざされてしまうので、例えば資源回収は店頭回収で交流するなど、仕掛ける余地はあると思います。
考察
坂野さんは上勝町での取り組みの中で活用出来る部分を参考にしつつ、現在は各地域や企業を小さな単位からオセロのようにひっくり返して徐々にゼロウェイストを意識する人々を増やしていますが、小さな単位から始まり、大きな潮流が出来上がるのはそう遠い未来ではないと思います。
個人として、環境への貢献とビジネスの両立はどのようにしてなし得るか、というポイントに疑問を抱えていますが、ごみ問題に関して経済性の観点からいうと「ごみを減らすこと、リサイクルすること」=「コスト削減」と、自然に結びつけて考える企業が徐々に増えているようです。
一方で、個々人の意識を変えるには思考と時間がかかるので、そういった余裕を持つためのきっかけが必要。そこには、国や行政として、長期的な計画をしっかり持って、ルール策定をすることも大事、国や行政がすぐに変わらなければ、企業や店舗が出来る工夫を始めていかなければならないと感じました。