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里山と日本の未来 ①西粟倉村ってどんな村?

日本の国土の約7割は山で覆われています。それらの地域は農林水産省により「中山間地域(ちゅうさんかんちいき)」に分類され、高度経済成長とともに平地の都市部へ人口流出が続いた結果、高齢化と人口の減少が最も進んだ地域になっています。
しかし、そのような中山間地域にありながら、都市から若い人が移住して、いくつものベンチャー企業を起こし、日本中から地域再生の先進的な例として視察者が絶えない村があります。
その村の名は、岡山県英田郡西粟倉村。私たちNWF事務局もその西粟倉村を訪問し、村でどのような取り組みが行われているのか? いったい何が人々を惹き付けるのか? 村の外から来た3人の挑戦者のお話を聞きながら、西粟倉村に潜む叡智を探ってきました。

*西粟倉村(にしあわくらむら)の概要
岡山県の北部、鳥取県との県境付近に位置する、人口約1500人、約550世帯からなる村。森林が村の面積の95%を占める典型的な中山間地域。高齢化率は33.1%(H25.11)で3人に1人が65歳以上の高齢者(H26全国平均25.1%)。「上質な田舎」を目指し、官民恊働で様々な新しい取り組みを行っている。

西粟倉村HP

自力で生き残る

平成の大合併では日本の多くの市町村が地方交付税の優遇や行政サービスの効率化を目的に合併し、国からの有利な借入金を使って人を集めるためのハコモノを次々に建設する自治体もありました。その一方で西粟倉村は合併をせず、村の主な産業である林業を軸に、自力で生き残る道を選びました。
今後さらに勢いを増す少子高齢化と人口減少。日本創成会議が平成26年5月に発表した資料によると、2040年までに全国1800市区町村のうち49.8%に当たる896自治体が消滅する可能性が高いという結果が出ました。人口減少による産業の担い手の不足と歳入減少、国から給付される地方交付税が削減、不採算の公共施設の運営赤字などで財政が悪化する地方自治体が増えています。そのような厳しい状況のなか、西粟倉村はどのようにして都市部から人材を惹き付け、産業を生み出し、自立へと向かっているのでしょうか?

・地方:若者・女性の都会への流出→高齢化・人口再生産の減少・人口減少
・都市:地方からの流入→人口増加/晩婚化・未婚化・出生率減少→人口再生産の減少
・日本全体:都市化・地方の過疎化/人口再生産の減少→総人口減少
地方から都市へ若者や女性が流入して見た目の都市人口は増加するが、都市では結婚や子育てをするハードルが高く、出生数は減少している。若者と女性が流出する地方では子供を生む世代を失い高齢化、過疎化する。国全体で見ると人口の減少が止まらなくなっている。

林業で生き残る

西粟倉村は一体どのような取り組みをしているのか? そのすべての活動の核となるのは、2008年に西粟倉村が掲げた長期ビジョン「百年の森林構想」でした。50年前に先人が植えた樹を受け継ぎ整備しながら、50年後の未来に向けて森林資源の循環を作っていくという構想です。2004年に合併を拒否し自立の道を選ぶことを決めたあと、この大きなビジョンを元に村が一つになって進みはじめました。この構想が定まる前までは、他の多くの地域で行われていた開発事業と同じように、都市部にあるような集客施設やインフラを真似して縮小して導入する案もあったそうですが、いまは村の面積の95%を占める森林を村のアイデンティティとして捕らえ直し、林業を軸に製材業や木材加工業、バイオマスエネルギーの利用など新しい産業が生まれています。

木材の利用が減ると同時に、外国産の木材が7割以上を占める。日本の木材自給率は低い。
*『平成25年度 森林・林業白書』を元に事務局作成

国土の森林の約4割が人工林。その人工林は伐採期を迎えた8齢級(1齢級で樹齢1〜5年)以上が大部分を占め、本来利用されるべき木材資源が放置されている。手入れされないままの森林が土砂災害など様々な問題を引き起こしている。

『平成25年度 森林・林業白書』を元に事務局作成

西粟倉村の間伐された人工林。地面にまで光が注ぎ、下草が生え、しっかりとした木が育っていく。

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