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燕三条は金属加工業だけで成り立っているわけではない。
例えば、刃物の柄は木工業者がつくる。木工業者が使う工作機械は機械業者がつくり、その工作機械に使われる刃物をつくる職人もいる。製品を出荷するためのダンボール製造、梱包サービス、印刷サービス、飲食業など、無数の業種とものづくりの連関によって燕三条が成立している。その構造は、金属加工を軸とした、一つの大きなコングロマリット企業のようでもあり、人の体内を走る無数の神経細胞ネットワークのようでもある。
この関川木工所では、金物の柄の部分や包丁とセットで売るためのまな板など、多種多様な木製品をつくっている。一代前までは学童向けの彫刻刀を年間2万本作る工場だったが、最近の教育現場では子供1人あたりではなく、クラス単位で購入されるようになったため一気に需要が減少した。現在では少量多品種に生産方針を変え、燕三条の金属業者はもとより、日本中から寄せられるあらゆるオーダーに応えている。自社ブランドを持たず、突出した技術があるわけではないかもしれないが、地場産業を支えるエコシステムの一つとして、地域とともに存続している。
- Text / Photo:
- KIYOTA NAOHIRO
- Plan:
- Mirai Institute